魔女の宅急便に憧れて…迎える予定の黒猫には妹がいた! 「引き離すわけにはいかない」悩んだ夫婦の決断は
いなりちゃん(1歳5カ月・黒猫のオス)ととろろちゃん(1歳5カ月・白黒猫のメス)は兄妹だ。一度、保護活動家によって保護されたが、ひどい猫風邪をひいているにも関わらず、病院に連れてもらえなかった。そこで2日後、保護団体withねこが再度保護することになったという。トイレも覚えておらず、多頭飼育崩壊した家にいたのかもしれないと考えられている。
埼玉県に住むNさんは、ちくわちゃんとぽんずちゃんという猫を飼っていた。ちくわちゃんは自分で保護した猫で、ぽんずちゃんはwithねこに譲渡してもらった。かねてから猫を3匹飼いたいと思っていたので、ぽんずちゃんの近況を報告した時に、黒猫がいたら連絡して欲しいと声をかけていたそうだ。
「なぜ黒猫かというと、私は『魔女の宅急便』が大好きで、子どもの頃から黒猫を飼いたいと思っていたんです。2021年4月半ば過ぎに黒猫を保護する予定があると聞いて、ワクワクして待っていました」
■黒猫だけ引き取るつもりが
withねこから黒猫の話を聞いた翌日、いなりちゃんととろろちゃんの写真が送られてきた。メールには、「猫風邪がすごくひどいので、しばらく預からせていただきます」と書いてあった。写真を見ると、2匹とも鼻はぐちょぐちょ、とろろちゃんは片目が白濁して飛び出し、いなりちゃんも片目の状態が悪かった。その後、とろろちゃんは片目の眼球摘出手術を受けることになった。
Nさん夫妻は性別はどちらでもいいし、障がいがあっても引き取るつもりだった。もともと黒猫を希望していたし、世話をできるキャパシティは3匹までだと思っていたので、予定通りいなりちゃんだけを引き取ればよかった。しかし、2匹は兄妹である可能性が高いことがNさんの心をざわつかせた。
「最初に保護したちくわの兄弟だと思われる子猫を保護できなかったので、2匹を引き離してしまうことに抵抗がありました。黒猫を飼いたいというのは私のエゴですし、3匹というのも人間の都合です。主人と相談して、『後悔するくらいなら2匹一緒に引き取ろう』ということになりました」
保護主は、無理しなくていいと言ったが、Nさん夫妻の気持ちは揺らぐことなく、2匹を迎えることになった。
■人と猫が支え合う
2021年5月、2匹が家にやってきた。初日からお腹を出してゴロゴロ喉を鳴らす甘えん坊だった。ちくわちゃんといなりちゃんは男の子同士で特に問題はなかったが、ぽんずちゃんととろろちゃんは女の子同士。なぜか威嚇し合っていた。とろろちゃんはちくわちゃんにも厳しく、ちくわちゃんはとろろちゃんにシャーっと言われて落ち込んでいた。
「その様子を見た主人が、『うちは女が強いんだな~、親に似たんだな』と言って笑っていました。1週間もするとみんな馴染んできましたが、すっかり仲良くなるまで2週間くらいかかりました。とろろの目のハンディは全くなく、今ではチャームポイントだと思っています」
一方、ぽんずちゃんは母猫役をしてくれた。いなりちゃんととろろちゃんが「遊んで~」と鳴いたり、「眠たい」とぐずった時に、ぽんずちゃんに「ぽんちゃん、チーママして~」と言うと、ぽんずちゃんは2匹をペロペロ舐めてあやしてくれたという。
子どものいないNさん夫妻にとって、4匹の猫たちは子どもと同じ。でも、彼らは甘えるだけでなく、Nさんを支えてくれることもある。Nさんが精神的にダメージを受けて参っていると、寄り添ってくれたり、「手を繋ごう」と、Nさんの手に自分の手を入れて支えてくれることもある。体調の悪い時は、知ってか知らずかいつもより大人しくしてくれる。
猫のことをもっと知りたいと思ったNさんは、動物関連の民間資格を9つも取得した。ただ、獣医師でないと病気のことまでは分からない。毎日スキンシップを欠かさず、ちょっとした変化を見逃さないようにしているそうだ。
(まいどなニュース特約・渡辺 陽)