庭の捕獲器に入っていた迷い猫 「うちの子になる?」 甘え下手でもじもじしながら膝の上に
■捕獲器に入った子猫
ミモザちゃん(メス・1歳2カ月)は、埼玉県に住む斉藤さんが庭に仕掛けた捕獲器の中に入っていた。
斉藤さんはもともとは犬派だった。いつか犬と暮らしたいと思っていたが、家庭の事情でなかなか飼えずにいた。40代になって暮らしも落ち着き、犬を飼うことが現実味を帯びてきて譲渡サイトで犬を探し始めたという。しかし、一人暮らしだったのでなかなか保護団体の譲渡条件に合わず、断念せざるを得なかった。
「ちょうどその頃、友人や知人が猫を書い始めて、色々話を聞いているうちに『猫なら私も飼えるかも』と思ったんです。散歩もいらないし、私の生活にぴったりフィットしたのが猫でした」
その後、斉藤さんは2匹の猫を迎え、3匹目の猫、オリーブちゃんを2021年5月に迎えた。
オリーブちゃんを迎えた頃、どこからともなく大きな茶トラの猫が斉藤さん宅の庭に現れるようになった。最初は野良猫が通りかかったのだと思ったが、その猫は頻繁にやってきた。首輪をしていたので迷い猫かもしれないと思った斉藤さんは、捕獲器を設置して猫を保護しようとした。
捕獲器の近くにフードを置くと、猫は毎日来るようになった。しかし、6月になると次第に来なくなり、フードを狙ってカラスが来るようになったこともあったので、斉藤さんは一旦保護を見送ることにしたという。ただ、雨が降っていたので、捕獲器を片付けるのは翌日にすることにした。
翌日、6月21日朝、窓の外を見ると捕獲器の扉が下がっているのが見えた。「ネズミでも引っかかったのかと思って恐る恐るのぞいてみたら、茶色くて丸い生き物が見えました。最初は『あの茶とらさんが入った!』と思ったのですが、よくよく見ると小さな子猫だったのです」
思いがけない出来事に斉藤さんは気が動転してしまい、しばらくその場でフリーズしたそうだ。
■4番ちゃん
その日は在宅勤務だったので、斉藤さんは子猫をキャリーケースに移して動物病院に連れて行った。子猫は生後2カ月くらい、体重は930g、ノミダニや回虫はいなかった。ただ、お腹に毛玉があったのでバリカンで毛を剃ってもらうと治りかけの傷があった。
「逃げ隠れしているうちにどこかで切ったのかもしれません。痛くて怖かっただろうなと思うとたまらなくなり、私が看病すると決めていました」
カルテ用の名前を決める必要があったが、名前を付けると譲渡する時に辛くなるので決めかねた。看護師が、「斉藤さんちの4番目の子だから”4番ちゃん”にしましょう」と言ったので、そうすることにした。
■甘えたいのに甘えられない、不器用なところも可愛い
お腹の傷が治って、落ち着いたら譲渡しようと思い、4番ちゃんとの生活が始まった。3番目の猫、オリーブちゃんにコクシジウムという虫がいたので、4番ちゃんは隔離した。4番ちゃんはトイレの隅にうずくまっていた。
「フードも食べず、水も飲まないので心配したのですが、私がお風呂に入っている間に完食し、水も飲んでいました。体と手が汚れていたので拭いてあげたかったのですが、手を伸ばすとトイレの奥に隠れてしまうので、そっとしておきました」
4番ちゃんを保護して3日目、斉藤さんの友人が仕事帰りに様子を見に来た。友人は「可愛い!」と言いながらヒョイっと4番ちゃんを抱き上げた。斉藤さんは「今がチャンス!」と思って体を拭いて、爪を切った。その日以来、抱っこは嫌がったが触らせてくれるようになったという。
だんだん4番ちゃんの表情がやさしくなってきて、周囲から「名前をつけてあげなよ」と言われるようになり、その頃には4番目の子として迎える気になっていたそうだ。斉藤さんは先住猫に英国風パブにちなんだ名前を付けていたので、「ミモザ」というカクテルの名前をつけたという。ミモザちゃんのお腹の傷はあっという間に治り、体重も増え、険しかった表情も柔らかになった。
「試しにオリーブとケージ越しに対面させてみたら、ミモザの表情がパーッと明るくなって、オリーブに近づいてきたんです。ミモザをケージから出すと先住猫とはすぐに仲良くなったのですが、私のことは拒否しました。撫でさせてもくれない。最初はとても寂しく思いましたが、これもミモザの個性、あまり深く考えないようにしました」
ミモザちゃんは相変わらず甘えるのが下手。他の子たちが斉藤さんに甘えているのを遠くからじっと眺めていて、みんなが離れた後にもじもじしながら膝の上に乗ってくる。斉藤さんは、素直に感情表現できない不器用なところも好きだという。
(まいどなニュース特約・渡辺 陽)