一目散に駆け寄ってきた子猫を保護 人懐っこすぎて「家庭内ストーカー」状態だけど…愛をいっぱい運んできてくれてありがとう
■一目散に駆け寄ってきた子猫
うめちゃん(1歳・メス)は、2021年9月16日の午後、助けを求めて鳴いていた。
徳島県に住むSさんは、長年一緒に暮らしてきた猫を2020年10月に亡くし、「もう動物と一緒に暮らすことはない」と思っていた。翌年5月に引っ越しをして、家の周辺で野良猫を見かけることがあったが、自分から近づくことはなかったという。近所の人に声をかけられて、別の人が外で世話をしている白猫とその子猫たちを見に行ったこともある。それでも前向きな気持ちにはなれなかった。
その日、Sさんが家にいると、子猫の鳴き声が聞こえてきた。しばらくそのままにしていたが、一向に鳴き止む気配がない。Sさんはいてもたってもいられなくなり、様子を見に行った。すると、とても痩せている上にやたらと大きな耳をしたキジトラの子猫が、一目散に足元に駆け寄ってきたという。
■道路に下ろせない
周囲を見回すと、1匹のシャムミックス猫が日向ぼっこをしていた。
「母猫かと思って、その猫のそばに子猫を置いてみたのですが、すぐに私のところに戻ってきました。シャムミックスも子猫に関心を示さず、困ったなと思いました」
その時Sさんは、近所の人と見に行った白猫の子猫のうち1匹が、よく似た毛色だったのを思い出した。白猫親子は外にいたので、母猫とはぐれて道路を渡ってきたのかもしれないと思ったが、違っていた。Sさんは子猫を抱いたまま、再び道路に下ろすわけにもいかず、夫に「猫を飼ってもいい?」とメールを送った。夫からは拍子抜けするくらいあっさり「いいよ」という返事が来た。
その子猫が、うめちゃんだ。Sさんはうめちゃんを家に連れて帰り、ミルクを買いに走ったり、実家に行って必要な物品を揃えたりした。再び猫との暮らしが始まった。
■愛をいっぱい運んでくれた子
Sさんは子供の頃から動物が大好きだったが、夫にとっては人生で初めて飼う猫。一緒に暮らしていけるのかSさんは心配だった。
「最初は撫でるのも恐る恐る。瞬膜が出たと言って心配し、身体のやわらかさにも『こんなグニャングニャンでこの子は大丈夫なのか』と驚き、本気で心配していました」
うめちゃんはとにかく人懐っこく、初日からSさんと同じ布団で寝るような猫だった。夫との距離もあっという間に縮まり、夫は出かけるたびにうめちゃんにおもちゃを買ってくるような、立派な親バカになったという。
「うめちゃんを飼い始めてから、夫は外猫のことを気にかけるようになり、夫婦で外猫の話をすることが増えました」
うめちゃんは分離不安症で、家庭内ストーカーをする。洗濯物を干したり、庭に出たりするだけで鳴きわめく。Sさんがトイレをする時も毎回出待ち状態。真夜中でもドアの外で待っているそうだ。ドライブが好きで、週のうち半分はドライブに行くという。
口の中にハート模様があり、夫妻は「愛をいっぱい持ってうちに来てくれた」と思っている。
(まいどなニュース特約・渡辺 陽)