下半身を引きずり前足だけで歩く子猫→診断結果は「完治しない」 猫好き家族といまを生きる
野良猫は、危険と隣り合わせで生きているもの。あゆみささん(@meishii12)の愛猫しめちゃんは子猫の頃、車にひかれてしまい、下半身不随に。けれど、ご飯をモリモリ食べ、リハビリの散歩を頑張りながら「今」を生きています。
■姿を見せなくなった子猫は車にひかれていた
あゆみさんは、とある駐車場で茶トラと白黒の子猫が遊んでいるのを見ていましたが、ある日、白黒の子が忽然と姿を消してしまい、不安に。
あの子は、どうなったのだろう…。そう心配していると、近くにあるカフェの店長から「車にひかれたらしい」との情報が。カフェの隣にある整体の店長からも「足を引きずりながら、移動する子猫を見た」と聞いたため、あゆみさんは子猫の目撃情報があった場所に猫用ご飯を置き、保護を試みることに。
けれど、ご飯は毎日なくなるものの、子猫と遭遇することはできず…。1週間経つ頃には、「死んでしまったのかもしれない」と悲観的な気持ちになっていました。
そんな状況を、カフェの店長さんと話していると、目の前に探していた白黒の子猫が。
「下半身を引きずり、前足だけで歩いていきました。これが、しめちゃんとの最初の出会いです」
あゆみさんは、すぐに家から段ボールと軍手を持ってきて、子猫を捕獲。しめちゃんは小さな体で一生懸命、威嚇しました。
動物病院へ連れていくと、第一腰椎と左足を骨折していることが判明。お腹はパンパンに膨れており、獣医師が圧迫排尿を行うと、想像できないほど大量の尿が。
「先生いわく、『これまでは、垂れ流しだったんだろう』と。この病院で、圧迫排尿の仕方を教えてもらいました」
しめちゃんは、1週間入院することに。あゆみさんは心配から毎日、仕事終わりに病院へ行き、面会。
退院後、しめちゃんには段ボールで囲うように作った簡易的なケージの中で過ごしてもらうことに。しかし、しめちゃんは脱走を試み、あゆみさんが起床すると、同じベッドでスヤスヤと寝ていることが、ほとんどだったそう。
また、保護当初はオムツが必要だったため履いてもらっていたものの、脱げてしまい、仕事後は帰宅してすぐ、部屋に転がっているうんちを拾い集めるのが、あゆみさんの日課になりました。
「今となっては、それも懐かしくて、いい思い出。実は猫アレルギーなのでワンルームで一緒に暮らすのは、なかなか辛かったですが、1週間もすると抗体がついたのか、鼻水も楽になっていましたね。ちなみに、茶トラの兄弟はカフェ店長さんの友人にもらわれていきました」
■「完治しない」を受け止めて共に生きる
保護後、しめちゃんはお外での暮らしを思い出すのか、夜になると玄関に向かって「外に出して」と言っているかのように鳴くように。
そこで、あゆみさんはしめちゃんを抱え、中腰になりながら30分間、外を散歩するようになりました。
「腰は崩壊寸前(笑)。リハビリになるので、今は犬用のハーネスをつけて散歩しています」
散歩中には、しめちゃんのお母さんと再会したことも。互いに鼻を突き合わせて匂いを嗅ぎ合ったものの、お母さんはしめちゃんに猫パンチ。
「お母さんは子猫の顔を忘れてしまったのかなと、複雑かつ切ない気持ちで帰宅しました。しめちゃんのお母さんにはこの後、不妊手術や怪我をしていた尻尾の治療が行われました」
その後、あゆみさんは実家のある神奈川県内へ。電気治療や水中歩行など、様々なリハビリに通い、病院も3院ほど受診しましたが、しめちゃんの病気は完治しませんでした。
「でも、オムツは3~4年履いていません。お尻を擦って歩く分、ばい菌が入って血尿になりやすかったのですが、最近は血尿もなく、元気に過ごせています」
しめちゃんは自力で排尿ができないため、1日8時間おきに圧迫排尿が必要。1日1回の排便時にはおしりを石鹸で洗い、便意を促します。
「モジモジし始めるので、すかさずトイレットペーパーを敷いた小さいバケツをお尻の下に持っていき、うんちをキャッチするんです」
なお、以前、膀胱に結石ができ、手術となってしまったことがあったため、あゆみさんは食事にも配慮。
「ロイヤルカナンのphコントロールというフードをメインにし、朝晩、好きな缶詰をあげています。あと、部屋の床になるべく障害物を置かないように気を付けています」
しめちゃんは人間不信なところがあり、やや勝気な性格。しかし、命を紡いでくれたあゆみさんには心を許しており、一緒に寝る時に撫でるとグルグル言い、お腹をフミフミしてくれるのだとか。
保護当時は社会人2年目で一人暮らしをしていたこともあり、獣医さんから『この子は一生歩けないかもしれない』と言われ、不安で眠れない夜を過ごしたこともあったそう。
「でも一緒に暮らしてみたら、ほぼ普通の猫と同じ。ちょっと手はかかるけれど、その分かわいい。もし話せるなら『人間のせいで車にひかれてしまってごめんね』と伝えたい。話せないからこそ、態度で愛情を伝えられたらと思っています」
■スタートした新婚生活で予期せぬ問題が
そんなあゆみさん、昨年、結婚を機に引っ越し。ペット可の賃貸を選びましたが、予期せぬ問題が。
「実は、しめちゃんが夫を嫌いすぎて…。近くに来られるだけで緊張しすぎて鼻をペロペロしてしまうので、ストレスを減らすために、今は私の実家で過ごしてもらっています」
あゆみさんのお母さんは、市内で野良猫のTNR活動を行っているほどの猫好きさん。現在、しめちゃんはお母さんに圧迫排尿をしてもらい、お父さんと毎晩、お散歩を楽しんでいるのだとか。
「私は週末、夫と共にしめちゃんに会いに電車で20分かけて実家へ帰っています。早く、夫に慣れてくれるといいのですが…」
たとえ、離れていてもあゆみさんにとって、しめちゃんは大切な家族。毎日、力強く生きているしめちゃんから、「生きるヒント」を学ぶことが多いと言います。
そして、しめちゃんはお外という過酷な環境で生きざるを得なかったがゆえに下半身不随となったため、あゆみさんは野良猫の一生について考えたり、保護猫を家族に迎えたりする人が増えてほしいと思っています。
「野良猫たちは夏も冬も過酷な環境で生きていて、事故で亡くなってしまう子も多い。ペットショップで命を買わなくても、お家を探している子はたくさんいます。不幸な猫を減らすためにも、ひとりひとりができることを考えてほしいですし、母のように個人の資金で保護活動をしているボランティアが全国にいることも知ってもらいたいです」
あゆみさんは現在、お母さんのTNR活動を手伝い、小さな命の未来を紡いでいます。
あの時、出会えてよかった--。そう思える保護猫との縁が、この世にはたくさんあるもの。より一層、保護猫の命が救われ、ニャン生が紡がれやすい社会になっていくことを心から願いたいものです。
(愛玩動物飼養管理士・古川 諭香)