「ラピュタ」パズーのトランペットの腕前って正直どうなの? 金管楽器奏者に聞いた「スカウトされるレベル」
12日に『金曜ロードショー』(日本テレビ)で放送された、スタジオジブリ作品「天空の城ラピュタ」。1986年に公開された同作は、主人公の少年・パズーと不思議な力の飛行石を持つ少女・シータによる、空に浮かぶ伝説の城・ラピュタを舞台とした冒険の物語。「バルス」「40秒で支度しな!」「見ろ!人がゴミのようだ」など印象的なセリフも多く、テレビで放送される度にSNSで大きな話題になることでも有名です。
そんな同作のなかで話題になったのが、パズーがトランペットを吹くワンシーン。空気が澄み切った早朝、鳥が無数に羽ばたくなか、パズーは家の屋上から朝を報せるように高らかに音色を奏でます。
劇中ではウォーミングアップの様子は特に描かれていませんが、のびやかで美しい音色が響き渡っています。音出しなどせずにいきなりトランペットを吹けるパズーってもしやプロレベルなのでは? また、音楽素人の記者からすると大変綺麗な音色に聞こえますが、楽器奏者から見るとどうなんでしょうか。そこで、関西を中心に活動している、トランペットと同じ金管楽器であるトロンボーン奏者の松田敏裕さんにお話を聞きました。
■「あの音が出せるパズーはすごい」
ーー素人質問ですが、朝イチであれほどの音色は出せるものなのでしょうか。
「あのファンファーレを起きてすぐ吹くのは難しいと思います(苦笑)。朝イチですぐにあの音が出せるパズーはすごいですよ。
というのも、プロのミュージシャンであってもウォーミングアップは必要なんです。トランペットなどの金管楽器は、ロングトーンといって、音を長く伸ばして唇を慣らす基礎練習的なものをします。特に寝起きは唇の周りの筋肉が固まっているので、急に音を出すのは難しいんです。それを踏まえると、パズーは才能があると思います」
ーー演奏もとても美しい音色でした。
「アニメ作品にこういうことを言うのは野暮かもしれないのですが、劇中のトランペットを演奏しているのが、トランぺッターとして非常に有名な数原 晋さんでして、私はそれを知ったうえで観ていました。
数原さんが出される音はブライトで、ハイノートヒッターという高い音をキラキラと鳴らす、非常にきらびやかな音です。劇中でパズーが奏でていた楽曲『ハトと少年』でもその特長がよく出ていて、『さすが、数原さん』という印象でした」
ーー調べてみたら、数原さんは日本屈指のトランぺッターの方なのですね。
「残念なことに昨年亡くなられたのですが、数原さんは1970年代以降の歌謡曲、アニメ、演歌など、さまざまなジャンルの音楽で活躍されていた方です。どんなジャンルでも数原さんはトランペットソロで引っ張りだこで、ファーストコール(アーティストやプロデューサーが一番に声を掛けたいミュージシャン)といえば数原さんでしたね。
作品として有名なところで言うと、『必殺仕事人』シリーズのマカロニ・ウェスタン調のトランペットも数原さんです。ほかにも、矢沢永吉さんなどの楽曲でキーンと高音のトランぺットが鳴っていたらまず数原さんというくらいで。ほかにも、山口百恵さん、松任谷由実さん、山下達郎さんなど、名だたるアーティストの楽曲に参加されていました。
話を戻しますと、そんな数原さんと『同じように奏でられる』と捉えたら、パズーのトランぺットの腕前はすぐに業界人の目に留まってスカウトされるレベルです。引っ張りだこになると思いますし、炭鉱で働いている場合じゃないですね(笑)。すぐにでもツアーに回れるんじゃないでしょうか」
◇ ◇
魅力的なストーリーやセリフはもちろんですが、次に『天空の城ラピュタ』を観る際は、ぜひパズーのトランぺットの演奏にも注目して観てみてはいかがでしょうか。パズーが奏でるファンファーレが今まで以上に美しく聞こえそうです。
また、お話を伺った松田さんは「FUNKY NASSO」というユニットで、9月23日に兵庫・神戸市のライブハウス「チキンジョージ」にてライブイベントを開催されるそうです。トランペットを演奏するのは、アメリカのディズニーワールドでトランペットを演奏していたアメリカの方だそうですよ。気になる方はそちらもチェックしてみてくださいね。
(まいどなニュース・門倉 早希)