「主人の形見の蕎麦屋、守りたい」奥さんの思いは届いた! クラファン代行会社が橋渡ししたドラマの数々
コロナ禍ですっかり定着した「クラウドファンディング」。しかし、個人や中小企業が挑戦するには媒体探しからプロジェクトの内容制作、支援者のお礼(リターン)などやることが多く、あきらめてしまう人も少なくない。そんな中、これらをまるごと一式引き受けてくれるクラファン代行会社が注目を集めている。「スバキリ商店(株)」の小西光治代表に話を聞いてみた。
■チャレンジする人を応援するアーティスト軍団
「クラウドファンディング」とはインターネットを通して実行者がプロジェクトを紹介して支援金を募集。支援者には支援金に応じて設定されたプロジェクトに関連する商品やサービスなどのリターンが提供される仕組みになっている。
特に購入型クラウドファンディングは2020年の時点で市場規模が500億円を上回っているという調査報告もあり、小西代表は「22年はさらに拡大していることが予想されています」と話す。
実際「コロナの影響で店の売り上げが下がったので何とかしたい」「新しいサービスを世の中に広めたい」「アーティストとしての活動を知ってもらい、新たなファンを獲得したい」など、新たなビジネスチャンスを求めて”クラファン”にチャレンジしたいと思っている個人事業主や企業は多い。
ところが、現実問題として「資金調達はしたいが、どう取り組んでいいのか分からない」「インターネットは苦手で困っている」などという声が少なくないのも現状だ。
そんな個人事業者や企業のお助けマンとなっているのが、クラファンの「大変なところ」をまるごと代行してくれる「スバキリ商店」だ。
当初は切り絵などのデザイン、制作会社としてスタート。「スバキリ」の名称は「素晴らしい切り絵作家」の略なのだそうで、ライターやデザイナーなどメンバーそれぞれの得意分野をいかして活動してきた。
そのノウハウを生かし、2020年12月から本格的にクラファンの代行&プロデュース業にも進出。これまで500件以上の案件に関わってきた。法人化した昨年には業界屈指ともいえる321件のプロデュースを手がけるまでになっている。
「クラファンのプラットフォームはたくさんありますが、弊社のようにクラファンの中身を丸投げできるサービスを実施しているところは聞いたことがない。クラファンの実施は、コンサルの方でも多くても1カ月1件くらいらしいので、年間300件以上プロデュースしている会社はないと思います」と小西代表は自負する。
■丸投げOK、さらに情報発信の場としても注目
例えば、新商品の発売や支援金を集めたいなどクラファンに挑戦したいと思えば、媒体探しから制作にいたるまで、スバキリ商店が相談に乗り、アドバイスをする。「当然ですがクラファンとマーケティングは非常に相性がいいん」と小西代表。クラファンなら、商品やサービスを予約販売という形でマーケティングもできるのだという。
実際、クラファンをやると決めれば、丸投げOK。面倒なプロジェクト文章の作成やサムネイルはすべてスバキリ商店でやってくれる。依頼主はインタビューを受けて、答えるだけでいいそうだ。ライターが文章を書いた後、サムネイルは専門のデザイナーが担当。リターン画像などもバキリ商店のメンバーが受け持ち、プロジェクト公開後もクラファンが終わるまでサポートしてくれるというからクラファン初心者には心強い味方のようだ。
■クラファンの数だけドラマがある?
依頼する個人事業主や企業の思いも様々だ。例えば「主人が残した蕎麦屋さんを継続したい」という内容は和歌山県橋本市で『天宏』を営んでいた伊達智英子さんから届いた。形見となった蕎麦店を守りたいという奥さんの気持ちがスタッフにも伝わり、一丸となってサポートすることに。最終的には奥さん一人になったこともあり、メニューを絞り込み、1日限定20食で打ち立ての十割蕎麦のコースを提供することにした。
さらに、お客様が心の荷物を下ろせるような、ゆったりとしたお店にしたいという思いで店名も「ここね」へ。結果、目標金額の倍以上を集めた。
もったいない精神でクラファンに挑戦した企業もある。さぬきうどんの本場として有名な高松市で昭和22年より安心、安全をモットーに、味にこだわり続けて乾麺を製造の株式会社さぬきシセイでは「季節はずれ」で廃棄されてしまう細うどんやそうめん、ひやむぎなどの乾麺をお値打ち価格で提供したいと一念発起。目標の15倍近い支援金が集まった。
福井県敦賀市にある海鮮丼・海鮮かき揚げ丼の専門店「うお吟」が「越前若狭の海の幸を全国に届けたい」と宅配サービスをアピールするためにクラファン。すると目標金額の5倍以上が集まった。
「今やクラファンは資金調達だけでなく、情報発信やテストマーケティングの場にもなっています。誰でもが気軽にクラファンに挑戦できる時代だといえます。僕たちはそれを全面サポートするのが仕事だと思っています」と小西代表。敷居が高いと思っていた人には朗報だろう。
(まいどなニュース特約・八木 純子)