安倍元首相は今秋「国葬」に…そもそも「国葬」って何ですか? 戦後では吉田茂元首相以来2例目に

演説中に銃で撃たれて亡くなった安倍晋三元首相について、今年の秋に国葬を行う方針であることが、岸田文雄首相から発表された。「国葬」とはどのような葬儀なのだろうか。また、これまでにどのような人が対象になってきたのだろうか。

■戦後に行われた国葬は吉田茂元首相だけ

国葬とは、一言でいうなら「国家が喪主となって執り行う葬儀」のこと。国葬の対象になるのは「国家に貢献した人」「国家に対して功績を残した人」とされるが、何をもって国家に貢献したり功績を残したりしたといえるかは別の議論になるから、ここでは触れない。

参考までに戦前の例を挙げると、侯爵クラスの爵位を有する人、総理大臣経験者、軍隊における最上位の称号である「元帥」の経験者、明治維新の功労者であることなどが条件となっていたようだ。だが、条件を満たしたからといって、必ず国葬が行われたわけではなかった。国葬はあくまで特別な儀式であり、対象になるか否かは慎重に検討されたという。

国葬は国家が行う儀式だから、法的根拠が必要だ。1926年(大正15)以降は「国葬法」という法律があり、それ以前は個別に勅令(天皇が発する命令)が出されていた。

戦後の日本国憲法では、第20条で国の宗教活動を禁止したため、国葬法も廃止された。だが、国葬が行われた人物が1人だけいる。第45代と第48~51代内閣総理大臣のほか外務大臣や農林大臣を務めた吉田茂は、1967年(昭和42)10月31日に国葬が行われた。

■あのマッカーサーも国葬だった

海外ではどうなっているだろうか。国葬の対象になる条件や基準は、もちろん国ごとに異なる。いくつか事例を拾ってみよう。

アメリカにおける国葬は、直近では第40代大統領のロナルド・ウィルソン・レーガン、第41代大統領のジョージ・ハーバート・ウォーカー・ブッシュ(第43代大統領ジョージ・ウォーカー・ブッシュの父)がいる。また、戦後日本を統治した連合国軍総司令部(GHQ)の最高司令官を務めたダグラス・マッカーサーも国葬が行われた。

イギリスでは王室関係者が対象となるようだが、元首相のウィンストン・チャーチルは「特段の功労」があったとされ、例外的に国葬が行われた。また、2013年に死去した元首相マーガレット・サッチャーは「国葬並み」の葬儀が行われている。

一方、戦前の日本での国葬は、1878年の大久保利通(内務卿)から1945年の閑院宮載仁親王(かんいんのみやことひとしんのう/元帥・陸軍参謀総長)まで25人いる。大将以上の階級で陸海軍の要職にあった皇族や政治家、そして軍人が多い印象だ。日本海海戦で連合艦隊を指揮してロシアのバルチック艦隊を破った東郷平八郎、太平洋戦争のさなかブーゲンビル島上空で戦死した連合艦隊司令長官・山本五十六も国葬だった。

   ◇   ◇

報道によると、安倍元首相の「国葬」について、首相官邸は内閣法制局と法的根拠について協議。内閣府設置法を根拠に、内閣府の所掌事務として定められている「国の儀式」として、閣議決定で実施するのは問題ないと判断したという。会場については、吉田茂の国葬と同じ日本武道館で行うことを調整しているという。費用は全額国費を想定しているそうだ。また、海外から訪れる要人が多数見込まれているため、収容人数やセキュリティの観点から一般人は参列できないと思われる。安倍元首相の御冥福を、静かに祈りたい。

(まいどなニュース特約・平藤 清刀)

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