「あの人、おかしい」トイレ横のベンチに1時間 女児を目で追う男 確信した私服警備は
「あそこに座ってる男の人、おかしいと思うんです。もう20分以上いるんです」。フードコート横のトイレ前のベンチ、子供用リュックを持ち、一見子を持つ親のような男性の監視が始まりました。「もしかして…」と従業員に知らせたお客さんの不安は的中。男はフードコートの女児を目で追っていたのです。トイレが無人であることを確認した上で、元刑事の警備担当者は「子ども待ってんの?」と世間話のように話しかけ、そして畳みかけました。「1時間もお前ここで何してんの?子どもなんて待ってないよな?」と。休日の商業施設で実際に起きた出来事です。
スーパーの従業員というTwitterユーザーのcui(@cuicuibumblebee)さんが「スーパーで不審な人物を見かけたら勘違いでも気のせいでも構わないので遠慮せずお近くの従業員に声をかけて下さい」と呼び掛け、以前勤めていた店舗で起きた事例を連投しました。
■一見、子どもを待つ父親風
cuiさんやツイートによると、きっかけはフードコートを利用していた家族連れが感じた“違和感”でした。一見したところろ、トイレ前で子どもを待っているようでしたが、20分以上が経過しており明らかに不自然。店側は男に察知されないよう、私服警備(元刑事の万引きGメン)がフードコートから男を注視し、女性従業員と男性従業員が私服に着替え、多目的トイレを含む全個室に子どもがいないことを確認しました。
一見穏やかなおじいちゃん顔のGメンは、男の隣に腰掛けます。「子ども待ってんの?」「いくつ?」「それくらいが一番かわいいよな」とやり取りを重ねます。頃合いを見計らって、トイレに子どもがいないことを告げます。「俺ずっとお前のこと見てたんだけどよ、一時間もお前ここで何してんの?子供なんて待ってないよな?ん?」と畳みかけ、動揺し立ち去ろうとする男に「おめえの顔、覚えたからな」とダメ押しの一言を発しました。
取り押さえるには至りませんでしたが、店舗の防犯カメラの顔画像や別の私服警備がチェックした男の車のナンバーをもとに、男の来店時には従業員や警備員が張り付きました。そうした“空気”を察したのか、男はその後姿を見せなくなったそうです。
■投稿者に聞いた
cuiさんが勤めた店舗では、この事例のように疑わしい人物に警告することは月に1度はあったそうです。話を聞きました。
ー「おかしい」と感じたお客さんの直感が…
「お客さまからのお声かけは、子どもが狙われた事件が報じられると増えますが、平時は少ないです。従業員や警備の巡回は同一人物が同じルートをずっと周るのではなく交代で行い、不審点(子供をつけている、盗撮疑惑など)を察知できるのですが、今回の件のような物色行為は判断しづらいのが現状です。『30分以上ベンチで子供を目で追ってる』といった長時間居座りの疑わしい行為はお客さまから教えていただけると、対象をマークして子どもを守る助けになります」
ー商業施設でリスクが大きい場所はありますか
「フードコートや書店などの近くのトイレが危険です。お客さまが多いためか、近くのトイレなら大丈夫だろうと油断しがちですが、不審者からすれば他のお客さまに紛れやすく、一瞬の隙を狙うのだと思います。フードコートや書店そのものが危ないのではなく、そういった人けが多い場所から急に人がまばらになり連れ込みやすい場所が危ないのです。今回の件に限らず、元刑事の男性は『子どもから目ぇ離しちゃダメだ』とよく言っていました。シンプルですがこれ以上の防犯はないと思います」
ー「遠慮なくお声掛けを」とツイートしたのは
「例として挙げたケースは、明らかな不審動向が他にもあったため、こちらとしても強気の行動に出ることができましたが、そうではない場合もあります。お客さまには、もし不審者やおかしな出来事があれば遠慮なく従業員にお伝えいただければと思います。迷われる方が多いようですが、スーパーの従業員の多くは女性で子供を持つ親です。お客さまと従業員という立場の違いはありますが、従業員も犯罪予備軍を排除したい気持ちは同じです。お客さまから得た情報を基にできる限りを尽くします」
■子どもが被害者の犯罪は減少傾向だが…
令和3年警察白書によると、13歳未満の子どもが被害者となった刑法犯の被害件数は減少傾向にあり、2020年は8788件と、前年より3097件(26.1%)減少しました。しかし、子どもの心身に深刻なダメージを与える罪種である強制わいせつや略取誘拐を見ると、強制わいせつは減少傾向とはいえ700件超、略取誘拐は一時期の横ばいから増加傾向にあります。
幼い子を持つ親にとって衝撃だったのが2011年3月に熊本市内のスーパーのトイレで3歳女児が殺害された事件でした。女児は1人でトイレに行き、幼児性愛の男に性的虐待を受け、用水路に遺棄されました。
cuiさんが勤める店舗でも事件後、警備側は巡回回数を増やし従業員側は事案発生時の運用の確認・徹底が行われました。従業員はレジにかたまらず、分散して売場に立つ▽1人で歩いている子どもがいたら必ず声かけする▽不審者・不審な出来事は必ず警備・上司に報告・連絡・相談の徹底を図ったそうです。
「小児性犯罪者らの不審者は父親に擬態しています。子ども用のリュックや上着を片手に、わが子を眺めているようによそのお子さんを目で追い、わが子を撮っているかのように他人のお子さんを撮影し、弱い子どもが1人になるタイミングを狙っています」とcuiさんは指摘します。その危険は、スーパー、ショッピングモール、観光地、行楽地など場所を問いません。
「彼らは子どもがいる場所にいてもおかしくないよう必ず擬態しています。だから勘違いかもと思われるかもしれませんが、感じた直感を信じてください」
(まいどなニュース・竹内 章)