実は…学校の裁量で廃止できる「通知表」 「適切に評価できているの?」保護者や先生の意見は
もうすぐ夏休みですが、気になるのが終業式でもらってくる我が子の「通知表」。記された評価に親も子どもも一喜一憂しがちですが、「得意科目だと思っていたのにこんな低い成績?」と、疑問を持つこともありますよね。評価をする先生の間でも、正しくつけれているのか、そもそも通知表を出すことに意味はあるのかなど、さまざまな思いがあるようです。そんな中、通知表を廃止している小学校も出てきているといいます。通知表をめぐる保護者や先生たちの意見を聞いてみました。
■そもそも「通知表の定義」ってどんなもの?
通知表は「どの学校も必ず出さなければならない子どもの評価票」というイメージがありますが、実際に国ではどのように定められているのでしょうか。
文部科学省によると、通知表に法的根拠はなく、作成の主体は校長先生、様式や内容もすべて校長先生の裁量となっています。そして「保護者に対して子どもの学習指導の状況を連絡し、家庭の理解や協力を求める目的で作成。法的な根拠はなし」とされており、「文部科学省の関与なし」と定められています。
通知表はあって当たり前、日本全国共通で法律的に定められたものと思っていた方も少なくないかもしれませんが、実は完全に学校の裁量…。そうなると学校の独断で廃止しても問題ありませんね。
これまでに通知表を廃止した学校があるか調べてみると、長野県のとある公立小学校では60年前に、東京の私立小学校でも40年前から廃止しているなど、いくつかの事例が見つかります。近年では、神奈川県のある公立小学校で2020年度から通知表を廃止したケースがありました。
■通知表に保護者が思うこと
通知表に対し保護者が抱く率直な意見を聞いてみました。
▽先生が我が子をどう評価しているのか、やはり知りたいし、子どもが何をどう頑張ったのか、褒めたり伸ばしたりする目安になるので、個人的にはあった方がいいと思う。子どももあったほうがモチベーションにつながるのでは。〔Tさん、子ども8歳・4歳〕
▽全くいらないとは思わないけど、小学校低学年~中学年の「できている」「できていない」的な二極の評価は本当に必要なのかな、と思います。伝えるべきことがあれば、個人面談などで具体的に「なにがどうできているか(できていないか)」というふうに教えてほしい。〔Sさん、子ども7歳〕
▽家ではこの子の長所だなと思っていたことを、担任の先生がことごとく低い評価をつけるので、通知表が出るたびに子どもの自己肯定感が下がり、親も悲しい思いをしています。勉強面だけの目に見える数字だけ出せばいいし(ミニテストや理解度などの絶対評価。これも難しいのかもしれませんが)、「性格に関すること」「意欲がある、ない」などの評価をするような通知表はいらないと思います。〔Iさん、子ども9歳・7歳〕
■先生もいろいろ悩みがある…
通知表をつける先生の側にもさまざまな思いがあるようです。
▽「評定(数字)」は必要だけど、その子の生活態度やクラス内でどのような存在か、というような「評価」は不要なのではないか、と正直思う。どうしても先入観や主観が入ってしまうし、それを文字に残すのは正直怖いです。だとしたら、面談など口頭で伝えられる時に詳しく話す方がいい。通知表は評定だけでいいんじゃないか、と思います。(公立小学校教員・Mさん)
▽実は、私の勤める学校(公立)でも通知表をなくしてはどうか、という意見が少数ですが出ています。まだ少数派とはいえ、私としては不安です。今の世の中、競争や順位付け、あるいは「何かに秀でていないと劣等感を持たせることになる」という風潮がありますが、やはり通知表はその学期にどのくらい頑張ったか、ここはもうちょっとなどの先生からのメッセージでもあり、数字や評価はモチベーションにつながることも多いです。もし通知表に不満があったり、「ちょっとここは」と疑問に思った保護者(あるいは子ども本人)が気軽に意見を言える雰囲気になっていけばいいな、と思います。理想論ですが…。(公立小学校教員・Hさん)
◇ ◇
通知表は「あった方がいいか」「ない方がいいか」、これはとても難しい問題で、どちらがいいのかという正解もないし、個人の価値観によって違ってきます。学校内で決めることとなれば、時間をかけた議論や調整、そして通知表をなくしたあとの評価の仕方なども考えなくてはなりません。
また、コロナ禍で学校自体の在り方も大きく変わってきました。オンライン授業になって、これまで不登校だった子が参加しやすくなったというメリットがある反面、オンラインでは生徒の様子がわかりにくく評価しにくいなどのデメリットも出てきています。今後どのように評価していけばいいのか、その際通知表をどういう形にしていくか、悩んでいる学校も多いのではないでしょうか。
(まいどなニュース/BRAVA編集部)