妊娠した野良猫が押しかけてきた!「元気な赤ちゃんを産もうね」…受け入れた女性と先住猫の「葛藤」と「幸せ」

押しかけ女房ならぬ「押しかけ猫」の話は、実のところ多いもの。屋外生活に疲れた猫が良さそうな家に居着いてしまう状態です。静岡県東部で暮らすAさんの家にも、押しかけ猫がやってきました。

この猫との出会いは、2021年1月ごろの夜半。その猫は窓が開いていた2階のベランダから家の中に入ってきて、1階のリビングでAさんと鉢合わせ。真っ暗な部屋の中、おたがいビックリして固まってしまいました。とても綺麗な毛並みの女の子だったので、最初Aさんは飼い猫だと思ったのだそう。けれど、何度も会ううちに、お腹が大きくなっていたり子猫を連れていたりするので、野良猫だと確信しました。

野良猫だと分かってからは、時々おやつをあげて、遊ぶぐらいの距離感を保っていたつもりでした。猫の方も、家の中に入っても出ていきます。一匹で来る日もあれば、夫と思われる黒猫や我が子を紹介してくれることもあったんですよ。良い関係だとAさんは思っていました。

■家で眠ってしまった押しかけ野良猫、実は妊娠していた

でも、「良い関係」なんて人間の勝手な都合。その猫は一気に距離を縮めにきたんです。2021年5月、いつも通りおやつを食べたら帰ると思ったのに、まったく帰る気配がありません。完全にリラックスをした姿で、Aさんの家で眠ってしまったのです。さあ、Aさんは困った。

というのも、A家にはすでに猫がいるから。ミカちゃんという女の子で、年齢は13歳。子猫の時からずっと家で過ごしており、とても内弁慶な性格です。そんな箱入り娘が野良猫に勝てるはずもありません。家の中でシャーシャー!と威嚇し、同時にビクビクするようになってしまいました。

ミカちゃんのそんな様子を見て、Aさんは押しかけ猫を家から出そうと試みます。でもこの時、気付いてしまったのです。お腹が大きいことを。このまま追い出しても良いものか…。

そこでAさんは個人で保護猫活動を行っている人に相談をしました。ミカちゃんのことと、妊娠している猫のことを。その人からのアドバイスは、「子猫の里親は見つけるから産ませてやろう」というものでした。Aさんの心は決まりました。

まずミカちゃんとお話です。新しい猫を迎えること、この子のお腹には赤ちゃんがいること。誰かがお世話をしないと、赤ちゃんたちは生きていけないことも話しました。ミカちゃんは静かに耳を傾けてくれ、その後は「シャー!」と威嚇することはなくなります。

押しかけ猫ともお話です。今日からうちの子になるよ、元気な赤ちゃんを産もうね。この時に名前もつけます。モフモフの毛並みだから「モフ子さん」です。モフ子さんもまた、静かに耳を傾けてくれました。

一度決心したなら、Aさんは張り切ります。ミカちゃんが寂しくないように、今まで以上にベタベタ。平行して、モフ子さんのために良い寝床を作って、栄養満点のご飯を用意しなくちゃいけません。楽しい大忙しです。

■ふらっといなくなった猫、夫に別れを告げに行ったのか?

それなのに、モフ子さんはある日の晩、ふらっといなくなってしまいました。慌てて探すのですが、家の周辺は林です。夜に探すのは危険が伴います。朝になってから本格的に探そうと、その日は床に就きました。

目が覚め、ふとベランダに目をやると、なんとモフ子さんの姿が!とてもすっきりした表情をしています。家の中に入ると、何食わぬ顔でご飯をむしゃむしゃ。何があったのでしょうか?

それが分かったのは数日後。頻繁に姿を見せていた夫の黒猫が来なくなったのです。モフ子さんの子供の姿も見えません。Aさんはこう思ったよう。

「モフ子さんなりの決意を家族に伝えてきたのかな」

夫と子供と別れ、新しい道を進むことにしたモフ子さんは、2021年8月子猫を9匹出産しました。最後に生まれた1匹は残念ながら先に虹の橋のたもとへ旅立ちましたが、8匹は元気いっぱい!子猫たちは生後約2カ月の時に、新しい家族に迎えられました。1匹だけ、Aさんの家でそのまま過ごします。

いきなり賑やかになってミカちゃんはビックリするかと思われましたが、子猫には優しく接してくれます。モフ子さんと喧嘩することもありません。付かず離れずの程よい距離感。

現在、Aさんは3匹の猫と、賑やかで楽しい日々を送っています。あの日、モフ子さんを迎え入れると決断しなかったら、この毎日はありませんでした。本当に幸せです。

ミカちゃんとモフ子さんも、そう思っていてくれると良いな。

(まいどなニュース特約・ふじかわ 陽子)

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