救えなかった外猫のキジトラや三毛 「つないでもらった命、大切に」 エサを探して彷徨う黒猫を家族に
■孤高の子猫
りくくん(2歳・オス)は、2020年8月、千葉県に住むSさんの夫の実家兼仕事場の近くを走っていた。まだ子猫だった。猫好きのSさんが猫の鳴き声を真似して声を出すと、遠くで「お返事鳴き」をしたという。
後日また姿を見せたので、Sさんの夫は様子を見ながらごはんと水を置いた。母猫らしき猫と兄弟猫を見かけることもあったが、母猫は兄弟猫のことは可愛がってもりくくんのことは構わず、りくくんは、いつも1匹でごはんを求めて彷徨っているようだったという。
■救えなかった外猫
Sさん夫妻は、りくくんと出会う前、外猫のことで2度辛い思いをしたという。
一度目は2020年2月22日にゃんにゃんにゃんの日のことだった。Sさんの夫が車を運転していると道端にキジトラ猫が倒れていた。交通事故にあってしまったようだった。ぐったりしていたが、まだ息はあった。夜だったので野良猫を診察してくれる動物病院は少なく、県をまたいだところにある病院が厳しいけど診てくれるというので、「なんとか命だけでも」と思い、連れて行ったという。猫は、お腹のあたりから背骨にかけて何本も骨折していて、頭にも怪我をしていた。やがて呼吸が荒くなり力も尽きて、そのままSさんの夫の腕の中で息絶えた。
二度目は同年4月のことだった。夫の仕事場に現れるようになった三毛猫がいた。ごはんを置くと警戒しながらも食べるようになった。2月にキジトラ猫のことがあったので、Sさん夫妻は保護してあげたいと思うようになった。2カ月ほど経ち警戒心も薄らいできて、そろそろ保護できると思っていた矢先、三毛猫は正体不明の野生動物に襲われたようで、亡くなっていた。
「数カ月のうちに二度も外猫を助けることができず、悲しい現実を目の当たりにしました。ですから、りくを保護したいと思ったのです」
■甘えん坊の男の子
夫の実家兼仕事場にりくくんは時々ごはんを食べにくるようになり、少しずつ慣れていった。母猫や兄弟猫とは完全に離れて、1匹で行動しているようだった。普通に抱っこできるようになったので、用意していたキャリーバッグに入れ、Sさん宅に連れてきたという。
Sさんはそらちゃん、うみちゃんが受け入れてくれるのか心配だった。初めての男の子で、猫社会のこともよく分からない。りくくんがうみちゃんに噛み付いて怪我をしたこともあった。また、りくくんは外猫だった時にビニール袋なども食べていたようで、排泄物から出てきた。アレルギーもあるようで体調が落ち着くまでは気を揉む日が続いたという。
「猫には猫社会があるので、そっと見守りつつ猫社会のルールを尊重しました。今ではみんなすっかり家族。りくも外猫だったことが嘘みたいに家に馴染んでくれました」
りくくんはいつも甲高い声でSさんを呼ぶ甘えん坊。ナデナデやお尻トントンが大好きだ。Sさんは助けられなかったキジトラや三毛猫につないでもらった命だと思い、りくくんを大切に育てている。
(まいどなニュース特約・渡辺 陽)