東京上空お散歩 多摩川河川敷に無数のクレーターを発見した!
多摩川の河川敷に、野球場が16面も密集しているエリアがある。航空写真で見ると、さながら無数の隕石が落下したクレーターのようだ。なぜこんなに多くの野球場がつくられたのか、野球場を管理する大田区役所の協力を得て調べてみた。
■ほかに場所がなかった切実な事情
多摩川は山梨県と埼玉県の県境にある笠取山を源流とし、東京都大田区を経て東京湾へ注ぐ。
河口に近い大田区西六郷で大きく南側へ湾曲した内側に土砂が堆積して、広大な平面ができている。そこに野球場が16面も密集しているエリアがある。
「なぜ野球場ばかり16面も?」
野球場を管理する大田区役所都市基盤整備部地域基盤整備第二課管理係の公園管理担当によると、野球場が16面あるエリアは「多摩川緑地」といい、野球場のほかに少年野球場(通常の野球場よりやや小さい)が3面、サッカー場が2面、400メートルトラックが1面あって、有料駐車場も設置されているという。
なぜ河川敷につくったのかを尋ねると「河川敷以外は市街地で、スポーツ施設を設置する場所を確保しづらいから」とのことだった。
多摩川は国土交通省が管理する一級河川だから、河川敷も国有地である。そこへなぜ大田区が野球場をつくって運営しているのだろう?
じつは大田区が多摩川の河川敷につくったスポーツ施設は、ほかにもある。下流のほうから順に大師橋緑地、多摩川六郷橋緑地、多摩川緑地、多摩川大橋緑地、多摩川ガス橋緑地、多摩川田園調布南・鵜の木緑地、多摩川丸子橋緑地まで約9kmにわたる7緑地だ。これらを大田区が占用し、野球場やテニスコートなどの施設をつくって、管理しているという。
占用とは「独占して用いることや「占有して使用すること」を意味し、大田区は国土交通省が定める基本方針に則って、多摩川河川敷を占用している。
初めに六郷橋緑地が、1959(昭和34)年に整備されたのを皮切りに、1962(昭和37)年にはガス橋緑地、1964(昭和39)年に多摩川緑地と続き、1969(昭和44)年に大師橋緑地が整備された後しばらく期間をおいて2006(平成18)年に多摩川田園調布南・鵜の木緑地が整備されて現在に至る。多摩川の河川敷で大田区が管理する施設は以上だが、大田区だけでなく世田谷区、対岸の神奈川県川崎市なども緑地やスポーツ施設を整備している。
ところで、台風や大雨で川が増水したときはどうなってしまうのだろうか。聞いてみると「直近では2019(令和元)年の台風19号で野球場が水没しました」という。
■大田区に住んでいなくても利用できる
河川敷の施設は、大田区のホームページや電話などで申し込んで所定の料金を支払えば、区外に住んでいる人でも利用できるという。
野球場が多いから大田区がとりわけ野球の盛んな地域なのかというと、区外から利用する個人や団体も多いので、それは把握しづらいそうだ。
休日には社会人野球や少年野球のチームが練習や試合が行われるほか、グラウンドはソフトボールやキックベースボールにも使えるため、けっこう賑わっていたという。コロナ禍ではどうなのだろう。
かなり広大なエリアで、対岸には川崎市のビル群を望む。初夏の日差しを浴びながら土手を散歩したり、広場で遊んだりする子供たちの姿が戻っていることを願う。
(まいどなニュース特約・平藤 清刀)