隣家の車の下に子猫が3匹…母猫も入れて4匹まとめて保護 人間より猫が多いにぎやかな日々に
■野良の親子猫
野良猫の志麻さん(3~4歳・メス)は2匹の子猫、こたくん(1歳・オス)とまろくん(1歳・オス)と親子で暮らしていた。
徳島県に住むSさんは、2021年9月にうめちゃんという猫を保護して飼っていた。うめちゃんと暮らし始めて1カ月近く経った頃、隣家の車の下に子猫が3匹いるのを見つけた。黒白とシャムミックスと灰色の子猫だった。飼われている様子もなく、母猫はどの猫か、どこが生活拠点になっているのか見て回ると、うめちゃんを保護した時に近くにいたシャムミックスが母猫で、餌やりさん宅を拠点に生活していることが分かった。
「子猫は里親が見つかるかもしれない。でも、母猫は餌やりさんも触ったことがないというくらい警戒心が強く、成猫なので里親が見つかる可能性は低い。これまで少なくとも4度は出産しているということも聞き、TNRするよりも家で引き取ろうと保護に踏み切りました。その猫たちが志麻さん親子です」
ただ、保護すると決める前にSさんはかなり悩んだという。
「子猫に里親さんが見つからない場合、うめちゃんを含めて5匹になるので、十分な医療をかけてあげられるのか、時間的、体力的に大丈夫なのか…。そもそも親子全員病気にかかっているという可能性もあり、うめちゃんと暮らすことは可能なのか。相性は大丈夫? など、本当に悩みました」
しかし、夫の「1匹が5匹になってもいいんじゃない」という言葉に背中を押されたそうだ。
■妊娠する前に保護しないと
Sさんは、まずは母猫に家に来てもらおうと、発泡スチロールで作った寝床を庭に設置し、ごはんと水を置いた。しかし、そこにやってくるのは体の大きな雄猫ばかりだった。野良猫親子の保護経験のある友人に相談したところ、母猫が姿を見せた時だけごはんを用意するように言われた。
「確かに志麻さんは、1日に3~4回来てくれるようになりました。でも、警戒心が強く距離が縮まらない。『次の妊娠まで時間の問題』だと焦りが募りました」
その後、保護団体の協力を得て、10月30日にシャムミックスの子猫と灰色の子猫、11月2日に志麻さんと黒白の子猫の保護に成功したという。
保護した夜に志麻さんは不妊手術を受けたが、幸い妊娠していなかった。
「灰色の女の子は優しい里親さんとご縁があり、12月26日にお嫁に行きました。手放す時は夫婦して涙、涙でしたが、とても大切にしてくれて、今も幸せに暮らしています」
■すべてが愛おしい
保護してからは、うめちゃんが2回目のワクチン未接種だったこともあり、隔離生活を徹底するのが大変だった。親子を世話する時は服も全部着替えて、スリッパも履き替え、使い捨て手袋を使用し、部屋の消毒もまめに行った。食事を1日4度用意するだけではなく、子猫は全員猫風邪をひいていたため薬を飲ませて、点眼と点鼻薬を投与しなければならなかった。毎日が慌ただしかったという。
志麻さんはツンデレでヤキモチ妬き。母性本能が強く、子猫たちが戯れ合っている時にヒートアップすると仲裁に入る。やり過ぎた方に教育的指導を行うこともある。最初は警戒心が強かったが、毎食後ブラッシングをねだるようになった。
黒白ハチワレのこたくんは、肩乗り猫。どこから飛びかかってくるのか分からないので生傷が絶えない。好奇心旺盛でおしゃべりな甘えん坊。シャムミックスのまろくんは、天然の癒し系。椅子に飛び乗ったはいいが、勢い余って転がり落ちることもある。こたくんのことが大好きで、こたくんが近くにいないと呼んで探し回る。
人間の数より猫の数が多いSさん一家。思い描いていたより賑やかで慌ただしく、大変なことも多いが、小さな幸せがそこかしこに散りばめられているように感じるという。
「へそ天で寝ている姿、香箱座りしている時、ニャルソック中の表情、ゴロゴロと喉を鳴らす音、艶々の毛を撫でる時、一緒に眠る時、ひとつひとつが全部愛おしく、毎日写真を撮っても飽きたらないぐらい可愛いです」
(まいどなニュース特約・渡辺 陽)