爪のトラ姫、婦唱夫随のタイガース愛~鉄爺友と会う①

鉄人爺さん、略して鉄爺。43年の会社生活を卒業し、「暇を持て余さない老後」をコンセプトに第二の人生にチャレンジする。里山、自転車、マラソン、旅にグルメに…。

 再会の冒頭、最新バージョンのタイガースネイルをとくと鑑賞させてもらった。その出来栄え、ひとつひとつのデザインに込められたタイガースへの思いの深さにただ感心するしかない。

 その熱狂的な猛虎党夫妻は岡山に住む。ご主人は現役の地元企業トップということで、氏名も顔も伏せることにする。彼とのそもそもの縁は、転勤でおふたりが神戸暮らしをしていた数年前に遡る。ご主人が岡山県山間部にある私の出身高校の5年後輩ということで、つきあいが始まった。

 3年前には私の人生初マラソン(神戸マラソン)完走を祝って、祝賀会を催してもらった。奥さんとお目にかかるのはそのとき以来ということになる。

 夫妻の神戸在住当時、2年が過ぎれば自宅のある岡山に帰任することがわかっていたが、会社をリタイアしたあかつきには、神戸への転居を考えているのだと聞いた。その理由のひとつに、ふたりそろってのタイガース愛がある。

 岡山から新神戸は新幹線で約30分の距離。今年もふたりで神戸のホテルに泊まり、甲子園に通い、神戸のグルメを楽しみ…というパターンでの試合観戦を5回重ねている。

 私の会社生活卒業を知り、「岡山でゴルフでもやりましょう」という話になり、その前夜に夫妻そろって卒業祝いの一席を設けてもらった。

 ご主人の会社の後輩から聞いた話。「仕事のことで夜、ご自宅に電話すると、受話器を通してメガホンを叩く音と、奥さんの絶叫が聞こえてくるんです」。

 その奥さんがタイガースへのありったけの愛情を表現するのが、仰天のアイデアと丹精を込めたネイルだ。その宴席でもいの一番に両手の爪を見せてもらった。今回のコンセプトは同じ九州出身の梅野。背番号「2」のほかに、彼をサポートするチーム梅野のロゴマークなどが見事に描かれている。 こちらにも…とソックスを脱いで見せてもらった足の爪先にもマニアックな猛虎愛が丁寧にデザインされていた。

 その日の宴席は、残念ながらチームのふがいなさに対する嘆きが座の一方の主役となった。岡山から泊りがけで甲子園に足を運び、その都度歴史的回数に達した完封負けを見せられたのでは、恨み言のひとつも言いたくなる。

 ただしそれでもチームが愛おしい。両手の指先を彩るネイルの輝きを見るにつけ、その気持ちを痛切に感じる。

(まいどなニュース特約・沼田 伸彦)

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