震え上がったけど男が男に惚れた…“星野オヤブン”の思い出 お好み焼き屋さんでの逸話
星野仙一監督、お亡くなりになって4年以上経ちますが、私はタイガース監督時代から15年間、健康管理担当主治医としてお付き合いさせて頂いておりました。主治医とは言うものの、私は監督のことを「オヤブン」と呼び、主従関係は逆転していましたけど。
とある日曜日、突然、私の携帯が鳴り、今から行くから点滴してくれ、と。かしこまりました、どうぞお越しください。すぐ仕事場に駆けつけて待っていると、フラッとご自宅から歩いて来られる。点滴の最中、妙にその日は寂しそうで、実は古くからの盟友である島野コーチが亡くなられていたのです。「俺の周りの奴がどんどん先に死んでいくわ」
私は近所に住む星野シンパに大集合をかけ、その日の夕食は監督を囲んで、近くのお好み焼き屋さんで、にぎやかにやりませんか、ということになり、10人ほどで店に入った途端、店内で監督の怒号が鳴り響きました。先にお客さんで来ていた若いお兄さんが、監督の写メを撮ったんですね。「無断で人の写真を撮るなッ、この無礼者!!」。そりゃもう、私らも震え上がりましたよ。
私どもの食事も進みしばらくしているとそのお兄さん、何を食べたかも判らないくらい動揺してたでしょうね、普通ならコソコソと店を出て行くところですが、監督のもとにやってきて、非礼を詫び、写真は削除しました、お先に失礼しますと。監督は、そうか、それならこっち来て俺の横に座れ、おい、誰か写真撮ってくれ、そう言ってお兄さんの肩を抱いて満面の笑顔。数あるエピソードの中でも、特に私の心に残っている一コマです。
男が男に惚れると言う言葉がありますが、まさにあの時は、男・星野仙一に改めて惚れなおしました。
◆松本 浩彦 芦屋市・松本クリニック院長。内科・外科をはじめ「ホーム・ドクター」家庭の総合医を実践している。同志社大学客員教授、日本臍帯プラセンタ学会会長。