上野の双子パンダ、ほぼ永久歯に 全部生えそろうと一体何本?なぜ笹ばかり食べるの?歯科医に聞いた
上野動物園(東京都台東区)は、昨年6月に生まれたジャイアントパンダの双子、シャオシャオとレイレイの2頭とも犬歯以外のほぼ全ての乳歯が永久歯に生え替わったと発表しています。今後はいつ竹を食べるのかに注目が集まりそうですが、パンダの歯は何本あるのでしょうか。それとなぜ、竹ばかりを食べるのでしょうか。歯科医芸人の”パンヂー陳”こと陳明裕さんが答えてくれました。(聞き手・山本 智行)
陳明裕(以下陳):これまた凄いニュースが飛び込んできましたよ!上野動物園によれば、双子パンダのシャオシャオと、レイレイの歯が犬歯を除いてほぼ永久歯に生え替わったとのことです。
■パンダの歯の数は、犬などと同じ42本
--知りませんでした。しかも「ほぼ永久歯」って中途半端なニュースですねぇ。そもそもパンダの歯って、何本生えたら全部そろうんですか?
陳:犬と同じ本数です。
--あー、なるほど。犬と同じですねって、犬の歯の本数なんか知りませんよ!
陳:前にも、犬など動物の歯の本数のお話をしたのに、覚えていらっしゃらないんですか?42本が正解です。
--犬歯はまだ生えてないってことは人間でいうと、いくつくらいなんでしょうね?
陳:人間の場合、上顎の犬歯は9歳から12歳くらいに生えることが多いので、歯牙年齢で言えば「歯まだ小5」くらいですかね。
--いま「浜田省吾」と聞こえたんですが。浜田さん言うたらもう69歳ですよ。ハマショー、大好きです。
陳:♪夕べ眠れずに泣いていたんだろうって。そんなん、浜田さんが聞いたら、夕べ眠れてても泣き出すわ!何を聞いてはるんですか。「歯はまだ小5」で、11歳くらいっていうことです。
--ややこしい言い方せんといて下さい。歯が42本ってことは、上顎21本、下顎21本なんですか?なんか奇数って、おかしくないですか?
陳:普通、歯は左右対称に同名歯があるので、歯の本数は偶数。奇数なわけないでしょ!
--では、なんで42本なんでしょう。
陳:同じ歯医者でも色んなこと、研究されてる方がいらっしゃるようで北海道大学歯学部口腔解剖学口座にいた米田正明先生は「ヒグマとツキノワグマにおける前臼歯の欠如とクマ科の歯数減少傾向」という論文を著しています。
■クマ科の動物なので上顎20本、下顎22本の合計42本
--クマの歯を研究ですか。いかにも北大って感じですね。
陳:その論文によると「哺乳類の基本歯式は上下顎共に、片側は門歯3本犬歯1本、前臼歯4本、後臼歯3本(3143)が基本ですが、イヌ科と同様、クマ科でもM3が消失し上顎が3142になっていて、下顎が3143なので合計すると42本になります。
パンダもクマ科の動物ですので上顎20本、下顎22本の合計42本になります。報道によりますと、上野の双子パンダも、歯が生えそろってから、徐々に上手に竹を食べられるようになってきたそうです。
■1日約15キロもの竹や笹を食べるパンダ、消化できるのは2割
--そういえば、双子パンダが生まれた頃の報道は、ミルクを飲む映像ばかりだったように記憶しています。
陳:人間の場合は、下顎の乳中切歯が生後6カ月くらいに生え始めますが、パンダの場合はちょっと早くて生後3カ月頃に乳歯が生え始めるそうです。大人のパンダは、1日約15キロもの竹や笹を食べるそうですが、そのうち、ちゃんと消化できるてるのは、たった2割ほどなんだそうです。
--もったいない。もっと効率よく吸収したらいいのに。
陳:うまくできている部分もあります。毎日、15キロもの硬い竹を食べようと思ったら結構大変なので、歯もそれに都合よくできていて、門歯で葉等をまとめて噛みちぎり、犬歯でかたい竹をバリバリ噛み裂き、人間の7倍もの大きさがある平たい臼歯で竹をすり潰します。主食の竹や笹を食べるのに適した違いは、歯だけでなく顎関節にも及んでいて、より横方向に動きやすい構造になっています。
■中国山岳地帯で暮らすパンダが、安定して得られる食物は竹や笹…それに適応していった
--進化の不思議というか、でも、何でそこまでして、もともと雑食とはいえ肉食獣だったクマの仲間が、竹みたいなもの食べるようになったんでしょうね?
陳:確かに僕もタケノコご飯とか、好きですけどタケノコを主食にしようと思わないですし、竹になっちゃったら、もう煮ても焼いても食べたくはないですからね。一説には生存競争を避けて、中国山岳地帯で暮らすには1年を通して安定して得られる食物は竹や笹くらいしかなかったので、それに適応していったそうです。まっ、人間で言ったら「都会の暮らしに疲れたので、脱サラして家族みんなで田舎でのんびり暮らしたい…」みたいな心境だったんじゃないですか?
--なんか、居酒屋で愚痴をこぼしてるオヤジみたいな心境で、パンダは笹を食べ始めたんですね。あの愛くるしさの裏には悲哀があったとは…。
陳:僕も普通のお笑いでの競争・競合を避け、「歯科医師芸人」として孤高の道を歩んでいますのでパンダの気持ち、分かる気がします!
--まっ、パンダの様な人気者には絶対になれないですけどね。世のため、人のために歯科医とお笑いを両立させてください。
(まいどなニュース特約・山本 智行)