茨城の国道沿いで保護された子猫 縁あって東京の飼い主さんのもとへ 「適度な距離感の同居人です」
■捕獲器に入っていた野良の子猫
あずきさん(2歳・メス)は、2020年10月上旬、茨城県の国道沿いにある飲食店駐車場に設置された捕獲器に1匹だけで入っていた。野良の子猫だったが、捕獲器にも周囲にも母猫や兄弟は見当たらなかったという。生後3週間くらいで、お腹が空いていたので入ったのではないかと考えられている。
あずきさんを預かったボランティアは8匹の猫を飼っていたが、あずきさんは先住猫たちに全く物おじすることなく堂々と振る舞い、1匹で遊ぶこともあったという。
■子猫を飼いたい
東京都に住むYさん(@azuki_thecat)は、実家で飼っていたシーズー犬のももちゃんを2020年9月に亡くした。15歳8カ月だった。
「最後は家族全員で見送ることができましたが、それでもかなり辛いものがありました。悲しいからというわけではありませんが、一度は自分自身でペットを飼ってみたいと思うようになったんです。実は、犬派なので犬が良かったのですが、犬は毎日散歩をしなければなりません。仕事で家を不在にすることなども考え、猫を飼うことにしました」
Yさんは、2020年の年末くらいから譲渡サイトで猫を探したり、譲渡会に行ったりした。ただ、「一人暮らしの人には譲渡できない」と言われたり、多数の希望者がいて選ばれなかったり、なかなか話が前に進まなかった。
「成猫ならもっと早くご縁があったのかもしれませんが、ペットを飼うのは最初で最後になるかもしれないと考えると、生後半年くらいまでの子猫のうちから飼ってみたいと思ったのです」
子猫を希望すると、2匹以上一緒に飼って欲しいという要望が多かった。
「『子猫は2匹以上で』というのは理解できるのですが、命を預かるだけでもかなりの重み。私は1匹を大事に育てたいと思いました」
立て続けに譲渡を断られることで、Yさんは少し意地になった。
「『絶対に飼ってやる!』という変なスイッチが入っていたのかもしれません。そんな時、2021年1月初旬に譲渡サイトで見つけたのがあずきさんでした。目が印象的で存在感があり、可愛かったので忘れ難く、申し込みをしました」
希望者は5人いたがYさんが選ばれ、茨城県の預かり主のところまで会いに行ったという。あずきさんは、初対面のYさんにもすぐに懐いて、猫じゃらしで遊び、チュールを手からぺろっと食べた。
「全く警戒心のない猫でした。とても小さくて、『本当にこの小さな生き物を迎え入れることができるんだろうか』と思いました。不妊手術が終わってから迎えることになりました」
■人懐っこい、犬のような猫
Yさんは2021年1月31日、あずきさんを迎えた。あずきさんは全く物怖じせず、人見知りもしなかった。
「堂々としていてふてぶてしいくらい。人が遊びに来ても隠れることはほとんどありません。自宅に来たガス機器の点検の人にも近づいていましたし、帰省する時は連れて行くのですが、実家にもすっかり馴染んでいます」
Yさんは、「猫を飼うと旅行に行けなくなる」と思っていたが、預かり主が「旅行に行ってもいいと思う。私だって友達やシッターさんに頼んで旅行に行きますよ」と言ってくれた。独立心の強いあずきさんは、1泊2日の出張くらいなら余裕でお留守番をしてくれる。留守中の世話はあずきさんファンの隣人に頼んでいるそうだ。
Yさんとあずきさんの関係だが、いつもべったり一緒というわけではない。
「あずきさんが部屋にいる、それだけでほっとできるんです。隅っこで丸くなって寝ているのをみているだけで幸せな気持ちになれます。適度な距離感の同居人という感じです」
あずきさんはYさんが外から帰ると玄関まで迎えに来てくれる。足元でごろーんと転がって弓なりになり、お腹を見せてくれる。「ニャーニャー」と話しかけてくることもあり、Yさんが「ニャー」と返すと返事が返ってくる。まるで会話しているようだという。
「人懐っこくて、ちょっと犬っぽいところもあるなと思います。縁あって私のところに来てくれたので、1匹でも幸せと感じてもらえるよう終生大切に飼いたいです」
(まいどなニュース特約・渡辺 陽)