野良猫ならぬ「ノネコ」…南の島を追われた“野生の猫”を迎えて 「本当に幸せにできるのか」不安は一目で吹き飛んだ
ゆずきくん(4歳・オス)は、2018年3月頃に奄美大島で生まれた。
千葉県に住む加藤さんは、2018年10月に自宅の庭の物置の下にいた子猫、あずきちゃんを保護して飼っていた。11月、そろそろあずきちゃんも猫と一緒に暮らしたほうがいいのではないかと思い、譲渡サイトで猫を探したという。
「たくさんの子猫を検索していると、『ノネコ』という文字が目に入ってきました。『野良猫』ではなく『ノネコ』。意味が分からず調べてみたら、人と関わる事なく野生環境で過ごしている猫だとわかりました。しかも、鹿児島県奄美大島の猫だったので更に興味を持ちました」
加藤さんは、「なぜ奄美大島のノネコが東京で保護されているのか」疑問に思った。募集要項をよく読むと、奄美大島を世界遺産登録するために、固有種であるアマミノクロウサギ保護のため、ノネコの駆除が始まったということだった。
「なぜなのか...ノネコが捕食していると疑われたからです。実際にはアマミノクロウサギは交通事故死が圧倒的に多く、猫が生態系に大きな影響を与えていないことは明らかなのです」
■島を追われた子を幸せにしたい
ゆずきくんは、山に仕掛けられた捕獲器に入ってしまった。捕獲された子は7日間引き取り手が現れなければ処分されてしまう。捕獲された猫の情報が公開されることはなく、仮に飼い猫が捕まったとしても、飼い主がそれを知ることはできない。幸いゆずきくんはボランティアが引き出し、東京までやってきた。
「こんなことが実際に行われているのだと知って、すぐに里親になろうと思いました。生まれ育った奄美大島を追われて、東京に来た子を幸せにしたいという一心でした」
■大人しくて優しい猫
里親になると決めたが、「ノネコ」と呼ばれていた子が家で過ごすことができるのか、先住猫のあずきちゃんと仲良くなれるのか、そもそも人を受け入れてくれるのか、野生化していて攻撃的ではないのか、加藤さんは面会に行くまでは期待よりも不安のほうが大きかった。しかし、実際に会いに行くとそんな不安は吹き飛んだという。
「生後10カ月くらいで、どこにでもいる普通の猫だったからです。殺される必要のない、大人しくてとっても可愛い子が待っていてくれました」
トライアルに入ってから今日まで、ゆずきくんを受け入れて大変だったことは何一つないという。
「人を知らないからこそ、人を怖がらず、嫌なことをされた経験もないので信頼関係を築くのも早かったです」
ゆずきくんはあずきともすぐに仲良くなり、いつも一緒にいる。その姿を見ているだけで、加藤さんは幸せな気持ちになれるという。
ゆずきくんは抱っこが好き。加藤さんが帰宅すると、真っ先に足元に駆け寄って来てくれる。
ゆずきくんを救ってくれたのは「あまみのねこひっこし応援団」NPO法人ゴールゼロのボランティア。毎月、奄美大島で捕獲された猫を引き出し、里親を探しているという。その活動はもう3年以上続いている。
(まいどなニュース特約・渡辺 陽)