郷愁を誘う路面電車の今昔物語…40年以上にわたって「阪堺電車」を撮り続ける、鉄道カメラマンに聞く

Facebookに投稿されている写真は、大阪市内を走る路面電車。製造後80年以上でも現役で走っている車輌、役目を終えて退役した車輌、そして2013年に導入された新型車輌(堺トラム)もある。路面電車を撮り続けて40数年という、アマチュア鉄道カメラマンで写真整理アドバイザーの田中強一さんに話を聞いた。

きっかけは学生時代に通学で乗っていた路面電車

かつて大阪市内を縦横に走っていた路面電車は、今では阪堺電気軌道・通称「阪堺電車」だけとなっている。阪堺電車は南海電気鉄道の子会社で、天王寺駅前から住吉を結ぶ「上町線」と、恵美須町から浜寺駅前を結ぶ「阪堺線」の2路線を運行している。2021年12月現在、7形式の車輌で35輌(または編成)が運行されており、郷愁を誘う外観の比較的古い車輌が多い。一方で、そこに魅了された根強いファンがいる。

田中さんはFacebookのグループページ「阿倍野の秘密教えてちょ!誰も知らない阿倍野の秘密をどんどん教えてください!<公式>」に、自分で撮影した阪堺電車の写真を投稿しつづけている。

中学生のときから写真を撮り始めた田中さん。阪堺電車を撮るようになったのは、高校生になってからだという。

「当時、生野区にあった自宅から、阿倍野区にある住吉高校に通っていました。ふだんは自転車通学をしていたんですが、気が向いたときは、わざわざ阪堺電車に乗って通学しました。あの頃は南海平野線ですね。自転車を平野停留所の近くに置いて、阿倍野まで乗って上町線に乗り換えて、学校の最寄りの北畠停留所までね」

学校では写真部と鉄道研究会に入っており、学校が終わると電車に乗って写真を撮りながら帰ったこともあるとか。

「鉄道しか撮らないんですよ。今でいう撮り鉄でしたね」

Facebookに投稿しているのはもっぱら阪堺電車の上町線だが、40数年にわたって撮りためた中には、1980年に廃線になった平野線やJRが国鉄だった時代のSLなどの写真もあるそうだ。

大阪市内にある上町線の停留所はすべて撮った

田中さんが阪堺電車の写真を投稿するようになった動機は、息子さんが一時期、阿倍野区に住んでいたときに訪ねる機会がたびたびあったことと、学生時代に阿倍野区まで通学していたことに縁を感じたからだそうだ。

「何か投稿しようと考えたときに、グルメとか新しいお店ができましたというのは他の人がさんざんやってますよね。得意分野なら鉄道だと思って、初めは古い電車とかSLをランダムに投稿してたんです。でも、まとまりがないと思って、阿倍野を走る上町線の車輌を形式別に投稿していきました。同じタイプの車輌でも、3年くらいでラッピングが変わるから面白いでしょ。そして今は停留所シリーズで、停留所ごとに投稿しています」

田中さんが意識して阪堺電車を撮り始めたのは、じつは最近のことだという。

「ちょっと意識して、全停留所で降りて撮りました。堺市は乗っただけで、まだ撮れていませんけど」

阪堺電車の写真を投稿し始めてから、人間関係にも少し変化が現れたそうだ。

「懐かしいとか、自分も住吉高校でしたというコメントをいただきました。直接友達になった方とは、鉄道関係のイベントに一緒に参加したこともあります」

今後も新旧織り交ぜた写真を見られそうだが、その先に何か目標のようなものはあるのだろうか。

「あるていどまとまったら、AmazonのKindle版で写真集をつくってみようと考えています。車輌の形式別と停留所別にね」

じつは阪堺電車ではないけれど、すでにAmazonのKindle版で鉄道写真集を出しているという。阪堺電車の写真は不定期投稿なので制作時期は未定だが、実現したらきっと素敵な写真集になるだろう。

(まいどなニュース特約・平藤 清刀)

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