自宅の空きスペースを貸し出し収入 + 利用者も格安で予約できる!…広がる駐車場シェア 防犯など予期せぬ効果も

個人宅やマンションで使用されていない駐車場や、月極駐車場でも契約者がおらず空きスペースになっている区画を格安で利用できる「駐車場シェアリングサービス」がある。事前に予約することで必ず駐車できるのが便利と、提携エリアを全国に広げている。駐車場を貸す側には収入のほか「防犯に役立っている」と、当初は想定されていなかった効果も生まれているという。

■行く先に駐車場が有るか無いかは一種の賭け?

公用や私用などで車を利用するとき、多くの場合行く先に車を停められるスペースが有るかどうか分からない、ほとんど賭けに近い状態ではないだろうか。目的地に着いているのに、駐車場を求めてあっちをウロウロこっちをウロウロしながら、約束の時間が迫ってくるという経験をした人は多いだろう。

どこに駐車スペースがあるのか事前に知ることができて、なおかつ予約もできて確実に車を停められるサービスがあったらいいのに……。そんな願いを叶えてくれた駐車場予約システムとアプリがある。

システムを運営するakippa株式会社PRチームの、森村優香さんに聞いた。

始まりは2013年、同社代表取締役社長CEO・金谷元気氏が「“なくてはならぬ”サービス」をつくるため、生活する中での困りごとを全従業員に200個、模造紙に書き出させた。

「その中に、駐車場は現地にいって初めて満車と知るため困るというのがありました」

たしかに、車は便利だが「駐車場があるのか」「空いているのか」は、現地へ着くまで分からない。一方で、駐車できる空きスペースをもっている個人や企業がある。両者をうまくマッチングさせれば、駐車場を確保しやすくなるし、空きスペースを有効利用できそうだ。

そこで開発されたのが「駐車場予約アプリ akippa」だ。利用者はあらかじめスマホやパソコンにダウンロードしたアプリやWEB上で、全国3万件以上の提携駐車場から空いている駐車場を探して予約する。このとき同時に、料金の決済も行われる。これだけの簡単な操作で、駐車場を確保できるという。

「場所にもよりますが、料金は、周辺の駐車場と比べて安めに設定されています」

■個人宅や空き地に車が出入りするようになり「防犯」という予期しなかった効果も

駐車場は広いスペースが必要と思われがちだが、必ずしもそうではないという。

「ロードサイドにある店舗や企業の駐車場を、休日の空いている時間だけ借りることもできます」

また、個人宅にある一般的な駐車場でも、車を所有していない場合は空きスペースになっているから、そこを貸して収入を得ることができる。

「車を停められる空き地でもいいです」

個人宅や小さな空き地まで活用することで、システムを運用し始めた当初に想定していなかった効果が表れているという。

「その地域で路上駐車や迷惑駐車が減ったり、駐車場を探す車が原因で起こっていた交通渋滞が減ったりしました。車が頻繁に出入りするので空き巣の抑制にもなっており、街の防犯にも役立っているようです」

さらに、駐車場を貸す人と利用者との間でコミュニケーションが生まれ、良好な人間関係を生んでいる事例もある。

阪神甲子園球場から歩いて10分ほど離れた住宅街に住む黒岩優さん(86歳)宅には、乗用車2台分の駐車スペースがある。

娘さんが家を出たときに1台分が空いたので、akippaと提携して1台分を貸し出した。その後、黒岩さん自身も免許証を返納したため、今は2台分を貸し出している。

駐車場にはセンサーが設置してあって、車が出入りすると家の中にいても分かるようになっている。センサーが反応すると、利用者に挨拶をするため顔を出すという。通常、貸主と利用者が顔を合わせることはないが、これは黒岩さんの心遣いである。

「ゴミを置いていかれたことは一度もないし、アイドリングも気をつけてご利用いただいております」(黒岩さん)

そんな黒岩さん、ふと気づいたことがあるという。駐車場を利用する人によって、阪神タイガースの勝率が変わるというのだ。個人が特定されてしまうため利用日はあきらかにできないが、たとえばAさんが停めた日はタイガースが勝つ確率が高い、逆にBさんが停めた日は負ける傾向があるそうだ。

高校野球の時季には全国から利用者が訪れ、黒岩さんに手土産を用意してくれる人もいるらしく、黒岩さんもお返しを用意している。

「こうして良好なコミュニケーションが生まれて、今では黒岩さんのファンになった人がリピーターになっているケースもあります」(森村さん)

■車を停める以外にも有効な活用法を探り続ける

コロナ禍で世の中が自粛ムードに包まれて外出が控えられたとき、駐車場の利用者も減った。だが「車を停めるだけが駐車場の利用方法ではない、ほかにも使い方があるはず」と、考え出されたのが駐車場を物販スペースとして使う方法だ。出店場所を求めるキッチンカーをはじめ、地元の農家で収穫された野菜を直売するなどの試みが行われた。

6月26日(日曜日)に大阪府八尾市にある服部農園で行われた農業体験イベントでは、akippaと提携している駐車場で「コケ玉」をつくるワークショップが行われたり、参加者が近隣の提携駐車場を利用する実証実験も行われたりして、サービス開始から8年経った今も、空きスペースを有効に活用する方法を模索し続けている様子がうかがえた。

コロナ禍が一時より落ち着きを見せているとはいえ、公共交通機関を利用することに神経質になって、車を利用する人がいるようだ。

車で出かけて「駐車場、空いているかな?」と賭けに出るより、akippaの存在を知っておくと便利ではないだろうか。

(まいどなニュース特約・平藤 清刀)

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