空から見ると…住宅地の真ん中に、巨大なミステリーサークル? 直径1キロの広大な緑地
横浜市泉区の南部、戸塚区と接するエリアに広大な緑地がある。空から見ると直径約1kmの見事な円形で、14面の野球場や広場があるかと思えば、立ち入りを制限されているエリアも少なくない。なぜこのような円形になっているのだろうか。
■戦時中は海軍の通信隊がおかれていた
円形のエリアは「旧深谷通信所跡」と呼ばれていて、もともとは海軍の通信所だった。
2018年(平成30)2月に横浜市が公開した「深谷通信所跡地利用基本計画」によると、ここには戦時中、旧日本海軍の通信施設があって「東京海軍通信隊戸塚分遣隊」という通信部隊がおかれ、地元の人たちは「深谷通信隊」と呼んでいたようだ。
対米戦争を睨んで西太平洋地域における送信力を強化するため、1941年(昭和16)に用地が買収されると工事が開始され、1944年(昭和19)3月に開隊した。敷地は直径約1kmの円形、面積は約77haと記されている。
戦後は通信施設用地として米軍に接収されていたが、2004年(平成16)の「日米政府間における返還方針合意」を経て、2014年(平成26)6月に日本へ返還された。現在は一部を横浜市が国から委託を受けて管理し、多目的広場や野球場などとして使われている。一方で、外周に接するほとんどの部分と中央部は、財務省関東財務局横浜財務事務所が管理しており、今後どのように活用するかについては横浜市で利用計画を策定中とのこと。
■今後の利用は主に防災機能を重視した施設に
これだけ広大な土地を遊ばせておくわけがなく、返還方針が合意された2004年から「跡地利用指針」や「行動計画」が策定されて、今後の利用法が検討されている。
「旧深谷通信所跡地利用基本計画の考え方」によると、広大な敷地を活用して防災性を向上させ、広域避難場所に指定したりヘリポートを設置したりするほか、貯水槽や備蓄倉庫などの設置も検討されているという。
また、もともとは海軍部隊が常駐していたため、排水施設が整備されている。これを活用して雨水の流出を抑制する施設を整備するほか、水や緑あるいは花などがもつ潤いや安らぎを活かした「グリーンインフラ」の考え方を取り入れた都市基盤の整備も検討されているようだ。
敷地の中には車が通行できる通路が縦横に整備されていて、周辺地域に住む人たちに不便がないような配慮がなされている。グーグルマップで「かまくらみち」と表示されている県道には、「通信隊前」というバス停まである。人家がないので、野球場や広場へ遊びに来る人が利用するのだと思われる。
将来は一部でも、民間に払い下げる計画はないのだろうか。財務省関東財務局横浜財務事務所に尋ねてみたところ、「横浜市で策定中の計画が具体的に決まり次第、処分方針の策定にかかる協議を進めていく」とのことだった。
横浜市政策局が出している「深谷通信所跡だより」第2号によれば「本格的な整備までの間に、地域の皆様が返還を実感できるよう暫定利用をしています」とあって、ごみを投棄しないことや国の管理地へ立入らないことなど利用のルールを定めている。広場では、防災や環境をテーマにしたイベントがたびたび行なわれ、多くの人が訪れて賑わうそうだ。
余談ながら、千葉県船橋市行田2丁目の行田公園を含むエリアにも、円形になった地形がある。こちらもやはり旧海軍の通信施設跡で、「海軍無線電信所船橋送信所」があったそうだ。
(まいどなニュース特約・平藤 清刀)