気分次第で添い寝サービスも? ビルの隙間から救出された子猫、美猫に成長してタイ古式マッサージ店の看板猫に
大阪メトロ・千日前線の阿波座駅下車すぐのビルにあるタイ古式マッサージサロン「にゃんぐりら」。オーナーの是永尚美さん(47)は本場タイで資格を取得した、キャリア15年以上のベテランセラピストだ。指圧とストレッチを組み合わせ、是永さんがその“ゴッドハンド”でお客さんの疲れた身体をほぐす担当なら、飼い猫でサロンの看板猫を務めている「小梅」(メス、6歳)は“モフモフ”で心をほぐす担当。是永さん&小梅コンビで「心身ともに癒された」と評判だ。小梅はビルの隙間から救出、保護されて同店へとやってきた。どんな経緯で看板猫になったのか。是永さんに話を聞いた。
高校生のとき、交換留学生として1年間タイに滞在したのがきっかけでタイの魅力にはまり、社会人になって動物関連の仕事などを経た後、再びタイを訪れてタイ古式マッサージの資格を取得しました。元々、猫が大好きなので、独立したら看板猫がいるお店にしたいなあと思っていたところ、友人が「とあるビルの隙間に母猫と子猫1匹がいて、これから保護するので、子猫をお店の看板猫に迎えてはどう?」って言われたんです。
どんな子なのか、現場へ見に行くと、猫たちがいるビルはすぐ近くを車がビュンビュン走る危険な場所にありました。母猫は警戒心が強く、そばにいた子猫はあどけない顔で私を見つめていました。それが小梅です。
それまでの私は、自分の店を出したとき、猫と一緒に仕事ができたらいいなあと漠然と思っていただけでした。だけど、そのときの小梅の姿を見たときから、猫飼育可の物件探しや動物取扱責任者の資格取得など、店の準備を本気でやるようになりました。というのも、早くこの子を安心安全な環境で幸せに過ごさせてあげたいと思ったからです。
母猫は「シャー」といって人を寄せ付けなかったため、その友人は母猫をTNR(捕獲、不妊手術をして元の場所へ戻すこと)しました。一方、小梅は友人宅で保護し、私の店の準備が整うまで預かってもらうことになりました。
小梅が私のもとへやってきたのは2016年12月。店を開業する2ヶ月半前でした。はじめは緊張して、ケージからなかなか出てきませんでしたが、そのうち店の中を探検するようになり、少しずつ慣れました。お客さんが来ても逃げず、知らない人との触れ合いも大丈夫だったので、これなら看板猫が務まるなと安心しました。
■「私のうちへようこそ」とお出迎え
今ではお客さんがやってくると「私のうちへようこそ」といった感じでお出迎えします。施術中はお客さんのすぐ横で寝ていたり、両足の間に入ってきたり。そのときの気分次第ですけど、最後に肩揉みをしてお茶を飲んでいると、自分の役目がわかっているのか、近づいてきて挨拶することもあります。
開店から約半年後、個人的に子猫のミルクボランティアと預かりボランティアをやるようになり、これまでに15匹ほど預かりました。小梅はけっこう面倒見がいいんですよ。子猫が「あそぼ」とやってきて、強く噛んできたらパシっとはたいたり、足でクリクリ蹴ったりして、猫同士がじゃれあうときの手加減を教育してくれるので助かっています。
タイでは、猫はお坊さんの生まれ変わりとも言われ、幸運のシンボルとして大事にされているんですよ。うちも「ねこファースト」です。アロマは人には効果がありますが、猫には危険と言われているので使っていません。また、オイルマッサージのときに用いるオイルは、万が一、猫がなめてしまったとしても安心な、低酸度のオイルを使っています。基本は私がお客さんの体を癒し、小梅は心を癒す担当です(笑)。
開店当初はお客さんが全く来ず、小梅とひたすら遊んでいて、気づいたらもう夕方だったという日もよくありました。コロナ禍では、店を閉めないといけない時期があり、このまま経営を続けていけるか不安になったこともあります。だけど、気弱になったときも小梅はいつも私のそばで励ましてくれます。小梅がいるから私もこれまで頑張ることができています。実は一番元気づけられているのは私かもしれません。
店は小梅が快適にのびのびと自由に過ごせるおうちでもあるので、しっかりと経営して守っていかないと。ビルの隙間で初めて目があった瞬間から、この子を絶対幸せにするんだって心に決めてるんですよ。
「シャングリラ」(理想郷の意味)にちなんで店名を「にゃんぐりら」にしたのは、人と猫、双方にとって居心地のいい空間にできたらいいなとの思いから。これからもお客さんに極上の癒しを提供できるよう、小梅とともに努めていきたいです。
【店名】タイ古式マッサージサロン「にゃんぐりら」
【住所】大阪府大阪市西区靱本町3-8-14 阿波座フジビル6F(千日前線・阿波座駅9番出口すぐ)
【インスタグラム】@nyangrila
(まいどなニュース特約・西松 宏)