金融トップセールスだった私「ずっと後ろめたかった」→相続相談業に転身「喜んでもらえやりがい感じる」
「終活」「相続」「実家じまい」ーー働き盛りの人たちにとって、離れて暮らす親の老後や財産の問題などは、ついつい目をそらしてしまうという人も多いのではないでしょうか。
「『誰に相談したらいいのか分からない』と思っておられる方の、最初の第一歩の道先案内の役割を果たします」
こう話すのは相続の相談業「繋ぐコンサルティングオフィス」(本社、神戸市東灘区)代表取締役の松本恵さん(55)。銀行、証券、保険の金融機関で約17年勤務してきた経験を生かし、2018年に独立。「個別相談でしっかりとしたヒアリングを行い、見えている問題と隠れている問題を整理し、専門用語を使わずに、わかりやすくアドバイスをさせていただきます」。懇切丁寧な対応の背景には、金融の世界でトップセールスとして大きな商品を売り続けた「後ろめたさ」がありました。
■「お墓じまい」の問題も解決
学生時代に陸上競技で活躍。卒業後は地元のスポーツ用品販売会社へ就職し、営業として13年間勤務。結婚と出産後、家計のために就職活動をし、選んだ業種は金融業界でした。大手2行で金融の知識を学び、スキルアップを続け、野村證券へ転職。約10年勤務した後に、外資系保険会社を経て独立しました。
現在の主な事業内容は相続コンサルタント。相談者の現状をヒアリングし、問題点やどんな専門家に相談すればいいかをアドバイスします。個々が抱える問題に沿って相続対策の教科書となる冊子も作成。「冊子をもとにご自身で解決してもらっても構いません」。社会福祉士、弁護士、税理士、司法書士、行政書士、金融機関など、相続問題全てを網羅できる各種専門家を外部パートナーとしてそろえており、各専門家とのやりとりも一手に引き受けます。
最近、特に目立つ相談は「お墓じまい」。松本さんに相続の相談をして初めて、先祖のお墓の存在に気付くケースも多いといいます。先祖代々のお墓を自分達の代で整理したいという要望を受け、松本さんらは相談者の宗派や石の回収業者まで細かく調査します。
■営業成績優秀、しかしずっと抱えていたジレンマ
「若い世代の方々の人生も大切です。相続する側、される側、家族みんなが心置きなく過ごせる方法は何なのかを考えます」と相談者に寄り添う松本さん。相談者に親身になるのには理由がありました。
「金融機関にいたときはずっと後ろめたかったんですよね。とにかく会社の収益を求めにいく仕事でした。お客様にどのようにお話すれば大きな金融商品を買っていただけるか。その分野が得意だった私はトップセールスにもなりました。お客さまの家族の背景や悩みも分かっていました。でもそこをフォローする役割や仕事内容ではありませんでした。『本当の幸せ提供ができなかった』ということにずっとジレンマを抱えながら働いていました」
「今の仕事は『競争ではないのでは?』と思っています。商品の提供もしません」と言い、「相続の相談の仕事は依頼者にすごく喜んでもらえます。半端ではないやりがいを感じています」と力を込めました。
相談料金は初回90分5000円(税抜)。電話078-843-6058。
(まいどなニュース・金井 かおる)