ミラーボールを敷き詰めた空間「ナルシスの庭」は独特の世界観 3年に1度の瀬戸内国際芸術祭に行ってみた
香川、岡山両県の島々と港を舞台にした現代アートの祭典「瀬戸内国際芸術祭2022」の夏会期が始まっている。9月4日まで。新型コロナウイルス感染症対策と熱中症対策に取り組みながらの開催とはいえ、3年に1度とあって近畿や関東、海外からの観光客も訪れている。今回加わった新作は19点。高松港から直島を経由して宇野港へ、芸術に触れてみた。
「瀬戸内国際芸術祭」は3年に1度、開かれており、今年で5回目。瀬戸内の12の島々と高松、宇野の2つの港を舞台に行われる日本最大級の芸術祭として、いまや広く海外にも知られている。
第1回は2010年に高松港と7つの島で開催され、その後エリアを拡大。開催も春、夏、秋の3つの会期に分け、季節ごとの魅力を伝えながら合わせて105日間の日程で開かれる。
この5日からは夏会期がスタート。その直後、ちょうど香川に滞在しており、1度は訪れてみたいと思っていたので、早速向かうことにした。
下調べをすると、今回の会場は直島、豊島(てしま)、女木島、男木島、大島、犬島、小豆島の7つの島と高松港、宇野港周辺とのこと。コロナの影響で、大島での作品公開は15日からとのことだった。
高松港をぶらっと散歩し、直島か豊島か、どちらのルートにするかで迷ったが、最終的には直島を選んだ。決め手になったのは、草間彌生作品「赤かぼちゃ」と宇野港へのアクセスの良さだ。
直島行きの四国汽船フェリー「あさひ」は程よい感じの乗船者。瀬戸の海は例によって穏やかで、船は源平合戦で知られる屋島を右手に見ながらゆっくりと進んで行く。デッキには女性4人組。聞くと、中国人留学生で東京の造形大学でグラフィックを学んでいるとのことだった。小1時間の船旅。宮浦港ではシンボルとも言える「赤かぼちゃ」が出迎えてくれた。
ここでは松山市から訪れたという女子大生風の仲良し3人組と束の間の交流。「瀬戸内芸術祭は初めてなんです。どんな作品に出会えるか楽しみにきました」と、笑顔で応えてくれた。
その後は100円の巡回バスに乗って、島内を巡り、演歌「おやじの海」の石碑がある「ふるさと海の家つつじ荘」で1度下車。そこからは無料バスに乗り換え「ベネッセミュージアム」で食事をしながらしばらく休憩し、最後は今年3月に開館したばかりの「ヴァレーギャラリー」に向かうことにした。
山の麓にあるこちらの建物も安藤忠雄が設計。これに草間彌生と小沢剛のオブジェが加わり、独特の世界観を醸し出していた。いたるところに銀色のミラーボールを敷き詰めた空間は「ナルシスの庭」と呼ばれ、草間の作品。銀の球は廃棄物を再利用しているそう。眺めていると、こちらの姿が映し出され、何かを見透かされているような感覚を味わった。
実際、あとで解説書を読むと「反復する球の集積が周囲の自然や鑑賞者の姿を映し出し、私たち一人一人がひとつの生命体として自然と一体化し、無限に拡がっていくような感覚を味わいます」とのこと。島では多くの外国人ともすれ違い、ヴァレーギャラリーの池の前ではカナダのトロントから来日したという4人家族としばし国際交流をはかった。
帰りは直島から高速艇であっという間に岡山の宇野港へ。地元の人は「直島は香川ですが、生活インフラは岡山なんです」と教えてくれた。宇野港に着くとすぐに、今回の新作オブジェのひとつ「本州から見た四国」が見えた。また漂流物を再利用した「宇野のチヌ」「宇野コチヌ」が宇野港駅から5分ほどのところにあり、じっくり鑑賞して、岡山駅へ向かった。
今回の旅を終えて感じたのは、当然のことながら1日では物足りないということ。今度行くときは、たっぷりと時間を取って回りたいものだ。それと、不思議だったのは、同じ頃に東京在住の友人が小豆島を訪ねていたこと。それぐらい、この芸術祭は注目度が高いのだろう。
夏開催は9月4日まで。まだ時間はある。これから訪れる人のためにアドバイスをするとしたら、しっかりと水を確保すること。直島にはコンビニがあったが、ない島もあると思うので、事前にミネラルウオーターなど購入して、備えていた方がいい。もちろん、日差しもまだ強いと思うので、こまめに水分を補給し、帽子や日傘を用意しておくのもいいかもしれない。
(まいどなニュース特約・山本 智行)