抱っこが大好きだった元野良猫、おうちに迎えて15年間…突如いなくなり最期は別の場所で 飼い主「抱きしめてあげたかった」
今年7月12日に、虹の橋を渡ったキジトラ猫のひでちゃん(享年16歳・雄)。関東在住のAさんの実家で飼われていました。最期は、実家に隣接する親戚の庭で横たわっているところを発見されたといいます。
前日の11日は雨が降りしきる嵐の夜でした。「ご飯の時間になっても帰ってこない」と、実家の家族から連絡を受けたAさん。翌日仕事が休みだったこともあり、急いで実家に戻りました。実家に迎えてから15年間一度もいなくなったことはなかったというひでちゃん。家族も必死に探しましたが見つからず…そして翌朝、実家に親戚から「ひでちゃんが庭で亡くなっている」と連絡が…。
「早朝親戚からひでちゃんが庭で見つかったことを家族から連絡を受けました。庭に駆け付けると、ひでちゃんが横たわっていて。すぐに動物専門の火葬業者に連絡。火葬してもらいました。ひでちゃんは私たちに見られたくなくて外に出てしまったのでしょうか。親戚の家の庭だったから、すぐ見つけられましたが…本当は最期、ひでちゃんを抱き締めてあげたかったです」
言葉を詰まらせるAさん。ひでちゃんは実家に戻り、今は骨壺の中で静かに眠っています。
■7月に虹の橋を渡った元野良猫 数カ月前に下半身が動かなくなった
ひでちゃんの体に異変が起きたのは、さかのぼること3月のこと。突然、腰から下の下半身が動かなくなったのです。ひでちゃんの異変について、一人暮らしをしていたAさんのところに実家の家族から連絡がきました。
「5年ほど前から実家を離れ、一人暮らしをしていたのですが。下半身が動かなくなったひでちゃんのことを聞いて驚きました。病院の先生から『(下半身の)足が動くことはないだろう』と言われたらしく。治療は点滴を打つだけ。食欲もなくやせ細ってしまって、本当に心配しました。なるべく面倒を見てあげたかったので、仕事が休みのたびに実家に帰って看病しました。おむつを替えてあげたり、ご飯を食べさせたり…」
■動かなかった下半身に奇跡が起きた…数週間後に歩けるように
そんなAさんが看病を始めてから3週間ほど経った4月。ひでちゃんに奇跡が起きました。それは、「二度と動くことはないだろう」と宣告されたひでちゃんの両足が動くようになり、歩けるようになったのです。そして、ご飯も食べられるようになり、いつもの元気なひでちゃんに戻ったといいます。
このとき、少し安心したというAさん。5月は仕事が忙しく、実家に一度も帰れませんでした。ようやく6月の終わりくらいに、帰ることができました。ひでちゃんと久しぶりの再会。Aさんが「ひで、ひで」と呼び掛けながら近付くと、ひでちゃんの目から涙がこぼれたといいます。
「ひでちゃんが泣いていました。初めて涙を見て、最初は目やにが出ているのかなと思ったのですが…涙のようなものがぽろぽろと目から流れていました。さみしかったんだなと思って、そのときぎゅっと抱き締めたんです。その抱き締めた体がとても細くて。食欲や元気があっても、やせ細っていました」
そして、ひでちゃんが涙を流して約2週間後の7月12日。息を引き取った姿で発見されました。
■車庫に迷い込んできた元野良猫 当時はガリガリにやせていた
ひでちゃんは15年ほど前、Aさんの実家の車庫に迷い込んできた野良猫。実家で飼っていたシーズー犬(当時4歳)が死んで、2週間ほど経ったときのことでした。
「実家ではシーズー犬の親子と2匹の猫を飼っていたのですが、ひでちゃんと出会う2週間ほど前にシーズー犬の子どもが先天性の難病で亡くなって。その子も男の子で、とてもかわいがっていたので家族全員が悲しみに暮れていたところでした。そんなときに、ひょっこり現れたのがひでちゃん。車庫の物置にあったドラム缶の上に乗っかっていたのです。私が近付くとひでちゃんから近寄ってきて、とても人懐っこい子でした。見掛けない猫だったので、どこから来たのか家族も驚いていました。ガリガリで毛並みも悪く、お腹の辺りを引っ掛かれたようなけがをしていたので、すぐに動物病院へ。当時、先生からは年は1歳くらいだろうと言われました」
治療後、先住猫がひでちゃんを警戒していたこともあり、しばらくひでちゃんは物置で過ごすことに。毛布を掛けてあげたり餌を食べさせたりしていたといいます。ただ、2月でとても寒い時期だったこともあり保護されて1カ月も経たず、ひでちゃんはAさんの実家にお迎えすることになりました。
「ひでちゃんは保護時、やせていて栄養失調のような状態で体も小さかったです。歯があまりなく、鳴き声もかすれてしました。ただ、実家に来てから自分をかわいがってくれる人以外には興味がない子で、知らない人には全く興味がなかったという…マイペースな性格。ものすごく甘え上手で、抱っこが大好き。また抱っこをしていると顔を見上げてきて、目で好きだよと訴えてくるようなかわいい子でした。
私が特にかわいがっていたので、リビングにいるとずっと抱っこ。寝室に向かおうとすると、まだ抱っこされたくてよじ登ってきたり。こんなふうに飼い主の私にすごい甘えていたので、先住猫たちがとてもやきもちをやいていたようです。でも、ひでちゃんは私たちにも先住の犬や猫たちに引っかいたり、シャーと威嚇したりすることは一切ない穏やかな子でした」
■抱っこをしていると飼い主の顔を見上げた元野良猫 「唯一無二の存在」だった
そんないとおしかったひでちゃんがいなくなり、今も思い出すと涙ぐんでしまうというAさん。ひでちゃんへの思いをこう語ります。
「かわいがっていた犬が死んで2週間後にひでちゃんと出会って、生まれ変わりなのかなと思ったり。ひでちゃんは鳴き声も変だし、歯もないし、性格も含め猫らしくない猫。でも、いつもそばにいてくれた存在でした。抱っこしていて、ひでちゃんがどこかに行こうとしたとき、『ひでちゃん行かないで』というと戻ってきてくれたり。気持ちが通じていました。
亡骸を見たとき、まさかそんなに早く会えなくなるとは思いませんでした。今振り返ると…ひでちゃんが歩けるようになったのは、私が毎週帰ってきてお世話をしたからか、ひでちゃんも頑張ってくれたのだと思います。歩けるようになったときは本当にうれしかったです。私にとって唯一無二の存在。ひでちゃんにはたくさんの癒やしをありがとうと伝えたいです。ひでちゃんを思い出すたびに、いつかまたどこかで会おうねと心の中でつぶやいています」
(まいどなニュース特約・渡辺 晴子)