稲刈り前の重労働、五百万石の収穫~鉄爺里山へ行く#5

鉄人爺さん、略して鉄爺。43年の会社生活を卒業し、「暇を持て余さない老後」をコンセプトに第二の人生にチャレンジする。里山、自転車、マラソン、旅にグルメに…。

 8月30日からミチのムコウの今年のメーンプロジェクトである酒米づくりのハイライト、五百万石の収穫が始まった。稲刈りといえば秋の農作業のイメージがあったが、コメの種類によって収穫期も違うことを知る。例えば同じ酒米の山田錦は10月が中心だという。

 前日にはホームセンターに行き、稲刈り用の鎌と、もうひとつチームから指示のあった鋸を買った。初日の主役は、実はこの鋸の方だった。

 刈った稲を束にし、干すための稲木(いなぎ)という木組みを作ることが先決。私が生まれ育った岡山県の山間部では「はでば」と呼んだ。

 材料になる竹を切り出すために田んぼの奥にある竹林に入った。この日必要となる稲木は12基。稲を掛けるための太い竿は5メートル、それを支える3カ所の土台には1カ所あたり1.5メートルに切った竹を3本使う。つまり1基あたり5メートルが1本と1.5メートルが9本。12基ということは12本と108本が必要になる。しかも軽トラックに積めない5メートルの竿は、約500メートルの距離を方に担いで運ぶしかない。

 足場の悪い急斜面の竹林に入った。新品の鋸だからというわけではなく、切るだけなら簡単な話。切り倒した竹を斜面を引き下ろし、枝を落とし、長さを切り揃えて運び出す…切ったばかりの竹の重さは想像以上で、汗が滝のように流れた。

 さて本番の稲刈り。刈り取った稲の穂を見ると、黄金色の籾に混じって茶色に枯れたもの、白く枯れたものが目立つ。大量発生したカメムシ、一番先に穂を実らせた五百万石を狙ったスズメの仕業だという。

 おまけにこのところの雨のせいで、田んぼは長靴が抜けなくなるほどぬかるんでいた。一定量を手刈りした後、収穫作業の主役となるコンバインが入れられない。迷走台風接近の可能性もという予報が焦りに追い打ちをかける。改めて自然を相手にした農作業の大変さを痛感する。

 この現場ににぎわいを作り出し、里山の活性化をという目的のプロジェクトだが、1年目の最初のヤマを越えた。収穫された五百万石は、同じ地域にある狩場一酒造に預けられ、1千本余りの特別純米酒に姿を変える。しかしそれは小さな節目。一歩前に進む度に新たな課題に直面し、学ぶ毎日だ。自分自身はそのエネルギーに触れる刺激を求め、片道50キロの里山へ通う。

(まいどなニュース特約・沼田 伸彦)

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