「真摯に安全に向き合う観光船もあります」プロの仕事をたたえた船員の投稿が話題 船長も反応「いっそうの安全運行を心がけます」

4月23日、北海道・知床半島沖で乗客乗員26人が乗った観光船が沈没するいたましい事故が発生した。詳細な原因は未だ判明していないが、運航会社「知床遊覧船」の不十分な管理体制が明るみになり、知床のみならず全国の観光船の安全への取り組みに関心が高まっている。 観光船全体を不安に思う人もいる中、SNSの発言が大きな注目を集めた船舶関係者に聞いた。

意見というのは内航貨物船員のハートマン提督さん(@Gunny_SukumoHQ)が投稿した

 「なんか知床の観光船そのものが悪くなりつつある空気を感じるので

自分、2月末に羅臼の観光船乗ったんですよ

確か知床ネイチャークルーズさんだったかな?

当然乗船時にライフジャケットの着用を促されたし、漁業無線で漁師さんや他の観光船と連絡取り合って海況を把握

レーダーや無線等航海計器類もしっかりしていて、下手な内航船より良いんじゃね?って思う程

救命設備等は流石に大型船には劣りますが、十分な人員(見張要員)の配置、流氷に入り込む際の位置取り等、職業船員の自分から見てもプロの仕事が感じられるものでした

ちゃんと安全に真摯に取り組んでいる会社もありますよって事で」

というもの。 

当然のことながら観光船業界は知床遊覧船のように人員不足、機材の不調の中、だましだまし運航している業者ばかりではなく、真摯に安全対策に取り組んでいる会社があるという証言だ。ハートマン提督さんの投稿に対し、SNSユーザー達からは

「ホント変な空気になってほしくないです。私も20年以上前から知床行ったら乗ってましたもの。今回はホントにいたたまれない気持ちです。写真かなり古いものですが複数隻で運行して安全配慮してたり…該当の会社も写ってますがこの頃はまたよかったのかも?」

「新婚旅行で知床ネイチャークルーズさんを利用するのでとても気になりました!!このニュースで知床の観光船に弊害が出てしまったらと考えると悲しかったので…知床観光船は危険と思ってしまった人の目に、ハートマン提督さんのツイートが届いてほしいです。」

「シャチが大好きで去年羅臼のクルーズでネイチャークルーズさんにお世話になりました。 しっかり、ライフジャケット着用で緊急時の説明や無線のやり取り適宜してました。また、海洋生物はレダーで把握したり出港のゴジラ岩さんやはまなす観光さんとも情報共有してて凄いと思いました」

 など数々の共感の声が多数。またハートマン提督さんが例に挙げた知床ネイチャークルーズの観光船の船長からも

「ご乗船頂きありがとうございます

この時の船長です。

より一層安全運行を心がけていきますのでよろしくお願いします!!️」

という感謝のメッセージが寄せられている。

今回の投稿についてハートマン提督さんにお話を聞いた。

 --今回の観光船の事故についての現状のご感想をお聞かせください。

ハートマン提督:天候の把握、適切な運航判断が出来ていなかったと思います。強風が伴う波高3mとなると、私が勤務している内航貨物船でも注意が必要なほどです。小型の観光船に乗客を乗せた状態で運航できるとは到底思えません。私が乗船したネイチャークルーズさんの観光船だと、出港可能な海象であっても他の観光船や漁船と無線で連絡を取り合いその都度状況を確認していました。レーダーやGPSプロッター、各種無線、測深装置等の航海計器や救命設備も充実していたほか、見張りや乗客の案内に従事する乗組員も5、6人乗船しており、船の規模や乗客数に対して余裕があると思いました。

--今回のように観光客が海に出るにあたって必要な心がけをお聞かせください。

ハートマン提督:たとえ観光船やフェリーであっても、もし落水したら命に係わる場所に行くという意識が必要ではないでしょうか。大多数の船は安全に十分注意して運航しておりますが、客室内に掲示してある救命胴衣の場所や着用方法などは乗客であっても目を通した方が良いと思います。また、乗船中は舷外に身を乗り出したり、立ち入り禁止の場所に入る等の危険な行為は厳に慎むべきです。

--今後の観光船業界や関連団体に望むことはあるでしょうか。

ハートマン提督:大多数は安全運航に努めていることと思いますが、無理な運航をしないような体制づくりが出来たらと思います。私が働いている貨物船の業界においても、船長判断を覆して荷主やオペレーターが無理な運航指示を出してくることが多々あります。

--これまで寄せられたコメントや反響へのご感想をお聞かせください。

ハートマン提督:多くの方に真摯に安全に取り組んでいる会社もあることを知って頂けたようで、楽しい航海を提供して下さったネイチャークルーズさんや知床地域へ少しでも恩返しできたかなと思っています。

◇    ◇

自然の中を運航するという性質上、船舶の事故を完全に無くすことは難しいだろう。しかし法的な整備と運航者の努力、利用者の注意が重なれば今よりは少しでも状況はましになるはずだ。読者のみなさんにもこのゴールデンウイークに観光や仕事で船舶に乗船する人は多いと思うが、少しでも今回のハートマン提督さんのお話を心に留めていただければ幸甚だ。

(まいどなニュース特約・中将 タカノリ)

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