NHK“春の顔”は、どちらも特定の地域に集中する「ご当地名字」!? 「クロ現」の桑子アナと「ちむどんどん」の黒島結菜
今年の4月、NHKでは大規模な番組改編があった。なかでも注目されたのが6年振りに19時台に戻ってきた看板番組「クローズアップ現代」で、そのキャスターをつとめるのが桑子真帆アナウンサーである。
■「桑子」は、群馬県東部を中心に栃木県・埼玉県の県境付近と愛知県岡崎市付近
「桑子」という名字は、全国名字ランキングで6000位台。珍しいというわけではないが、地域的な偏りがあるため、見たことがないという人も多い。最も多いのは群馬県東部を中心に、栃木県・埼玉県の県境付近で、次いで愛知県岡崎市付近の2カ所に集中している。
「くわこ」とは古語で、桑の葉を食べて育つ蚕のこと。万葉集に「なかなかに 人とあらずは 桑子にも ならましものを 玉の緒ばかり」(作者未詳)とあるように、古くから使われた言葉である。
北関東は養蚕が盛んなことで知られており、こうした養蚕業に関わった人が名乗った名字である。一方、愛知県では岡崎市にかつて桑子村という地名があり、付近には養蚕のための桑畑もあった。桑子村は古くは桑蚕村とも書いたといい、ここがルーツである。桑子アナ自身は他地域から移り住んだ新住民の多い川崎市の出身だが、元の出は群馬県とのこと。
また、4月からは連続テレビ小説も新しく始まった。「カムカムエヴリバディ」に代わって始まったのが「ちむどんどん」である。
沖縄の本土復帰50年を記念したもので、主人公の名字「比嘉」は沖縄を代表する名字である他、「砂川」「石川」「喜納」「下地」など、登場人物にはいかにも沖縄らしい名字が並ぶ一方、東京から来た人には「青柳」という本来沖縄にはない名字を名乗らせるなど、細かいところまで気を配っていることがわかる。
■「黒島」は、石垣島を中心に、八重山諸島に集中
さて、ヒロインの比嘉暢子役をつとめるのが黒島結菜。「黒島」という名字は全国ランキングで3000位台で「普通の名字」である。一見どこにでもありそうな感じもするが、実はそうでもなく、沖縄県、北海道、香川県の3カ所に集中している。なかでも多いのが沖縄県で、今でも全国の3割程は沖縄県在住。県内では本島よりも、石垣島を中心に、竹富島、宮古島といった八重山諸島に集中している。
沖縄の名字はほぼ地名に由来しており、「黒島」のルーツも石垣島と西表島の間にある黒島である。黒島はかつては1島で黒島村だったが、今では竹富町黒島となっており、人口よりはるかに多い3000頭もの牛がいることで知られている。
◆森岡 浩 姓氏研究家。1961年高知県生まれ。早稲田大学政経学部卒。学生時代から独学で名字を研究、文献だけにとらわれず、地名学、民俗学などを幅広く取り入れながら、実証的な研究を続ける。NHK「日本人のおなまえっ!」にコメンテーターとして出演中。著書は「47都道府県名字百科」「全国名字大事典」「日本名門名家大事典」など多数。