「デビューには退職、2年の下積み」が必要? 30歳 現役会社員が念願のマンガ家デビュー「あきらめないで」

お花屋さんやシェフ、サッカー選手など、幼い頃には自由に思い描いた将来の夢ですが、人生で紆余曲折があり現在はまったく違った職業に就いているひとも多いのではないでしょうか。そんななか、30歳にして夢を叶えたとある会社員の方を取材しました。

お話を聞いたのは、漫画制作会社「トレンド・プロ」の高橋龍輝さん。広告漫画の構成、ストーリー提案、進行管理などをおこなう企業で正社員として勤務しています。そんな高橋さんですが、なんと現在30歳にして「漫画家」という夢を叶え、WEBコミックサイトにて連載がスタートしたといいます。

制作には体力が必要なことから、25歳くらいがボーダーラインとされることも多いという漫画業界。元々大学で漫画を専攻していた高橋さんですが、卒業後はアシスタントなどをしながら漫画家を目指すか、社会人になるかの選択を迫られ、家族を安心させるためにも社会人になることを選んだそうです。

「働きながら漫画を書いて、デビューできたらやめようと思っていました。しかし漫画業界の年齢のことは聞いていたので、大学卒業後すぐに漫画家への道に飛び込めなかったことに後悔しました」と高橋さんは話します。

そして決定的な挫折は25歳の頃。社会人を続けながら同人誌即売会(自らが資金を出して執筆・発行をおこなう「同人誌」を販売・配布するイベント)などに出るようになり、大手出版社から名刺をもらえるようになったものの、「漫画家デビューするには一度会社を辞めて約2年はアシスタントなどで下積みをする必要がある」と言われたそう。

「漫画家としてデビューするにはこれが最後のタイミングでしたが、現状の『働きつつコミティア(自主制作漫画誌展示即売会)で活動する』という状況に満足しており、それを捨ててまで漫画家の道を目指すのかということと、そこまでの情熱が自分にあるのかという自問自答もあり、漫画家になる道を諦めました」と、過去を振り返ります。

そうして過ごしていた高橋さんですが、28歳の頃にイベントで出版社の方から声かけがあったことで再び転機を迎えます。「漫画家になるには仕事を辞めて専念するしかない」と思っていたところから一転、その出版社では、枠やページ数、連載頻度が決まっている訳ではない形態だったため、柔軟な対応をしてもらえることに気づいたそうです。

「WEB漫画の普及で時代が変わり、働きながら漫画を描く人も増えてきているとその編集さんに言われたことも大きかったです。コミティアで今まで書いてきた量くらいで、連載のボーダーラインは超えていると聞き、それなら今までも働きながら書いてきたため、両立している姿がリアルに想像できました」

そこから企画の提出を繰り返し、見事連載枠を獲得した高橋さん。会社員との両立というところについて、在籍している企業のみなさんは祝福してくれたとのこと。「みなさんとても喜んでくれました。ブラウザでも読めるのに、わざわざアプリをいれて、マンガにいいねやコメントを入れてくれました。いろんな方に連載開始を報告しましたが、会社の人たちの反応が特にいいです。働きながらマンガを書くことの大変さを共感してもらえるので、自分ごとのように喜んでくれて、応援してくれているなと感じました」。

現在は月1話(18~20ページほど)を、平日4時間・休日1日を使って漫画家業をこなしているそう。この年齢で夢を叶えたことに対し、「WEB漫画・トゥーンの普及により、業界が変わってきていることで、僕は夢を叶えられました。環境や年齢を理由に、自分の創作活動をあきらめないでください」と、高橋さんは夢追い人にエールを送ります。

「描き続けていたら、思ってもみない形で夢が叶うこともあります。夢を追うための活動は孤独なものですが、自分が思っているより周りは応援してくれているとわかり、それが励みになったので、僕も誰かの励みになれたら嬉しいです。応援しています!」。

高橋さんの漫画家デビュー作品『アマエルさんも甘えたい』は、漫画配信サイト「COMIC FUZ」にて連載中。

(まいどなニュース特約・あさい あやね)

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