バラエティーの定番ハリセン、テレビから消える? 放送作家のツイートにSNS騒然 「つまんない世の中」「やりすぎ」
バラエティー番組の定番小道具、ハリセンがコンプライアンスNGになったという報告がSNS上で大きな注目を集めている。報告した放送作家に話を聞いた。
「いよいよ、これもコンプラNGを食らってしまいました。」と投稿したのは放送作家の辻井宏仁さん(@hironoritsujii)。
年々厳しくなるテレビ番組におけるコンプライアンス遵守の風潮。これまでにもさまざまな表現や行為が規制されてきたが、その波はいよいよハリセンにも及んでしまったようだ。
辻井さんの投稿に対し、SNSユーザー達からは
「えぇー…ハリセンが駄目!?バットとかで殴る訳でもないのに…流石にやり過ぎですね。」
「そのうち漫才のツッコミでも頭はたいたりできなくなるかもしれませんね…」
「もう何か悲しいですね。いつからこうなったんですかね?お笑い番組、パラエティ番組はどんどん痩せていく。『昔は良かった』『今じゃ考えられない』の定型句がまた聞こえる。」
「コンプラ…コンプラ…。一体誰に対しておもねってるんかな…!?︎つまんない世の中になったものです」
など数々の驚きと嘆きの声が寄せられている。
■「痛くないよう工夫されているのに…」
辻井さんにお話を聞いた。
ーーハリセンはどのようなシチュエーションで使用する予定だったのでしょうか?
辻井:ほぼテレビゲーム未経験のある大御所芸能人が最新テレビゲームで遊ぶという企画内で、若い共演者が口頭でアドバイスを行うが大御所が敵にやられるとアドバイスミスのお仕置きとしてハリセンで叩かれてしまうという用途でした。
ーーハリセンがコンプライアンスに引っかかると指摘された際の説明内容をお聞かせください。
辻井:BPOの見解である「痛みを伴う行為による笑い」に該当するということでした。今年4月の時点では同じ番組内でハリセンを使った演出は放送出来ていたので、そのスピード感に驚きました(筆者注※今年4月15日、BPO青少年委員会が『痛みを伴うことを笑いの対象とするバラエティー』に関して懸念する見解を発表)。
そもそもハリセンは痛くないよう工夫して発明されたバラエティアイテムなのですが、痛いかどうかではなく、痛く見えるということがダメとなればここにきてコンプライアンスのギアが、また一段上がったなという印象を受けました。
ーー放送業界における近年のコンプライアンス遵守の高まりで、この他にも戸惑われた例があればお聞かせください。
辻井:いずれ色んなものがNGになるだろうなと言う感覚で構えているので特に驚かされることはありませんが、ただ聞かされる度に寂しい気分になりますね。
局や時間帯、演出などによってここの判断は異なってくるので今回のハリセンについて問題ないとする番組もあるでしょうけど、現場のルールが常に上書きされていくのでそれに合わせて「面白い」の感覚をアップデートする必要性があります。
ーーこれまでのSNSの反響へのご感想をお聞かせください。
辻井:想像以上の反響に驚きました。引用リツイートを含め2500件以上のコメントが寄せられた中で、その9割以上がハリセンを惜しむ、言うなればハリセンロスな反応でした。
「バラエティ終わった」と悲観する声もあったんですけど、僕の感覚ではバラエティって終わるどころか、今ものすごく進化し続けていると思うんです。
例えば「水曜のダウンタウン」なんかを見てると、まさに最先端のセンスの塊で作られていますけど、Tverのランキングでは毎回1位を獲るなどちゃんと成功しています。視聴率のターゲットが視聴者全体から若者にシフトしたり、SNSでバズることが良いとされたり、最近だとテレビ局から出される番組の募集要項に「エッジの効いた企画」とか「ぶっ飛んだ企画」って書いてあったりして、実は厳しいコンプライアンスとは関係ないところで最近、新しい流れが生まれようとしてるんです。
内容は言えませんが個人的にもやってみたい企画は山ほどありますので、その中から代表作になるような番組を生み出したいと思っています。
◇ ◇
さまざまな制約を超え、現代にフィットしたより良い番組を作ろうとするテレビマンたち。見慣れたアイテムがテレビから消えてゆくのは寂しいが、これも時代の流れか。今後もテレビが豊かな発信のできるメディアであり続けてくれるよう願いたい。
なお辻井さんは今回の件について自身のnoteでも詳細に考えを紹介している。ご興味ある方はぜひご覧いただきたい。
【辻井宏仁さん】
放送作家。これまで「男子ごはん」「ありえへん∞世界」「タチ喰い!」などジャンル問わずさまざまなテレビ番組を担当。YouTubeプロデュース、CM企画なども手がける。
(まいどなニュース特約・中将 タカノリ)