鹿児島市が犬猫殺処分ゼロを達成 継続を目指しクラファンで「保健所から引き出した猫たちの医療費支援を」

鹿児島市の保健所では、令和3年度の犬猫殺処分ゼロを達成しました。保健所から猫を引き出して、その一役を買ったという動物保護団体の「NPO法人あんじゅりあん」(鹿児島県)。殺処分ゼロ継続を目指し、保健所から引き出した猫たちの医療費支援を呼び掛けるため、クラウドファンディングに挑戦中です。 

あんじゅりあんの理事長・平田昇さんは「私たちは、鹿児島市の猫の殺処分ゼロを目指してこれまで活動してきました。この状態を継続するためには、1匹でも多くの猫たちができるだけ健康な状態で里親さんたちに迎えていただけるよう負担している医療費の軽減が最重要課題です。現在は団体所属スタッフの寄付と協力病院さんのご負担によって支えられていますが、この状態では長期間に渡って猫たちをケアすることができません。多くの方に鹿児島市の殺処分ゼロを支えるサポーターとなっていただきたいと願っています」と話します。

■鹿児島市の保健所、令和3年度の犬猫殺処分ゼロ その裏で自然死の猫たちも・・・

平田さんによると、近年の鹿児島市における猫の殺処分数は、令和元年度に283匹、令和2年度は133匹(※)。令和3年度は、あんじゅりあんが84匹引き出して最終的にゼロに達成しました。鹿児島市で統計を始めて初の殺処分ゼロとなるといいます。(※「出典:鹿児島市の狂犬病予防法及び動物愛護管理法等に基づく業務統計より」)

「今回の殺処分ゼロを奇跡のゼロにせず、継続していくことが目標です。ただ、保護時に弱っていて保健所で自然死する猫も多数います。これからは単に殺処分される猫の引き出しを続けるだけでなく、自然死として亡くなっている状態を少しでもなくせるようにと、猫たちが収容されたら連絡をもらって駆け付けられるような関係をつくり、表面に出ない殺処分もなくしたいです」と平田さん。

さらに、鹿児島市について「まだまだ動物愛護の精神も根づいていない地域が多く、活動を通して亡くなった動物を生ごみと一緒に出す習慣が続く地域もあるという事実を知りました。驚きです。また亡くなった小動物の遺体を焼くための焼却炉もありません。地域に暮らす住民の考え方を啓蒙していかない限り、鹿児島市内の保護猫に対する意識を変えていくのは難しいと感じています。だからこそ、この問題を含め鹿児島市、鹿児島選出の国会議員らに働きかけを行っています」と訴えます。

■鹿児島の猫たちを神奈川で里親探し

平田さんは神奈川県平塚市を拠点に保護・譲渡活動に取り組む「NPO法人平塚のら猫を減らす会」の理事長も務めるベテラン保護活動家。3年ほど前、あんじゅりあんの副理事長・東さんと平田さんの団体が主催した勉強会を通じて出会い、あんじゅりあんの理事長を兼任することになったそうです。

「東さんたちは私と出会うまでは保健所で殺処分になる猫たちをそれほど引き出したりしていませんでした。譲渡という考え方がなく、保護したらシェルターで一生涯お世話をするという団体でした。鹿児島市内の譲渡についてはほとんど費用を請求していない譲渡が大半です。『野良猫にお金を払いたくない』という考え方が根付いており、譲渡までにかかった医療費などを求めがたいのが現状。保健所が引き取る際も特に費用がかからないことなどから、『何かあったらまた保健所に』と考える方も少なくないため、再度保健所に引き取られている猫たちも多いです。

そういった背景の中、あんじゅりあんさんのメンバーが殺処分ゼロを目指したいのであれば、譲渡は平塚でやりましょうとお伝えしました。その代わり、平塚で一生面倒見ないといけない猫が発生した場合はあんじゅりあんさんのシェルターで面倒をみてもらうようにして、お互いにメリットをクロスさせようということになりました」(平田さん)

■保健所から引き出した猫たちは状態が悪く、多額の医療費がかかる

こうして現在は、鹿児島市の保健所から猫たちを引き出してあんじゅりあんのシェルターでケアをし、慣らしてから神奈川の譲渡会で里親探しをしているとのこと。とはいえ、保健所から引き出した猫たちは健康状態が悪く、通常より多額の医療費がかかっているというのが現状だといいます。

「例えば多くの保護施設では、ふん尿の処理を水を使って勢いよくケージの中に流すため、ケージ内の猫たちが濡れ、体調に変化がでてしまいます。丁寧なケアが必要な子猫は体温を奪われ低体温となり弱っています。また、成猫も肉球が常に濡れた環境であるために腐っている子も見られます。そのため、初期医療をすると同時に治療が必要で1匹当たりにかかる平均医療費が65000円前後。また、ケガをした猫の引き出しもしており、負傷した猫については交通事故などで重症の場合が多く1匹で10万円を超えることも。

ただ、全額を里親さんにご負担いただくには大きく、鹿児島の猫については上限を40000円(不妊去勢手術は別料金)としてご負担いただいています。もちろん費用の不足分はメンバーの自己資金によってまかなうとともに、獣医師さんのご厚意で医療費も通常よりも金額を抑えていただいた上でのご負担です。現状の医療費や団体の運営状況を踏まえ、今回のクラウドファンディングを通して、少しでも里親さんの負担をさらに軽減していこうと思っています」(平田さん)

   ◇   ◇

 現在、あんじゅりあんが保健所で引き出した猫たちは神奈川で譲渡を行っていますが、将来的には鹿児島市内で保護した猫たちは鹿児島での譲渡を目指していくとのことです。

クラウドファンディング「鹿児島市-動物管理センターの殺処分ゼロ継続のための医療費にご支援を」(READYFOR)の目標金額は300万円。期限は6月30日まで募ります。問い合わせは、メールアドレス(npo.angelien@gmail.com)まで。

(まいどなニュース特約・渡辺 晴子)

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