井浦新やのんも別れ惜しみ電撃訪問 「想い出がつまった映画館」「寂しい」テアトル梅田、閉館まで残り1週間
関西が誇るミニシアターのひとつ「テアトル梅田」(大阪市北区)が9月末で閉館するまで、残すところあと1週間。現在「さよなら興行『テアトル梅田を彩った映画たち』」と銘打ち、1990年の開館以来32年間にわたって上映してきた2000本以上の中から「アメリ」(2001年)や「トレインスポッティング」(1996年)など選りすぐりの全23作品を日替わりで上映している。9月22日夜には大阪市内で「さよならトークイベント」が開かれ、関西を中心とする関係者や映画ファンらが集結。テアトル梅田の歴史を振り返りつつ、映画やミニシアターの未来について熱い意見を交わした。
テアトル梅田は1990年4月19日に開館。初上映作品は「白く乾いた季節」(1989年)と「スイッチング・チャンネル」(1988年)だった。歴代興行収入トップは、ぶっちぎりで「アメリ」。客が溢れてさばき切れず、他劇場でも拡大上映したが、それでも満席続きでグッズも飛ぶように売れたという。テアトル梅田での連続上映日数は実に204日間にも及んだ。
ちなみに興収2位は「トレインスポッティング」で、3位は「この世界の片隅に」(2016年)。「この世界-」は連続上映日数287日間という全国2位の大記録を打ち立て、閉館を知った片渕須直監督がTwitterにあらためて感謝の言葉を綴ったほどだった。
■俳優の電撃訪問や万感の思い込めた舞台挨拶が続々
今年7月に閉館が発表されると、SNSなどには惜しむ声や思い出を語る投稿が溢れた。映画関係者にも大きな衝撃をもって受け止められたようで、これまで多くの出演作が上映されてきた俳優の井浦新さんは自ら劇場にアポイントを取り、出演作「こちらあみ子」の舞台挨拶とサイン会を電撃的に決行。Twitterにも「たくさんの想い出がつまった映画館」「間に合ってよかった」などと書き、温かい反響を呼んだ。
女優ののんさんも8月下旬、主演作「さかなのこ」のキャンペーンで大阪入りした際、スケジュールの合間を縫ってテアトル梅田を訪問。奇しくも井浦さんが舞台挨拶したのと同日で、入れ違いだったという。Twitterには「映画Ribbonでお世話になったので、9月いっぱいで閉館してしまうと聞いて寂しく思ってた。その前に行けて良かった!」と綴り、大好きなキャラクター「てあとる坊や」と撮った写真などを投稿した。
9月に入ると舞台挨拶で「激怒」の高橋ヨシキ監督と主演の川瀬陽太さんら、同館最後のロードショー作品となる「よだかの片想い」主演の松井玲奈さん、中島歩さん、安川有果監督が相次いで来館し、「思い出がある劇場」「最後にここで上映していただけて嬉しい」などと語った。
片渕監督も9月17日、「この世界の(さらにいくつもの)片隅に」のさよなら興行に愛犬トンちゃんと登壇。「何度も舞台挨拶に立たせてもらった。控室で上映が終わるのを待っていたことなどが思い出される。そんなテアトル梅田がなくなるのはとても寂しい」と万感の思いをにじませた。
■ミニシアターが熱かった時代を振り返る
1990年のオープンから2022年9月末の閉館まで延べ11853日営業し、2000本の映画を上映してきたテアトル梅田。劇場とゆかりのあるゲストが多数登場した9月22日のトークイベントでは、1994年に公開された「ギルバート・グレイプ」や95年の「恋する惑星」、96年の「トレインスポッティング」などが大ヒットしたことでミニシアターブームが全盛期を迎えたことや、社会現象にもなった「アメリ」のヒットがミニシアターにとってどれほど衝撃的な“事件”だったかといった証言が飛び交い、会場には束の間、当時の熱気が蘇るような感覚が流れた。
最後には、シネコンの台頭やコロナ禍、定額配信サービスの隆盛によって各劇場が今どのような状況にあり、今後どのような未来を描けばいいのかといった厳しい現状も議題に。司会を務めたテアトル梅田の名物スタッフ瀧川佳典さんは「時間が足りないので、各自持ち帰って考えてください」と締めて笑わせつつ、「私たちは32年の歴史を終えるが、ここで生まれたつながりがこれから先も広がっていってくれたら嬉しい」とバトンを託した。
さよなら興行は9月30日まで。最終日は同館の歴代興収トップ3、「アメリ」「トレインスポッティング」「この世界の片隅に」がフィナーレを飾る。その他のラインナップは公式サイトで。
(まいどなニュース・黒川 裕生)