バリキャリ化する駐妻 「家事育児だけではイヤ!」 優雅なマダム生活から一変 コロナでテレワーク浸透
夫の海外転勤に帯同する駐在員の妻、いわゆる「駐妻(ちゅうづま)」。昔は専業主婦ながら、お手伝いさん付きの広い家で優雅に異国生活を謳歌する…というイメージがあったと思いますが、今は一変しています。私自身も新聞記者を辞め、マレーシアで海外赴任する夫についていった「駐妻」ですが、まわりには働いている日本人ママがたくさん。コロナ後にテレワークが浸透したことで、海外在住者にとって就業の機会が拡がったことが大きな一因です。これまでのキャリアを継続するだけでなく、新たに起業するなど「バリキャリ妻」に変貌する人も目立ってきています。
■家事と育児だけでは嫌! 社会と繋がりたい
「何でもいいから社会と繋がる機会が欲しかった」と話すのは、夫の転勤に帯同し、現在香港で暮らす40代の有希さん(仮名)。6歳と12歳の2人の子どもを育てながら、アウトソーシング会社「Mamasan&Company(ママサン&カンパニー)」(東京都)から業務委託を受け、オンラインによるコール業務や人事採用などに従事しています。渡航ビザの関係上、香港国内で収益を得る仕事はできませんが、日本企業から日本国内の銀行口座に給与が振り込まれるため、ビザの条件はクリアできました。
有希さんは独身時代、不動産会社で営業や事務を担当していました。結婚後に退職し、約20年前から夫の転勤に合わせて海外と日本を行き来する生活を送っています。異国の地では家事と子育てに向き合う日々。ずっと前から仕事に就きたいと思っていたそうですが、働くイメージが具体的に想像できず、躊躇していたと言います。
同じ「駐妻」の紹介で、働き始めたのはわずか3年前。今の仕事はパソコン1台とネット環境があれば可能です。有希さんは「日本でテレワークしているのと何ら変わりません。『駐妻』でも働けるという実態を知ってもらえれば、就労する人はもっと増えると思います」と話します。
今後はこれまで携わったことのない経理業務に就きたいと考えています。「日本国内なのか海外になるのか分かわからないけれど、定住先が決まって本腰を入れて再就職する時を見越して、しっかりとキャリアを積んでいきたい」と話します。
■増える海外での仕事 コロナ後にキャリアップする妻も
有希さんに仕事を委託しているママサン&カンパニーによると、同社に在籍する在宅ワーカー約400人のうち、海外在住者は2割の約80人に上るそうです。在宅ワークを斡旋する同社では、コロナ前後で求職者数は3割程度増えたといいます。また、海外の日本人向け求人媒体からテレワークの募集を依頼されるなど、求人数も増えています。
私自身も夫の海外転勤に伴って退職し、2022年春からマレーシアで生活する「駐妻」の1人です。子ども2人とともに駐在員の夫に帯同する「ディペンデント・パス」で渡航していますが、現地の日本大使館に問い合わせ、条件はありますが、これまでの書く仕事を継続できると知りました。
現地で知り合った「駐妻」の1人は、マレーシア移住後も仕事を継続していましたが、コロナ後は会議などもオンラインで行うのが主流になったこともあり、2021年からはコンサルタント業や広告のデザイン作成なども手がるように。海外にいながら確実にキャリアアップを図っています。
コロナ流行前の民間会社のアンケート調査では、「駐妻」の約6割が夫の帯同に伴い仕事を辞め、そのうち約8割が移住後も仕事をしたいけれど、再開できていないという結果が出ました。キャリアが一度断絶することで、本帰国後の再就職の難しさも駐妻にとっては大きな悩みの種のひとつでした。
「駐妻」の就労については、赴任する国や地域によっては渡航ビザや法律で禁止されていたり、夫の職場が規制していたりして、一筋縄にはいきません。さらに、子育て世代が多く、フルタイムの仕事を好まない人も多いと思います。しかし、コロナ後は勤務形態が多様化したことで、「駐妻」にとっては柔軟な働き方が選択でき、これまで難しかったキャリア継続が期待できるのではないでしょうか。
(まいどなニュース特約・斉藤 絵美)