ダウンタウン輩出の下町にレゲエの聖地を 尼崎レゲエシーンの新展開に注目せよ
大阪府に接する兵庫県尼崎市。古くから工業都市として栄え、お笑いコンビ・ダウンタウンら数々の著名人を輩出していることや独特の下町文化で知られるこの街だが、近年あらたな側面が注目を集めつつある。
それはレゲエ音楽。
尼崎では2000年代初頭から数多の若手レゲエミュージシャンが活動を開始し、関西圏のみならず全国に進出。2012年にTHUNDER(トンダー)が発表した「尼の唄」は素朴な地元愛、家族愛のメッセージが話題となり、YouTube上で公開したMVがこれまでに150万回再生を突破。尼崎の森中央緑地で開催されるレゲエフェス「尼崎レゲエ祭」は毎年のように数千人規模の観客動員を記録するなど、尼崎発のレゲエ音楽が大きなムーブメントを巻き起こしているのだ。
そして今、これまで一連のムーブメントを主導してきたプロジェクトチーム「尼爆crew」による試みが話題になっている。それはライブハウスの開店。尼崎でライブハウスを運営し、そこを内外のレゲエミュージシャンが集う"レゲエの聖地"とするべく動き始めているのだ。
尼爆crewの担当者にお話を聞いた。
ーー尼崎レゲエシーンの現状についてお聞かせください。
担当者:現在、尼崎では「尼の唄」のTHUNDERや世界的に活躍するDJ集団「EMPEROR」を中心に、多くのレゲエアーティストやDJが活動しています。THUNDERの自宅スタジオ、EMPERORが運営するスタジオ「V1STUDIO」は録音環境も整っており、多くのアーティストを受け入れられる環境が備わっています。最近では他の地方から尼崎に引っ越して来て活動するアーティストも増えており、福岡から移住してきた晴輝は今年、大阪の老舗レゲエフェスに初出演を果たしています。
コロナ禍になって年間120本ほどあったイベントが20本程度に減り、尼崎レゲエ祭も中止を余儀なくされました。ですがその間に尼崎にMUSIC BAR「TOAST」を開店したり、音楽とコラボしたタコスのキッチンカー「自由多幸寿-LIBRE-」の事業が始まるなど、けっして悪いことばかりではなく、今後の展開へのいい準備期間になったと思っています。
ーーライブハウスを作ろうと思った経緯をお聞かせください。
担当者:自分たちは地元尼崎のメンバーと地元にこだわって、音楽活動を続けてきました。2016年にそれまで本拠地としていたライブハウス・尼崎DEEPAが閉店し、それまで毎月やっていた尼崎でのイベントができなくなりました。その直後から尼崎で自分たちの満足のいく環境で、音楽ができる拠点を作りたいと考えていました。
尼崎は住んでる人たちのパワーが強くて人情に厚く、神戸や大阪からのアクセスもいい。そして何より自分たちを育ててくれた町を音楽で盛り上げたい、尼崎から全国に誇れるようなアーティストを生み出していきたいという気持ちがあります。尼崎名物になるような最高のライブハウスを作りたいです。
ーー地元の人たちからの反響は感じていますか?
担当者:「尼の唄」は年配の方でも知っている方が増えてきましたし、ライブハウスを始めることになってこれまで以上に地元からの応援ムードが高まってきたように感じます。アーティストも家族から「がんばれ」と励まされたりしているみたいですね。
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単なる若者のカウンターカルチャーにとどまらず、大きな展開を迎えている尼崎のレゲエシーン。今後、より幅広い層にその魅力が伝播することを期待したい。
なおライブハウスは9月のオープンに向け目下、関係者たち自らの手で工事が進められている。現在、実施中のクラウドファンディングサイト「尼崎をレゲエの聖地に!!全国からアーティストが出演するライブハウスを作りたい!!」で今後さまざまな報告がされる予定なので、ご興味ある方はぜひチェックしていただきたい。
(まいどなニュース特約・中将 タカノリ)