「一日売上3000円の日も。でも…」 オープン直後に“第7波”直撃のスポーツバーが、店を開け続ける理由
コロナ「第7波」の到来から約1カ月がたった。WHOの発表では、7月最終週の時点での世界での新型コロナウイルスの感染者の21%を、日本が占めるそうだ。感染拡大の影響で、飲食店の客足は遠のいているというが、政府からは行動制限などの要請は出ていないため、営業時間を短縮しても協力金を受け取ることなどはできない。厳しい営業を強いられる飲食店に取材した。
東京・立川駅近くのスポーツバー「チアーズ」は7月1日にオープンしたばかりだ。まさに開店直後に「第7波」に襲われた。店主の関根剛さん(46歳)はこう語る。
「開業準備に入ったのは、コロナが落ち着きを見せていた4月。居抜きで入れる物件が見つかり、すぐに動きました。はじめての自分の店です」
本来であれば5月中にも開店したかったが、GWにくわえ、ロシア・ウクライナ戦争の影響で物流が混乱し、什器等の手配が1カ月以上も遅れてしまったという。
「逆に、ゆっくり準備できたのは良かったと思います。けれどその間に第7波が来てしまった。一日3000円の売上の日もあります」
関根さんは22歳から立川の飲食店で働いてきた。街に集まる客層や競合店は熟知している。そこで構想したのが、近隣に競合がいないスポーツバー。自身の長年の趣味でもあるスポーツ観戦の知識を存分に活かせる業態だ。
「スポーツバーは現地に観戦に行けなくても、お店で勝利を分かち合えます。知らないお客様同士が、その場で繋がれる。年代も性別も関係ないんですよ」
と、人が集う場の魅力と醍醐味を語る。
人影のない店内の大きなモニターには、海外のスポーツ中継が流れている。画面の中に時折り映し出される観客席には、マスクをしている人の方が少ない。日本から見ると、不思議な光景だ。
「日本ではどこに行ってもみんなマスクをしている。こんなに対策しても感染者が増えているのはどういうことなんでしょうね?」
協力金をもらっても家賃の足しくらいにしかならないが、その協力金すら今回は給付されない。それでも関根さんは休業せず店を開けている。
「苦しいですが、閉めようとは思いません。この時期だから立川にない店をつくることができましたから。いままで20年以上、この街で働いてきたので、いろいろな逆境を見ています。3.11の震災の時も人がいなくなりました。この先もコロナのような壁はたくさんあります。でも店を開けてさえいれば、人は戻ってくると信じるしかないじゃないですか」
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「年末にはワールドカップがある!」…最後、関根さんは明るく言う。空元気なのか、自分自身を奮い立たせているのかはわからない。いま踏ん張っている多くの飲食店の経営者が、複雑な心境ではあるだろうが、同じ覚悟でいるのではないだろうか。
「運が悪い、時代が悪い、と言われます。もちろん連戦連勝がいいですが、スポーツの世界では勝ちも負けも大事ですよ」
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【取材協力】
「チアーズ」
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042-512-9801
(まいどなニュース/BROCKメディア)