水瓶で溺れていた子猫は下半身まひ 背骨を削る大手術を乗り越えた 「わがままに好きなように過ごして」

■水瓶に落ちていた下半身麻痺の子猫

六花ちゃん(ろっかちゃん・メス・1歳)は、2020年6月18日、民家の庭に置いてあった水瓶の中に落ちていた。下半身が麻痺していたのでジャンプして出ることもできず、鳴いていたという。その日は午後から大雨。誰も気づかなかったら、水瓶の中で溺死したかもしれない。

鳴き声に気づいた住人が六花ちゃんを助け出した。保護主は、子猫の預かりボランティアをしている娘のAさんに六花ちゃんを託した。Aさんは実家まで六花ちゃんを引き取りに行き動物病院に連れて行ったが、圧迫排尿の仕方が分からなかった。トイレに連れて行ったが自力でする様子もない。そこで、大阪府に住む智さんに相談したそうだ。

智さんは、下半身麻痺の猫を飼っているので手慣れたものだった。「うちで見るから連れておいで」と言って六花ちゃんを預かった。

■夢が現実に

智さんが六花ちゃんを預かったのには理由がある。一つは、Aさんがたくさんの子猫を抱えていることを知っていたからだ。もう一つは、夢を見たからだという。

「実は、前日の夜、夢を見たんです。Aさんから『下半身麻痺の子猫を保護したけど、おしっことかどうしたらいいのか分からへん』と相談され、私は、『今、あなたのところ子猫がいっぱいで大変やし、私が見るからいいよ、連れておいで』と返事をしたのです。目が覚めた時、変な夢を見たなと思っていたのですが、昼前、現実のことになったのです」

■呼吸が苦しくて横になることもできず

六花ちゃんは体重500gくらい。お腹に虫がいたためお腹がパンパンに膨れていて、ひどい下痢をした。自力ではごはんをほとんど食べなかったので、強制給餌したそうだ。

「おとなしくて、夜鳴きもしませんでした。でも、今思えば、おとなしい子猫には何か異常がある。なぜその時そう思わなかったのか悔やまれてなりません」

8月になると六花ちゃんは、苦しそうにハアハアと肩で息をした。血液検査では異常は見当たらなかった。その頃、かかりつけの病院がお盆休みになったので開いている病院で見てもらうと、腰や胸に液体が溜まっていることが分かった。しかし、原因が分からなかった。

「毎日生きた心地がしませんでした。お盆明けに診てもらうと、大量の膿が胸に溜まって肺を圧迫していることが分かりました。保護当時、腰のあたりにプニプニしたものがあると思ったのに、私はなぜかあまり気にせず、スルーしてしまいました。ところが、プルプルしたものは脊椎から出ている膿だと後に分かったのです」

■三度の手術を乗り越えて

六花ちゃんは呼吸が苦しくて横になることもできず、いつも座っていた。酸素室に入ると、少し横になったが、相変わらず肩で息をした。手術ができる獣医師に診てもらうと、腰から胸にかけて溜まっている大量の膿を取り除く必要があると言われた。

「『費用はかかりますが、このままオペしても良ければすぐにでもしたい』と言われ、二つ返事でお願いしました。麻酔から覚めた六花に面会して、『よく頑張った。えらい、えらい』とほめてあげると、六花は『にゃーーーん!』と力強く応えてくれました」

ただ、この手術では根治せず、もう一度膿を洗浄するための手術をすると、どうやら背骨から膿が出ていることが分かった。2021年8月、背骨をごそっと削り取るため、3度目の手術をした。その甲斐があって、六花ちゃんは少しずつ元気を取り戻し、自分でごはんを食べられるようになったという。12月に術後の経過を確認した獣医師は、「この状態なら大丈夫。完治しています」とお墨付きをくれた。

■機嫌よく過ごしてくれたら、それでいい

すっかり元気になった六花ちゃんは、とても気が強いお嬢様猫になった。年上の猫たちに猫パンチを喰らわす。子猫が好きで、子猫が来るとよく面倒を見てくれるが、ある程度成長すると関心を示さなくなる。子猫が好きなだけかもしれない。

ブーブーとよく文句を言う六花ちゃん。智さんは、そんな六花ちゃんを愛おしく思っている。

「我が家で一番の医療費を叩き出した六花ですが、頑張ってくれた六花の強さに救われています。わがままに好きなように過ごしてくれたら、それでいいんです」

(まいどなニュース特約・渡辺 陽)

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