「G」とのイタチごっこにおさらば!? 21世紀の最先端ドライ害虫駆除機で飲食店のゴキブリがゼロに

 飲食店などでのゴキブリ対策として「殺虫剤をまいて殺す」のはもう古い。今や①無色②透明③無残留のドライ駆除方法が浸透している。その画期的な駆除機「ブラックメンター」で日本の害虫駆除の歴史を変えた、と言われるのが兵庫県西宮市にある「株式会社日本サクドリー」だ。井上輝美社長に、これまでの歴史と最新の害虫駆除について話を聞いてみた。

■害虫駆除業者はゴキブリとイタチごっこ?

 見た瞬間、ゾッとするアイツ。テカテカと黒光りする、あの物体と戦い続けてきた会社は西宮市にあった。国道2号線沿い、上甲子園付近で目につくのが「日本サクドリー」と掲げられたビル群。コロナ前までは本社の一角に害虫の知識を広げることを目的とした害虫防除博識館が設けられており、地元の人にはよく知られた存在だ。現在はコロナのため、閉鎖中だが、井上社長は「もともとはお客様や関連企業だけでなく、一般の人にも害虫のことを広く知ってもらいたいと思い、開いたものです」と話す。

 実際、本社を訪ねると、2階部分には害虫防除博識館の展示物の一部であるゴキブリの標本などが今も残っていた。世界最大級のマダガスカルオオゴキブリをはじめ、日本でも目にするゴキブリがズラリ。なんとも不気味だが、中でも飲食店に多いのがチャバネゴキブリだそうで、聞けば、こいつらは1つの卵鞘から20日後に40匹の幼虫が孵化し、その40匹が3カ月後には繁殖を始めるという。

 「問題はゴキブリの卵。成虫とは違い、卵は無機質の甲羅で覆われており、化学的防除(薬)が効かないんです。いくら駆除業者が駆除しても、卵が産み落とされていれば、再び孵化し、幼虫が発生します。かといって、薬を残す業務は結果的に薬害につながる。しかも、人的作業による月に一度程度の処理では撲滅は不可能なので、イタチごっこになるんです」と、井上社長は指摘する。

■世界初?ドライ害虫駆除機で、ゴキブリゼロに

 人類との戦いの歴史は長く、害虫駆除対象はハエ・蚊から始まり、やがて都市型時代に進むとゴキブリへと変化。一方、駆除方法としては「撒く」から始まり「霧状」「煙霧」「ガス」へ、道具(機器)の進化により効果を向上させたものの、都市型環境が薬剤汚染を嫌うようになり、その結果「ベイト(食毒)処理でドライ処理に、と流れが変わった」と井上社長は話す。

 20世紀はどの処理方法にしても対ゴキブリへの決定打はなかったが、長年の研究開発の末、2004(平成16)年、ついに21世紀型の画期的なシステムが開発された。日本サクドリー製のヒーター付ドライ害虫駆除機「ブラックメンター」がそれで厚生労働省に承認され、同時に特許も取得。これにより正式に、殺虫剤をまかかずに無色、透明、無残留のドライ駆除方法でゴキブリ駆除ができることになった。

 さらに、人的作業には限界があったが、このドライ駆除機にタイマーを設置することにより、人的管理から機器的管理へと変わったことも注目に値する。「いわば、毎日駆除する業者さんが来ている状態で、しかも薬を残さない」と胸を張った井上社長。日本サクドリーが1993(平成5)年に最初の「ドライ駆除機」を開発してから実に11年目のことである。

 「呼吸系の神経毒で駆除するんですが、人がいない時間に機器が稼働することで薬害がないというのがヒットした理由でしょう。ただし、ゴキブリがいなくなったと言って、設置をやめるとまた繁殖するので、それはお辞めください」

 今や、この画期的なゴキブリ対策法は国内だけにとどまらず、韓国やベトナムなど海外でも注目を集め、導入する地域が増えているそうだ。

■新しい時代の環境衛生を築きたいと普及活動にも尽力

 そんな井上輝美社長は38歳で起業。6畳1間の事務所からスタートした。「毎日、ゴキブリの夢を見ていました。男のロマンでここまできたようなものです」と苦笑いするが、ドライ害虫駆除機などを世に送り出し、現在は25年連続増収増益中だ。サクセスストーリーを地でいく企業として、世界初といえるようなドライ処理法と新ベイト法を用い、いまの時代に即した環境衛生の普及にも尽力している。

 売り上げ至上主義に走らない点も凄いところだろう。何しろ、全国に「PCR(ペスト・コントロール・レンタル)」事業を普及させたい一心からロイヤルティーや契約金、研修費などなしに、この事業に参入したい会社や個人事業主などを集め、全国PCR事業普及会も立ち上げている。

 「今はドライ害虫駆除機は飲食店など、お店への導入が中心ですが、食事を出す保育所や幼稚園、老人保護施設などゴキブリ対策を必要とする場所にもどんどん普及させていきたいと考えています」

■ネズミなど害獣も駆除。プロ用アイテムを一般にも

 本社2階の一角には、同社が扱っている害虫や害獣駆除に関する製品も並んでいる。中には、家庭で使えそうなゴキブリやネズミなどの防御アイテムや飛来害虫防御グッズもある。

 「プロ仕様がほとんどですが、ご家庭でも使えるような製品ももちろんあります。お問い合わせいただければ、一般家庭で利用できるものは、販売します」と井上社長。今後について「害虫ゼロ環境維持を推進するのが私の役目と考え、今後も普及活動や新しい害虫・害獣対策商品の開発に力を入れていきたい」と意気込んでいる。

 害虫駆除は感染症予防対策とは切って切り離せない。生活環境を快適にするために、日本からアジア、そして世界へ。井上社長率いる日本サクドリーはゴキブリゼロを目指し、これからも戦っていく。

◇「マンガでわかる 世界初21世紀のペストコントロール」(幻冬舎ルネッサンス新社)

 世界で初めて21世紀のペストコントロールを確立させ、総合PCR事業で、先進国の国家衛生を目指した株式会社日本サクドリーと、創業者の井上輝美氏の偉業の記録物語。 歴史から見る21世紀のペストコントロール、創業秘話、井上社長の「人を育てる成功哲学」の三部から構成。

 無一文、6畳一間から、仲間3人とともに起業。以降、20年以上もの間、右肩上がりの経営を続けている井上社長。みずからを「人とは逆を行く業界の異端児(ドンキホーテ)」と称し、日本人が忘れ去った夢と魂を呼び起こす、その発想と行動を、マンガで紹介している。

(まいどなニュース特約・八木 純子)

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