和装職人が届けるフォトウエディングが「映えすぎ」と話題 手掛けた有名人は多数…浜崎あゆみ、アントニオ猪木、海外王室
もうすぐ、ブライダルの秋。豪華な花嫁衣装を30年以上手掛けてきた京都の伝統工芸士がフォトウエディングを9月から始め、早くも話題を呼んでいる。京都の有名寺院を背景に一点ものの超豪華な和装の花嫁衣装を纏っての撮影が人気の理由。三宅工芸社長で金彩工芸士の三宅誠己(のぶみ)さんを取材した。
■きっかけは「打ち掛けの魅力を知ってほしいから」
三宅さんは和装の花嫁衣装や打ち掛けを中心に製作してきた。その中には多数の芸能人の花嫁・花婿衣装はもちろん、人気プロレスラーの金彩を施したガウンを手掛けてもいる。名前を挙げれば、浜崎あゆみ、アントニオ猪木。さらに、海外の王室から依頼があったりと、その活躍は世界的だ。最近では、その技法をスーツの世界でも発揮し、海外セレブからの依頼も増えているという。
そんな三宅さんが、自身の作品である一点ものの絢爛豪華な和装花嫁衣装のウエディング用のフォトサービスをこの9月から始めた。名前はズバリ「職人が届けるフォトウエディング」だ。
「金彩工芸士として、職人が丹精込めてつくり上げた伝統の和装花嫁衣装を1人でも多くの女性に着てほしい、本物の素晴らしさを実感してほしいという思いがありました。しかし、価格的には手軽に着られるものではない。レンタルすることで、若いカップルでも着ることができるのではと思ったのです」
■どこにもない、一点ものの打ち掛けでフォトウエディングで一生の思い出を
和装の花嫁衣裳の制作に携わり30年以上になるという三宅さん。両親とも着物職人という家に生まれ、18歳の時に着物職人になることを決意する。修行目的で入社した会社は打ち掛けを専門に手掛けていた。その時から花嫁衣装とかかわり、華やかさを表現するために金や銀などの箔や金属粉を用いて装飾する技法「金彩加工」一筋の道を歩み出した。
その技術を活かして色打ち掛け、白無垢、引き振袖など1万着以上の着物づくりに携わってきた人物でもある。さらに、長きにわたり培われた伝統の技を受け継ぎ、研鑽を積み続ける職人だけに与えられる「伝統工芸士」にも選ばれている。
実は、着物は分業の世界である。金彩工芸士なら通常は金彩部分のみを受け持つが、三宅さんが凄いのはオールマイティな技術を持っていることだ。白生地から図案構成、下絵描き、糸目置き、友禅染め、防染加工、染め、金彩工芸、仕上げなどほぼすべての工程に関わることができる。
また特殊技術を用い、金箔や螺鈿(らでん)を着物の生地に接着させたり、板場技術による糊引きや扱き(しごき)染めをして、和装花嫁衣裳を白生地から完成品まで仕上げることも可能だ。
それらの技術を活かしてアクセサリーブランド「エヌエスプラス」を立ち上げ、ネクタイピンやカフスボタン、バッグハンガーなどのオリジナル商品も制作。クリーニングや摩擦による傷にも耐えられるようにコーティングする技術も確立し、それが金彩を施したスーツやインテリア用品にも応用されている。できないのは「蒸しと、縫うことぐらい」と三宅さんは話す。
さらに、2021年10月には世界に向けた衣装ブランド「NOB MIYAKE」も立ち上げた。もちろん、すべての衣装は三宅工芸で一貫してつくられており、三宅さんは「どこにもないうちだけのオリジナルの衣装をご提供できる」と、胸を張る。そんな三宅工芸では、父と同じく、この道を目指したご子息の大夢(ひろむ)さんが修行中だという。
■ロケーションは京都…有名な寺院でも撮影可能
「職人が届けるフォトウエディング」では、カメラマン撮影から花嫁・花婿の衣装貸し出し、付随した小物一式、ヘア&メイクや着付けからロケーション探しまですべてサポートしてもらえる。
価格は一式で52万8000円~(税込※撮影申請料別途必要)。フォトウエディング以外に要望があれば、結婚式や披露宴で着る打掛など花嫁・花婿衣装の貸し出しも可能だとか。
見せていただいた写真はどれも絵になり、確かに2人の一番美しい瞬間が写真に収まっている感じだ。「映えすぎる」と感動の涙を流す花嫁さんが少なくないそうだ。
美術品のような衣装に合うロケーションにも事欠かない京都。依頼は全国から届くそうだ。三宅さんは「京都という場所柄、隋心院や毘沙門堂など有名寺院や、祇園など京都らしい場所で撮影したいと希望する人が多いですね。将来は外国人の方にも着てもらいたいです」と話している。
◇三宅工芸株式会社
本社:京都市右京区常盤村ノ内町8-104
(まいどなニュース特約・八木 純子)