友だちにあざの理由を聞くのはアリかナシか 小学校の特別支援教室で使う問題が「大人でも解答に悩む」と話題

 小学校の特別支援教室で使われているテキストの問題が、大人でも解答に悩むほど難しいとSNSで話題だ。問題のテーマは、本当のことなら何でも言っていいのかな。長い間学校を休んでいた友だちに「何でそんなに休んでいたの」と聞くことはいいのか、いけないのかなど、10の質問を巡って議論が過熱している。

 テキストの名前はSSTワークシート(社会的行動編)。SSTはソーシャルスキルトレーニングの略で、「友だちとうまく関われない」「空気が読めない」「集団行動ができない」といった課題を持つ子どもたちが、集団で求められる言動が取れるように指導する支援教材だ。項目は、状況に応じたあいさつや友だちの輪に入る方法など96個。それぞれの課題に対してなぜそのような行動を取るのかを考えたり、相手の気持ちを想像したりしながら学べる。

 なかなか面白い問題。できていない大人もいるよ-。ツイッターで問題の画像を投稿したのは、東京都で2児を育てる男性だ。小学3年の娘が5歳の時に発達支援が必要と診断された。娘は気持ちを伝えるのが苦手で、突然カッとなって怒ったり、落ち着きがなく足をぷらぷらとさせたりすることがあるという。テキストは週1回の特別支援教室で利用。男性は娘の学習を垣間見る中で、「本当のことなら何でも言っていいのかな」という項目に興味を持った。問題は、質問に対して「いい」「いけないの」の2択で答える形式だった。

・少し太っている人に「あなた太っているね~」と言う。→いけない

・かけっこで1位になった友達に「足早いね」と言う。→いい

・手作りカードをくれた友達に「へたな絵だね」と言う。→いけない

・友だちからもらったあめを食べて「おいしいね」と言う。→いい

・妹の失敗を笑いながら話をしていた友達がいたので、同じことを何回も繰り返し真似して言う。→いけない

 男性によると、これらは比較的答えは分かりやすかったというが、相手との関係性によって悩む問題もあったそうだ。

・大人の女の人に「あなたの年、何歳ですか」と聞く。

・友だちの名前を変えたおもしろいあだ名を考えたので、繰り返しそのあだ名で友だちを呼ぶ。

・学校をずっと休んでいたので学校に来にくくなった友だちが、久しぶりに来た時「何でそんなに休んでたの」と聞く。

・友だちを見て「何でそんなにあざがあるの」と言う。

・字を書くのが苦手な子が自分の書いた字を「きたない字でしょ」と言ったので「ほんとうだね」と言う。

 ツイッター上でも答えが割れたが、テキスト上の解答は全て「いけない」。学校では、答えに関係なく花丸が付けて返却されたという。男性は「たぶん、一生懸命考えたことに意味があるじゃないかな」と話す。

■人との関係性の中で言葉を選ぶ大切さ

 テキストの制作に携わったのは、NPO法人「フトゥーロ」(横浜市)。発達障害や、診断がなくても支援を求めている子どもたちをサポートしている。所長の安住ゆう子さんによると、フトゥーロに通う子どもの多くは、人との関係性の中で言葉を選んだり、相手の気持ちを想像したりするのが難しいことがあり、困りごとやトラブルが起きてしまうケースがあるという。意識的にソーシャルスキルを学べる一つの手段として、2010年にテキストを考案。子どもや保護者から聞いた実体験を元に問題を作った。

 解答を付けたのは、利用者からの基準がほしいとの要望があったから。「ただ、必ずしも絶対的なものではない。相手との距離感によって言葉の捉え方は変わるので、テキストで言葉を選ぶ大切さを考えるきっかけになってほしい」と安住さんは強調する。

 一方、ツイッター上では、大人の女性と限定することに否定的な意見や、あざを尋ねる問題では家庭内暴力を確認するためにも「いい」とするべき声があった。安住さんは「そのように受け取られるとは思っていませんでした…」と戸惑いつつ、「その人の言われたくないことや、生まれつきで気にしている身体的なこともある。時と場合に応じて、相手の嫌なことをしないように、思ったことを全て口にしない、というのも大事な配慮だと思います」と話した。

(まいどなニュース/神戸新聞・山脇 未菜美)

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