神戸空港の国際化、朗報の裏に輸送パンクという消せない不安 ポートライナーは混雑が常態化
9月18日、関西3空港懇談会が開催され、神戸空港の国際化が決定しました。これにより神戸空港の利用者が増えることが予想されますが、一方では利用者増加に伴う懸念点もあります。
■2030年度をめどに神戸空港を国際化
9月18日に大阪市内にて関西・大阪・神戸3空港の地方自治体と経済団体の代表者らが3空港のあり方をめぐって話し合いました。その中で神戸空港の国際線の就航が決まりました。定期便に関しては2030年度前後からはじめ、1日の最大発着回数は40回。チャーター便は2025年スタートとしています。
関西3空港の方針としては関西空港を主軸に、神戸空港は関西空港のサポート役に徹する姿勢です。いずれにせよ神戸空港の国際化に伴い、神戸空港の利用者は増加することが予想されます。
■問題は空港アクセスの強化
神戸空港利用者の増加は歓迎すべきニュースですが、懸念点も存在します。それが空港アクセス、特にポートライナーの増強です。
現在、神戸空港への主要アクセスは新交通システムのポートライナーです。ポートライナーは一般の電車よりは小型で定員は1編成(6両)で300名ほどです。参考までに阪神普通車1編成(4両)の定員は500名を超えます。
さらにポートライナーが走るポートアイランドには住宅だけでなく、多数のオフィスや大学が存在します。そのため平日朝ラッシュ時の三宮発神戸空港行きはスーツケースを車内に持ち込むのがやっと、という経験もしばしば。また新交通システムという性格上、車両の屋根が低いため、一般の電車と比較すると圧迫感があります。
国土交通省によるとポートライナーの2019年度最混雑区間は貿易センター→ポートターミナル間(8:00~9:00)で、混雑率は126%。最もこの混雑率は1時間あたりの平均値なので、ピンポイントではより混雑率が高くなります。
新交通システムの中では混雑率は東京都の日暮里・舎人ライナーに次いで第2位ですが、輸送人員は新交通システムではダントツの1位! 1万人を超えます。また最混雑区間がポートアイランド方面であることから、ポートアイランドへの通勤・通学客が多いことがうかがえます。
現在はコロナ禍により減少はしていますが、今後、利用者数がコロナ禍前の水準に戻り、さらに国際線による空港利用者が増えると、輸送がパンクする恐れがあります。
対策として考えられるのは列車本数の増加です。しかしポートアイランド方面行きの平日7時台~8時台は2~3分間隔で運行していることからこれ以上の増発は難しそうです。次に両数の増加が考えられます。2018年に神戸市も検討しましたが、ホーム延伸により多額の費用が発生することから断念しました。
■バスで補完
残りは他の公共交通機関に分散させる方法です。神戸市はバス運行により、ポートライナーの混雑緩和に努めています。2022年10月現在、神姫バスも協力する形で三宮駅前~医療センター駅前・中央市民病院・神戸どうぶつ王国前、神戸駅南口~中央市民病院、新神戸・地下鉄三宮駅前~中埠頭~神戸空港、新神戸~神戸空港で運行しています。
さらにポートライナーの通学定期券を所有する神戸学院大学附属中学校・高校の学生、通勤定期券を所有する一部の通勤者を対象としたバスもあります。
ポートアイランド方面行き三宮駅前バス停はJR三ノ宮駅からは国道2号線を挟んだ反対側にあります。そのためJR三ノ宮駅からポートライナー三宮駅へのアクセスよりも時間を要し、JR三ノ宮駅からの歩道橋に屋根は設置されていません。
せめて神戸空港行きのバスだけでも、関西空港行き・伊丹空港行きバスが出発するJR三ノ宮駅西口前から出発すれば利用するのに……と思ってしまいます。また専用レーン設置をはじめとする市内中心部の渋滞対策も懸案事項です。
2020年1月の報道によると市では神戸市内中心地~ポートアイランド間にBRT(バス高速輸送システム)の導入も視野に入れているとのこと。現在、神戸市内で運行しているBRT・連節バス「Port Loop」の定員は約110名なので、ポートライナー1編成分の3分の1ほど。運行間隔次第では、十分にポートライナーの補完に役立つ交通手段です。
連節バスは車体の性格上、バス停の設置場所が限定されるため、仮に導入されると三宮駅~ポートライナー主要各所・神戸空港間をダイレクトに結ぶことになるでしょう。
このように単にバスを走らせるだけでなく、複合的な施策を打たなければポートライナーからのシフトは難しいのではないかと思います。
(まいどなニュース特約・新田 浩之)