バイク好きならピン!とくる 500ccエンジン搭載…注目の純国産・大型ドローンに、「ヨシムラ」のマフラーが付く理由

ドローンとは無人航空機のことで、プロペラが4~8個ついたマルチコプターの産業用ドローンや、家電量販店で手軽に購入できるバッテリーモーターを動力とするトイドローンなどさまざまなタイプがあります。またロシア軍の戦車を次々に破壊したことでも一躍注目された無人戦闘航空機「バイラクタルTB2」は、大型で長い翼がある飛行機型のドローン。先日、日本メーカーの斎藤製作所の模型飛行機用エンジンをロシア軍に無断で軍事転用されていたという報道もありました。

ドローンが話題になっているなか、2022年6月29日から7月1日まで東京ビッグサイトで開催された「第1回地域防災EXPO」において、産業用ドローン「AZ-500」が展示され人だかりができていました。それは「AZ-500」は純国産のドローンであり、しかも搭載されているエンジンはこのドローン専用に開発したからです。見た目もカーボンパーツを多用したレーシーでかっこよくて、エンジンのマフラーにはバイク好きには馴染みのあるヨシムラのプレートが貼ってありました。

■Hayabusaのエンジン開発をした荒瀬国男さんが製作

このドローンのエンジンは、1999年当時において最高速度300km/hを達成したスズキのバイク・Hayabusa(隼)のエンジンを開発した荒瀬国男さんが製作したもの。荒瀬さんはその後スズキを退社し、會澤高圧コンクリート株式会社の代表取締役社長である會澤祥弘さんと共に、アラセ・アイザワ・アエロスパシアル合同会社の共同代表に就任してドローン用の純国産エンジンの開発に着手しました。

2020年には特許出願中である振動を完全に打ち消す無振動ドローン用エンジンの試作に成功。このドローンに搭載されるエンジンは499cc油冷4サイクル・水平対向2気筒SOHCで、最高出力40Kw(54PS)以上を発揮し、世界一を目指す日本男児の気概を示すために『國男』と命名されました。スズキは二輪レースにおいてヨシムラとは深い関係があることから、エンジンにはヨシムラ製マフラーが装着されていました。

   ◇   ◇

▽エンジンドローン『AZ-500(國男)』

サイズ:H1052/L2677/W2677mm

空虚重量(最大離陸重量):100kg(150kg以下)

ペイロード+燃料重量:50kg以下

航続時間:5時間以上(ペイロード5kg時)

燃料タンク容量:50L

■災害時には全自動制御で被災地の情報を送信するドローンシステム

実はこの純国産エンジンドローンは、會澤高圧コンクリート株式会社が自治体向けの「The Guardian(精密避難支援システム)」用に開発したもので、全自動制御のドローンと観測衛星が連携して津波や河川の氾濫から住民の命を守る目的があります。

仕組みは、地震を検知すると耐震設計の自律制御型格納庫(ドローンシェルター)からドローンのエンジンが自動始動して上空に飛び立ち、住民が避難するための情報をライブ映像としてスマホに届けます。さらに地球観測衛星と気象観測衛星のデータを元に、河川の氾濫発生時刻や浸水被害をピンポイントで推定し、住民に知らせる世界初の「水害未来予測」アプリとも連動しています。

エンジンのドローンを採用しているのは、モーターのドローンと違って電力を失った災害時でも飛び立つことができ、時間降雨300mm、風速20mの状態でも無給油で5時間の飛行が可能だからだそうです。

いまのところドローン単体での販売や一般向けの販売はしていませんが、すでに初号機は福島県浪江町に2024年春に実装が決定しています。担当者によると会場でエンジンドローンを見た来場者から「軍事転用できるのならウクライナに送ればいい」という意見も聞いたそうですが、今のところ軍事利用の予定はないとのことです。

(まいどなニュース特約・鈴木 博之)

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