誤送金の田口被告に「自分の心の闇と向き合って」ギャンブル依存症支援団体が呼びかけ ヒカルさん支援に「本当の人生は騒ぎが収まった後」

山口県阿武町の誤給付金問題で、8月1日に保釈された田口翔被告(電子計算機使用詐欺罪で起訴)が、ユーチューバーのヒカルさんから現金約340万円を借り受け、ヒカルさんが紹介した会社で働き始めました。ヒカルさんのYouTubeチャンネルで公開された田口被告の独占インタビューは約400万回再生され、田口被告のTwitterは9万人にフォローされました。人気ユーチューバー・ヒカルさんに引き上げられ、脚光を浴びる田中被告に対し、ギャンブル依存症問題を考える会代表の田中紀子さんは「更生につながる可能性がある」と期待する一方、「自分の心の闇と向き合う機会を失ったのではないか」と心配しています。田中さんに聞きました。

■注目が離れてもコツコツやっていけるか

ギャンブル依存症問題を考える会代表の田中さんは、ギャンブル依存症患者、家族の支援に取り組むほか、覚醒剤所持で有罪判決を受けた俳優の高知東生さんらの回復を支えてきました。

一方、ヒカルさんは田口被告への貸し付けや仕事を紹介したことについて、「なんか力になりたいなっていうプラス、田口君、広告塔になるんじゃないかな、ビジネスにつなげられるんじゃないかな、という僕独自の発想ですね」と支援の理由を語っています。

ーー誤給付された4630万円をオンラインカジノで使ったという田口被告は、ギャンブル依存症でしょうか。

「ギャンブル依存症かどうかは分かりませんが、彼の心や生き方に問題があったと思います。彼の元に大金が振り込まれたことは役所のミスだし、逮捕の妥当性についても疑問に思うところはありますが、そのお金をギャンブルにつぎ込んでしまった、というのは彼の心の問題です」

ーーヒカルさんが田口被告を支援して、さらに注目度が高まっています。

「ヒカルさんにとっては話題になるし、人助けにもなると感じたんだと思います。でも、本当の意味で更生につながるかは分かりません。田口被告はヒカルさんに紹介された仕事に就き、今は話題性もあります。でも、話題性がなくなり、人々の注目が離れても、コツコツやっていけるかどうか。自分の実力に見合った仕事をコツコツやって、少しずつ信用を積み上げてこそ、『この信頼を失いたくない』と思うものです。芸能人の高知東生さんも、定期的な自助グループ参加や、回復プログラムへの取り組みは勿論のこと、保護観察所での家族相談や、回復施設で自らの体験を語る活動など、地道な取り組みを続けています。有名人であろうがなかろうが回復プロセスは一緒です」

「依存症への理解がない支援者は、仕事を与えて『これからはちゃんとやれよ』と言えばいいと思っている場合があります。でも、本人がギャンブルに依存してしまう自身の心の闇に向き合わないと、回復に向かうことはできません。ヒカルさんの手助けで一時的に脚光を浴びて、承認欲求が満たされてしまったことで、自分の心の闇と向き合う機会を失ったのではないかと懸念しています。人生には理不尽なこと、面倒なことがたくさんあります。つらい出来事に直面した時、どう乗り越えていくかが大事なんです。彼の本当の人生は、騒ぎが収まった後に始まるんじゃないかなと思っています」

ーー田口被告にまつわる報道では、遊んでいる時の写真や卒業アルバムのメッセージなど、ゴシップ要素を含んだものも多かったです。

「誰でも探せば、ゴシップ的に取り上げられるような要素はあるものです。でも、オンラインカジノが簡単にできてしまう日本ってどうなの?役所や銀行のチェック体制はどうだった?といった社会背景や、依存症治療に向けたカウンセリングなど、問題の解決策についてもっと報じてほしい。起きた事件の原因や結果を個人の資質に求めても、社会問題は解決しません」

◇  ◇

依存症は再発を繰り返すこともある病です。田中さんは「田口さんがもしギャンブル依存症だった場合には、まず自分の心の問題に正面から向き合う勇気を持ってほしいですね。専門医や自助団体とつながり、自分の弱音を語れる正直さを身につけ、同じ問題に苦しむ人を手助けしてくれる仲間をつくり、長い目で回復に向けた取り組みを始めてほしいです」と話しています。

(まいどなニュース・伊藤 大介)

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