神戸のパンダ、心臓病の治療開始から1年以上 来日した中国の専門家「タンタンの病状は安定、安心した」

体調管理のため3月半ばから観覧休止中の神戸市立王子動物園の人気者、ジャイアントパンダ「タンタン」(26歳メス)。心臓病の治療を始めて1年以上。タンタンのペースで健診時間などを確保するためとは言え、もう4カ月。公式ツイッターでは「#きょうのタンタン」を日に何度も更新。「起きました」「まだ寝てます」から、好物を食べたり、休園日の外散歩でのんびりしたり、毎日の健診を意欲的に受ける姿も伝えられています。そんな中、5月には中国のタンタンの「実家」から専門家2人が来園しました。豊富な経験をもとに治療、体調管理に取り組む専門家と、同園に話を聞きました。

来園したのは「中国ジャイアントパンダ保護研究センター」の獣医師、成彦曦(せい・えんし)さんと、飼育員の王平峰(おう・へいほう)さん。いずれも2004年から同センターに勤務。成さんはジャイアントパンダの臨床での疾病予防と治療、野生個体の保護、飼育個体の野生復帰などを担当。王さんは17年間にわたりジャイアントパンダの飼育・繁殖・人工哺育及び疾病個体の看病をした経験を持ちます。いずれも日本は初めて。タンタンの病状をより詳しく把握し、同園の獣医師、飼育員らと交流を深めながら助言するため来園。新型コロナの影響を受け予定より遅れ、日本の入国制限が緩和されたタイミングでの来園となりました。タンタンは、中国ジャイアントパンダ保護研究センターが持つ4基地の一つである「臥龍繁殖センター」で生まれました。

ーー来園し、タンタンをご覧になって、いかがですか?

「心臓疾患を発症して以降、治療方法等については密に意見交換してきました。その報告で聞いていたよりも、王子動物園の治療により、タンタンの病状は安定していると感じ、安心しました。タンタンの印象ですか? 温和な性格だなと感じました」

ーーパンダ用の粉ミルクを与えるようになったと

「粉ミルクは主に赤ちゃんの人工哺育に用いられるものです。タンパク質や脂質などの栄養補給のために与えています」

ーー今後、新たな治療は?

「発症から1年以上経過していますが、適切な処置により良い状態を維持できており、このまま現在の治療を続けるのが良いでしょう。大阪公立大学の島村准教授とも協議のうえ、病状改善を図るための新たな治療薬を提案しました」

同園の獣医師・菅野さんは、「他の高齢パンダとタンタンの行動を比較することで、現在のタンタンの症状の程度を推測し、また、その程度に応じた一般的なケアについて共有し治療の選択肢を増やしていけるのではないかと期待しています。中国で使用例のあるサプリメントなども追加で給餌することを検討しています」と話します。

同園には通訳が常駐。現場での交流に加え定期的な会議で意見交換をしているほか、お互いの言語でのあいさつを覚えたり、さまざまな話をしながらコミュニケーションを取っているのだそう。

「今まで何十頭とジャイアントパンダを見てこられたお二人なので、その知識や経験を教わり、吸収させてもらって、これからのタンタンの健康管理に生かしたい」と同園飼育員の梅元さん。「タンタンの体調、食欲は安定しています。Twitterでいただく応援コメントを通して、みなさんのタンタンへの思いを受け、ぼくらも元気をいただいています。タンタンもがんばっていますので温かく見守っていただければと思います」

体調管理のため観覧休止が続くタンタン。成さん、王さんは、「タンタンには、できるだけストレスを与えず、好きなことをさせてあげてほしいですね。気候が快適な時期には短時間、屋外で過ごすのは良いと思います。タンタンの体調に合わせたタイミングで健康管理ができるよう、当面は観覧中止を続けるのが望ましいでしょう」と話します。

最後に、タンタンを応援する神戸市民、ファンへメッセージをいただきました。

「長い間、タンタンに関心を持って愛していただき、誠にありがとうございます」(成さん)

「神戸のみなさまのタンタンに対する愛を深く感じ、王子動物園のみなさまからは私たちへの友情を感じ、大変うれしく感謝しております。保護事業にも関心を持っていただきますようお願い申し上げます」(王さん)

同園では7月31日(日)午前、ジャイアントパンダをテーマに講演会を開催予定。成さん、王さんそれぞれが専門的立場からジャイアントパンダをテーマに話します。小学生以上200名。詳細・申込方法は動物園公式サイトで。

(まいどなニュース特約・茶良野 くま子)

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