ケガをして瀕死だった子猫…保護されて今では「副社長」に 12匹のネコ役員・社員が“活躍”、仕事中の「癒しに貢献」
大阪市東淀川区にある三協精器工業株式会社のオフィスは、ネコが自由に歩き回っている。会社に迷い込んできたネコを保護したり譲り受けたりしているうちに、大人のネコ9匹と子ネコが3匹になった。そのうち古株のネコには、社長の遊び心で副社長、専務、常務、常務秘書の役職がついている。
「私が入社した12年前は、駐車場に大きなトレイでゴハンを置いて、ネコが自由に来て食べられるようになっていました」
こう話すのは三協精器工業の「猫乳母」こと業務改善チームリーダーの大西久代さん。ネコの世話を任されているが、社員の人たちも当番制で面倒を見ているという。
当時はまだ飼育はしておらず、会社の近所にいる野良ネコが勝手にゴハンを食べにくるだけだった。
「最初に保護したのは6~7年前、肋骨が折れて大けがをした瀕死の子ネコがいて、2週間入院させた後に飼い始めました」
瀕死の状態で最初に保護された子は「チャトラン」と名づけられて、副社長に就任した。
それから2年後、駐車場で社長の車の近辺に現れるようになった子ネコを保護。2番目に保護された子は「こんぶ」と名づけられて、専務に就任している。その後に保護された2匹の兄弟ネコが、常務の「ロイ」と常務付秘書の「ネリ」だ。
それからも出荷場に迷い込んできたり、ふらりと現れたりしたネコを保護しているうちに、いまでは10匹を超える大所帯になった。すべての猫に役職があるわけではなく、一般社員のネコもいる。
「なぜか、ここに来るんですよね。ネコどうしで情報ネットワークみたいなのがあるのかも。あの会社にはゴハンがあるよ、みたいな(笑)」
子ネコのときに保護されるとわりあい早く人に慣れるが、大人のネコは警戒心が強く2~3カ月はケージから出てこないという。
「警戒心が解けるまで無理に触らないで、ずっと声掛けします。チュールも効果ありますね」
ネコ社員たちは午後5時に定時退社
三協精器工業は主にスプリングを製造しており、建屋は事務所と工場に分かれている。ふだんネコが生活しているのは、事務所スペースの2階と3階だ。事務所内は自由に行動できるが、工場は危険なので事務所から出ないように気を配っている。
ネコ役員やネコ社員たちが、人間の仕事を邪魔することはないのだろうか。
「正直、それはあります」というのは、広報担当の三枝さあやさん。
「パソコンのモニターの前に、こっちを向いてちょこんと座っていることがあります」
ネコたちには個室(ケージ)が与えられていて、午後5時になるとネコ全員が定時退社するそうだ。夜間は警備会社の監視システムが入る。ネコが動いているとセンサーが感知して発報してしまうから、ケージの扉は閉められる。そして翌朝に開けられて、ご出勤という日々を過ごしている。
ネコを飼うようになってから、社内の雰囲気が和やかになったとか。
「仕事に追われていても、そこにふっとネコが通ると、ちょっと手止めてモフモフしているうちに癒されます」
チャトラン副社長以下ネコ社員たちは、人間社員たちの癒しに貢献するという重要なミッションをこなしているのだ。
(まいどなニュース特約・平藤 清刀)