「パックご飯」変わる売り場 お米→レトルト食品コーナーへ プロが解説「カレーや親子丼に近い方が売れる」

 突然ですが、初めて行くスーパーで「パックご飯」を買うとしたら、何売り場に行きますか。先日、タレントの中川翔子さんがテレビ番組の中で減量中に「パックのマンナンごはん」を食べていたことを明かしました。気になって近所の大型スーパーへ行くと、お米売り場にパックご飯は「なし」。もしやと思い、レトルトカレーの売り場に行くとありました。「いやいや、パックご飯=米売り場は常識でしょ」と思ったあなた。調べてみるとそうでもないんです。

■売り場陳列のプロが解説

 「Yahoo!知恵袋」など、ネットの疑問解決ページには「パックご飯はどこで買える?」「大手スーパーでパックご飯が売ってなかった。どこにある?」など、売り場が分からなかった人たちの質問が複数あり、「うちの近所では米売り場にありますよ」「おそうざいコーナーにあった」「レトルトカレーの棚では」などのアドバイスが寄せられています。

 兵庫県内にある大型スーパー5店を調べてみると、米売り場に置いていた店はわずか1店。4店はレトルト食品やふりかけの隣にありました。

 パックご飯→米→米売り場の方が連想しやすいと思うのですが、もしかして米売り場には置けないルールでもできたのでしょうか。

 食品包装資材専門商社でスーパーの売り場陳列に詳しい「折兼」(本社、愛知県名古屋市西区)の担当者に聞くと「お米売り場に置けないルールは特にありません」。

 しかし、レトルト食品売り場に置く店舗が多い理由が分かりました。

 「パックご飯がレトルト食品近くにある理由は『関連陳列』によるものです。レトルトのカレーや親子丼の近くにパックご飯を陳列することにより、ついで買いや買い忘れ防止を促し、販売点数の増加、売り上げアップにつながります。そのためパックご飯はレトルト食品の近くに陳列するお店が多いのです」(同社担当者)

■メーカー担当者「1つのカテゴリーとして成長したため」

 「売られる場所が変わりつつあります」と話すのは食品メーカーのベテラン担当者。匿名を条件に現状を教えてくれました。

 「昔はスーパーのお米売り場のバイヤーがパックご飯も担当し、お米やお餅などと隣接した棚で展開していました。しかし現在はお米があまり売れなくなり、パックご飯が独立した1つのカテゴリーとして成長しました。お米売り場とレトルト売り場、併売する店もありますが、カレーや親子丼などのレトルト食品の近くで並べた方が売れます。そのためお米売り場ではなく、レトルト食品やふりかけと一緒に売られることが増えました。パックご飯の売り場は変化しつつあります」(食品メーカー担当者)

 農林水産省の発表によると、2021年のパックご飯の生産量は前年比4.3%増の23万4064トンとなり、6年連続で過去最高を更新。電子レンジで約2分という調理の手軽さや賞味期限の長さが重宝され、ローリングストックとしても欠かせない存在です。同省では生産量が継続的に増加する理由を「手軽に食べられる簡便化志向のニーズに適していることや備蓄用から日常食としての位置づけが定着した」と分析しています。

■「パックご飯」マメ知識

 パックご飯は通称で、正式名称は包装米飯です。製造方法により「容器包装詰無菌化包装米飯」と「容器包装詰加圧加熱殺菌米飯」の2種類に分けられます。

 包装米飯協会公式サイトによると、容器包装詰無菌化包装米飯(無菌包装米)は「お米を炊飯するまでに、短時間高温加熱殺菌、超圧力殺菌等の独特の無菌化を施したのち炊飯し、無菌化状態のクリーンルームで密封包装したもの」。容器包装詰加圧加熱殺菌米飯(レトルト米飯)は「調理したごはんを、密封した容器に入れて圧力をかけ、加熱殺菌(121度、4分以上)したもの」。

 日本で初めて開発された加工米飯は1972年の冷凍米飯でした。1973年レトルト赤飯、1975年レトルト白米と続きます。無菌包装米としては1988年、サトウ食品が「サトウのごはん」の製造販売を開始。その後、多くの食品メーカーが参入し、2017年には生活用品大手アイリスオーヤマが自社生産を始め話題になりました。味やサイズのバリエーションも増え、各社から五目釜飯やこんにゃく米、300gの大盛りサイズや100gの小分けパックなどが販売されています。

 最近では日本政府からウクライナへの人道支援として3万9000食が空輸されました。

(まいどなニュース・金井 かおる)

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