豊田真由子、安倍元総理国葬に参列して改めて実感したこと 痩せた姿の昭恵夫人には胸を痛める
9月27日、安倍晋三元内閣総理大臣の国葬が日本武道館で行われ、参列して弔意と感謝を捧げてまいりました。(元衆参議員全員に案内状が送付されました。)
今回の国葬は、「根拠」「基準」や「手続き」に問題があったことは否めないと思います。
1967年の吉田茂元首相の国葬の際にも、根拠や手続きについて様々な議論がありました。こうした経緯も踏まえ、佐藤栄作元首相については、明確な法的根拠が存在しないこと等から、国葬ではなく、国民葬(内閣、自民党、国民有志の三者主催)となりました(1975年)。
そもそも「国が行う行為」について、どこまで「法的根拠」が必要かについては、学説も分かれており、国民の権利を制限し義務を課す場合には法的根拠が必要、とする「侵害留保説」(通説・行政実務)や、さらに広く、国民の権利にとって本質的(重要)な事項に関しては法的根拠が必要、とする「重要事項留保説」などがあります。
ただ、たとえ「国葬」の実施について法的根拠が必要ではない、としたとしても、少なくとも「国会における決議」や「三権の長との協議」が必要、といった意見が、上記国葬・国民葬の検討の際にも出されていたことも踏まえれば、やはり今回は、こうしたなんらかの手続きをきちんと踏むことが求められていたと思います。
さらに現代は、政治や行政に向ける国民の目というのは、一層厳しくなっており、当時以上の論争が巻き起こる可能性は想定されていたはずなのに、とも思います。そして、コロナ渦や経済低迷や物価高が続く状況下で、費用について敏感になるべきことも。
また、一国の内閣総理大臣の行った政策や政権運営には、賛否いろいろな意見があります。我が国は、自由で民主的な国家であり、多様な考えや意見が、互いに認められるべきであることは当然です。政権を担う方たちは、賛同の声だけではなく、厳しい批判をも真摯に受けとめ、ともに国の未来をつくっていかねばならないと思います。
そして、高額献金や宗教2世といった、本来は人を救うものであるはずの宗教が、本人や家族を苛烈に苦しめているという問題について、政治や行政は、解決に向けて、明確に具体的に動かねばならないと思います。たやすいことではありませんが、信教の自由や家族内の問題、線引きが難しい、といったことを、対策を講じない理由にしてはいけないのです。
■安倍総理と菅官房長官の間の熱い絆
そうしたことの上で、国葬に参列した者としての素直な感想を申し述べたいと思います。
友人代表の菅義偉前内閣総理大臣の弔辞が話題となりました。
あの弔辞の直後、自然に一斉に、会場で拍手が沸き起こりました。
安倍政権時代、おふたりを間近で見ていたはずのわたしたちも、安倍総理と菅官房長官の間に、ここまでの深く強く熱い絆があったということを、この日初めて理解しました。7年8か月の間、ただ一人の方をずっと政権の「女房役」にしていたことには、ちゃんと理由があったのだ、と分かりました。
この日、改めて実感したことがあります。
安倍総理は、菅総理の弔辞にあったように、
「今日よりも、明日の方が良くなる日本を創りたい。」
「若い人たちに希望を持たせたい。」
「日本よ、日本人よ、世界の真ん中で咲きほこれ。」
心からそう願い、信じて、困難な道のりを、笑顔を絶やさずに、ひたすらに歩んでこられていました。それは、紛れもない真実だったのだと思います。
会場にいらした北朝鮮拉致被害者家族の方がおっしゃっていたとおり、「本当に色んな形で一生懸命に尽くし」「世界や色んな所に対し言ってくれたので、拉致問題が大きく広がった」からこそ、ご家族は、これまでの長い苦難の状況においても、安倍総理のことを信じ続けてこられたのだと思います。
そういう無私の心で、人を思い、信念を貫き通す政治家は、(残念ながら)今の日本に、実はそんなにいません。
もちろん、どんな理念や政策でも、うまく結果が出ることばかりではありません。
今の日本にも、苦しみや不安を抱え、困難な状況の中にいる方が、大勢いらっしゃいます。
だからこそ、決して諦めることなく、批判の矢面に立ちながらも、何ができるかを考え、進み続けることを、やってくれる人が必要なのだと思います。
最後に献花をさせていただいた際、昭恵夫人の大変お痩せになった姿に、大層胸が痛みました。人前でもスキンシップをなさる本当に仲の良いご夫婦でしたから、どれほどかおさみしくおつらい日々であろうと思います。
千鳥ヶ淵の内堀通りからずっと続く献花に来られた方々や、国内外で悼む方々の気持ちが伝わり、ご遺族が、安倍総理の歩みは「報われていたのだ」、『いっぱいまいた種は、そこかしこで芽吹いていくのだ』と、お感じになれるとよいな、と思いました。
安倍元総理の御霊の安らかならんことを、そして、総理が願ったように、日本が、希望と安心にあふれ、世界の真ん中で咲きほこれる国となれるよう、切に祈ります。
◆豊田 真由子 1974年生まれ、千葉県船橋市出身。東京大学法学部を卒業後、厚生労働省に入省。ハーバード大学大学院へ国費留学、理学修士号(公衆衛生学)を取得。 医療、介護、福祉、保育、戦没者援護等、幅広い政策立案を担当し、金融庁にも出向。2009年、在ジュネーブ国際機関日本政府代表部一等書記官として、新型インフルエンザパンデミックにWHOとともに対処した。衆議院議員2期、文部科学大臣政務官、オリンピック・パラリンピック大臣政務官などを務めた。