「大丈夫ニャ…?」熱と頭痛で苦しんでいたら、こめかみをずっとペロペロしてくれた元保護猫 一緒に暮らして「優しさ」を知った

■通い猫が産んだ子猫

みかんちゃん(メス・1歳)は、東京都に住む佐々木さんの知人宅に通っていた猫が産んだ子猫だった。知人宅は栃木県にあったのだが、母猫は身重になるとしばらく姿を消した。ある日、道端で子猫を連れていたところを見かけて、「うちにおいで」と声をかけたら、その猫は3時間かけて、5匹の子猫を1匹ずつ咥えて運んできたという。そのうちの1匹がみかんちゃんだった。2021年5月頃、どうやら近所の不衛生な廃屋の暗闇で出産したようだった。

佐々木さんは猫には全く関心がなく、知人から子猫の話をされても何も興味もそそられなかった。2021年6月に引っ越したら、たまたまそのマンションが犬猫飼育OKで、そのことを知人に話すと、「子猫たちの引き取り手がおらず困っている」と言われた。

「仕事で外出していることが多いので、安易にペットを飼うことは考えられず、お断りしたんです。でも、無下に断ることもできず、妥協案として5匹の写真を見せられた時に、『この子(みかん)が売れ残ったら、考えてもいい』と言ってしまったんです」

■最初はお互いイライラ

その後、思いがけずみかんちゃんだけが売れ残ってしまった。

「最後には知人のお母さんから、『人助けだと思って、引き取りなさい!』と半ば怒鳴られつつ説得され、無理矢理引き取ることになったのです(苦笑)」

佐々木さんは初めて猫を飼ったので、準備も大変だった。何を準備したらいいのか分からない中、たくさんのグッズやごはんを用意して、壁を引っ掻かないようにパネルで全面を覆い、暗中模索した。

2021年7月、みかんちゃんは佐々木さんと暮らし始めた。みかんちゃんはもともと元気な子で、わずかな隙間に好奇心たっぷりに興味を示すので、いつも気に留めていなければならなかった。

「当時はろくに外出もできなかったです。また、頭脳明晰、意志強固なので、コミュニケーションが取れるようになるまでは、私もみかんもイライラが大変でした。でも、半年くらいですっかり仲良しの同居人になりました」

たまたま子猫の頃の盛んに動く時期がコロナ禍の自粛期間で、仕事で外出したり人と会う機会が少なかったりしたので目が行き届いていたが、そうでなかったら飼うことができたかどうか、思い返しても自信がないという。

「子猫や赤ちゃんの動物を衝動的に『可愛い』と思って飼うのはお勧めできません。飼うには、人間の赤ちゃんを育てるくらいの覚悟が必要だと思います」

■最高の癒し

佐々木さんは、「みかんちゃんを迎えてから、猫にも気持ちがあり、考えがあり、そんな風にみかんを尊重していたら、弱者の気持ちが分かるようになり、人に対しても寛大になれるようになりました」と言う。仕事のことで悶々としていても、可愛い顔で無心に寝ていたり、遊びの催促をしてきたりするみかんちゃんは最高の癒し。夜、一緒に寝る時間が一番好きなんだという。

ある日、佐々木さんが熱を出して頭痛で苦しんでいたら、みかんちゃんはこめかみをずっとぺろぺろしてくれた。佐々木さんの表情や声音ひとつで、気遣いができるそうだ。

佐々木さんとみかんちゃんには、毎日15分間遊ぶというルールがある。佐々木さんが夕飯を食べ終えると、「遊んで」と催促が始まる。

「もちろん、時には面倒な時や時間に追われていることもありますが、みかんにもたくさんお留守番をさせてしまっているし、私のリセットのためにも大切な時間です」

留守番が長いのもかわいそうだが、何より佐々木さんがみかんちゃんに会いたくて、なるべく早く帰るようになったという。

(まいどなニュース特約・渡辺 陽)

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