片眼に問題を抱えて保護された子猫…なかなか心を開かなかったが、今やすっかり甘えん坊に 飼い主は猫のために「掃除好き」へと変貌
■ブリーダーから保護猫カフェが引き取った子猫
じゅんたくん(生後8ヶ月・オス)は、千葉県にあるショッピングモール内にある保護犬・保護猫カフェにいた。詳細は不明だが、ブリーダーから兄弟と一緒に引き取ってきた子だという。子猫の頃に猫ヘルペスウイルスによる瞼球癒着を起こしていて、左眼の眼球が白く濁り、膜が張っている。
■じゅんたを飼いたい
東京都に住む田代さんは、実家にいる時、飼い主に飼育放棄された犬を父親が引き取って飼っていたことがあった。その犬がいる、それだけで家族一同幸せだったという。犬は4年前に亡くなったが、今でも大切に思っているという。
そうした家庭で育った田代さんは、漫然と犬や猫と暮らしたいと思っていた。ただ、それは憧れのようなもので、すぐにどうこうということはなかった。2021年6月に妹が結婚し、生後2ヶ月の野良の子猫を保護。家族として迎えたのをきっかけに、田代さんは、「私も妹のように猫を迎えたい」という思いを抱くようになったという。
2022年2月23日、田代さんはじゅんたくんに出会った。一目惚れだったという。
「帰宅して譲渡条件を確認し、最低15年は一緒にいられるか、自分は猫を飼えるような人間なのかなど、深いこともいろいろ考えて悩み、家の近くの保護猫カフェにも行きました。結局、私は猫がいたら幸せで、その猫を幸せにしてあげたらいいんだなってシンプルな答えに辿り着きました」
田代さんは、どの猫でもいいから飼いたいというのではなく、じゅんたを飼いたい、お迎えしたいと思った。3月4日、家族に相談して、じゅんたくんを迎えに行ったという。
■心地良い空気のような存在
じゅんたくんは家に向かう車の中で不安げにか細い声で鳴いていた。田代さんは、その足で動物病院に寄った。動物病院では目の手術をしてもあまり意味がないと言われた。家に着いても緊張していたようで、なかなかオシッコをしなかったが、キャットタワーの上でしてくれた。
じゅんたくんはテレビの裏など狭いところに隠れてしまい、安心できる場所を探しているようだった。保護犬猫カフェの人がじゅんたくんのお気に入りの猫じゃらしを持たせてくれたので、田代さんはそれを使って遊んで心を許してくれるのを待った。じゅんたくんはゆっくり、ゆっくり打ち解けていったという。
じゅんたくんを迎えて一番心配なのが眼の病気のことだという。ペット保険も眼の病気は保険適応外だからだ。それ以外は、わんぱくだろうがイタズラされようがオッケーだと思っている。
「じゅんたは大変なことや悩み事があっても、その何倍も、何十倍も幸せを与えてくれます」
じゅんたくんは、ごはんがほしいとか遊んでほしいとか、トイレを掃除してほしいと言って、朝、田代さんを起こしにくる。
「もともと朝が苦手でしたが、じゅんたを迎えて早起きになりました。それまでは家族に起こされるのは嫌だったけど、じゅんただと笑顔で起きられます。誤飲防止や散乱した猫砂を片付けるために1日に何回も掃除するので、じゅんたが来る前の私を知っている人は『信じられない』と言うと思います」
じゅんたくんはビビリのくせに偉そうで、甘えん坊のくせにそっけない、つかみどころのない性格。田代さんは、真っ白な目も太くて短い手足も、ツチノコのようなフォルムも全部大好きなんだという。
「ただ同じ空間を共有できる存在です。心地良い空気のような感じで、自然とそばにいてくれます」
(まいどなニュース特約・渡辺 陽)