通報で駆けつけると→段ボール6箱から猫の声、隙間から子猫が顔を出し…10匹が詰め込まれて遺棄、蓋にはガムテープ
保護猫施設「猫庭」を運営する「てしま旅館」(山口県山口市)の入口付近に、段ボール箱に10匹ほどの猫が詰め込まれ遺棄されていたことが分かりました。段ボール6箱には、子猫7匹と成猫4匹が入っていたとのこと。このうち成猫1匹が逃げてしまったため、探して捕獲を考えているといいます。
■遺棄されたのは旅館の入口付近 昨年は猫19匹が捨てられていた
遺棄されたことが分かったのは、11日早朝。近所の住民から「子猫がいます」と貼り紙をした段ボール箱が置かれていることを、旅館のオーナー手島英樹さんが連絡を受けて現場に急行しました。段ボール箱のふたはガムテープで貼られていて、その隙間から子猫が顔を出して鳴いていたり、また隙間から外に脱出した猫が周囲を歩き回っていたりしていたそうです。
手島さんは「昨年から旅館の敷地内に捨てられる事案が増えております。昨年は計19匹が捨てられ、中には骨折で死にかけていた子もいました。今回、成猫は去勢避妊をしていなかったので、おそらく多頭飼育をして増えてしまい飼えなくなって困って捨てたのだと思います。ただ、幸いにして猫たちはみな元気でしたが…遺棄は犯罪です。ただかわいいだけで動物を飼うのは止めてほしい。覚悟を持って終身家族としておうちに迎えてください」と訴えます。
■遺棄は犯罪行為 オーナー「行政の受け入れ拒否や相談の場がないことが捨て猫につながっている」
手島さんによると、段ボール箱のほかキャットフードも1袋だけ置かれていたとのこと。とはいえ、今回の遺棄について怒りをあらわにしました。
「これまでは猫を飼えなくなったと電話で相談がきたりとか、あるいは遺棄された猫と一緒に手紙が添えてあったりとかいろいろなケースがありましたが…『子猫がいます』と貼り紙をして、無造作に僕らの敷地内に置いてあったのはあまり罪悪感もなく捨てたような印象です。そもそも段ボール箱はガムテープでふたを閉めていたわけですから、中にある命を軽んじています」
さらに、近年猫の遺棄が増えてきたことについてもこう話します。
「捨てた人を問題視するのは当然ですが、東京オリンピックを境に保健所の受け入れスタンスも地域ごとで変わってきており、行政の受け入れ拒否や相談の場がないことが捨て猫につながっていると思っています。猫たちの行き場が僕たちのところに移ってきているだけで、事の本質は解決できません。ですから、動物遺棄が犯罪であることについて気にも止まらないブラインドがかかっている人たちに、命を受け入れる事の重大さを理解してもらうため、世代に合わせた情報更新をきちんと分析し、行政主導で伝えて啓蒙していくことが重要だと思います」
けがもなく元気だったという10匹の猫。子猫たちは生後2カ月から3カ月くらいで、猫エイズ・猫白血病の検査を行ったところ、7匹ともに全て陰性でした。また3匹の成猫たちも去勢避妊手術を終えたといいます。一部の子猫は里親さんが決まったそうですが、里親さんが決まっていない猫たちは毎週開催される日曜日の譲渡会に参加する予定です。
■旅館の中庭に「箱庭」シェルター併設、40匹ほどの保護猫がいる
「てしま旅館」は、昭和40年代に手島さんの祖父母が開業したという旅館。旅館の前の道路で野良猫が車にひかれて亡くなっている様子を見て「何とかできないか」と思い立ち、クラウドファンディングを行って旅館の中庭に「猫庭」シェルターを2016年6月から開設。これまで年間100匹ほどの猫を譲渡してきましたが、新型コロナウイルス感染拡大以降は譲渡会開催の頻度が減ったこともあり、譲渡は年間60匹を超える程度とのこと。猫庭の館長は、手島さんの娘、中学3年生の手島姫萌(ひめも)さんが務めます。現在、猫庭には40匹ほどの猫ちゃんたちがいるとのことです。
飼い猫などの遺棄。2020年6月に施行された改正動物愛護法により、飼い主がペットを捨てた場合、これまで100万円以下の罰金刑だけでしたが、1年以下の懲役刑が加わり、厳罰化されました。犯罪です。小さな命を捨てないでください。
(まいどなニュース特約・渡辺 晴子)