たかが動線、されど動線! 作業効率をアップさせたい「家事動線」と快適に過ごしたい「生活動線」
毎日の生活の中で人が動く軌跡が「動線」です。寝たり、起きたり、食事をしたり、風呂に入ったりというのは「生活動線」。洗濯や調理、掃除などは「家事動線」。大きく2つに分けることができます。
家具やモノの配置、間取りによっては無駄な動きが生じて疲労度の高い動線になったり、反対に動きやすいラクな動線になったりもします。毎日、生活をする場だけに、できるだけ無駄のないスムーズな動線を考えることが大切です。
■快適な暮らしには、通路幅と家具の配置が決め手
動線は間取りと家具配置によってほぼ決まるといっても過言ではないと思います。毎日の生活を快適に過ごしたいと思っているのならば、生活空間の移動を簡単にすることです。
そのためには、家具の置き場所が決め手となってきます。たとえば、キッチンから応接間に行くとして、その通路上に椅子やテーブルがあれば、人はそれを避けて動かなければなりません。毎日となると、些細な遠回りでもうっとうしく感じてくるものです。
基本として、スムーズに動くには、家具類は動線の妨げになるような場所に置かないことに尽きます。加えて、家具が多すぎて行き止まりになったり、動線がうまくとれなかったりする場合は、無駄な家具は処分することを検討してもいいかもしれませんね。
また、快適な動線にするには十分な通路幅をとることも重要です。通路を単に確保すればいいというわけではありません。通路が狭いと、ストレスになってきます。1人が通れる通路幅は約60センチといわれ、2人がすれ違うなら約120センチは必要です。
リビングや台所などみんなが行き交う場所の通路幅は、できれば約120センチは確保したいところ。暮らしやすい家は「生活動線」がしっかり考えられているということなのです。
■家事動線は作業効率も考えて、動きたい
台所では、料理台と冷蔵庫や食器棚の動きがスムーズなのが一番です。また、作った料理などは食事をするテーブルにいかにスムーズに出せるかも考えたいものです。
台所での注意点は、モノを置き過ぎると動線がスムーズにいかず、ストレスになることです。収納できるモノは出しっぱなしにはせず、片付けて、床にはできる限りモノを置かないことです。
より少ない動きで、効率よく家事をすることを念頭に動線を考えてみてください。家事動線が効率よくできれば、家事自体がラクになることは間違いありません。
清掃をする場合は、間取りの小さな部屋(寝室や子ども部屋など)から大きな部屋に移動していくと、きれいに片付くといわれています。
言うまでもなく、上から下へ順番に掃除するのは基本ですね。上の埃を床に落とし、最後に床を掃除すればいいということになります。一般的には、部屋は入口付近から始めて、時計回りに掃除していくといいといわれています。もちろん、上記にとらわれず、掃除をする人が自分にあった動きやすい動線を考えるのが一番です。
洗濯の場合は、洗う場所から干す場所へ移動し、乾けばたたんで、タンスなどに仕舞います。このように意外と移動が多いのが洗濯動線です。理想は1カ所で作業をまとめてすること。もし、家を建てる場合は設計段階から時短できるように考えたいものです。
さらに理想を言えば洗った場所から干す場所が近いこと。洗濯は水分を含むと重くなり、重労働にもなりかねません。乾燥機を利用するのもいいでしょうし、時短できる動線を考えてみてください。
家事動線がラクになれば、心の余裕にもつながっていきます。たかが動線、されど動線なのです。
◆浅野 静 日本工業大学卒業。東京工業大学清家清研究室研究生修了後、清家清+デザインシステム入所。その後3年間、米国ロサンゼルスのグローバルリンク社においてパッシブソーラーシステム研究。京都精華大学建築学科非常勤講師。現在、株式会社エトス・アソシエイツ代表取締役。中国蘇州駅前都市計画最優秀賞(2011)など数々の賞を受賞。日本建築家協会・登録建築家。